タイトル | MORSOMNIA:0(モルソムニア:ゼロ) |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | 沐沐睡星 |
満足度 | B(やや満足。条件付きでお勧めできる。) |
要点 |
|
執筆日 | 2025年2月3日 |
はじめに
Steamにてエンディングコンプまでプレイ。
個人ゲームサークル『沐沐睡星』制作、独特な世界観が特徴のSFアドベンチャーゲーム。フリーゲームとなっており、無料でプレイできる。
プレイヤーは『ルールー・ブルー総合生命科学研究所』に所属する主人公『カイヨウ』を操作し、未知の生命体『クオン』との交流を通して謎の異空間『モルソムニア』の研究に携わることになる。
基本システム
- マップ探索要素有りのテキストアドベンチャー。
- 主人公カイヨウを操作し、ドットで描かれた研究所内のマップを探索しながら会話イベントでシナリオを進行させる。
- 基本的には目覚める→クオンと交流and探索→眠るを繰り返す形式。
- 一部の選択肢でエンディングが分岐。
- 研究所は『クオン』が隔離されている地下を含め6階層。
- 導入に当たる初日を除き、割と自由に探索できる。
人々との交流
- メインシナリオに当たるクオンとの交流以外にも、研究所内の職員との交流を楽しめる。
- ゲーム内1日毎に、各キャラとの会話イベントが発生する。
- キャラによっては毎日違う場所にいたりするため、研究所内を探索して見つけ出す必要がある。
- 交流を深めることでアイテムが貰えたり、ちょっとしたイラストなどが見られたり、世界観設定をより深く知れたりといった恩恵がある。
- 交流によって貰えるアイテムに関してはフレーバー的なもので、ゲーム進行には一切関係ない。
- 交流そのものも報酬もゲーム進行に影響を及ぼさず、完全にオマケのお楽しみ要素として実装されている。
その他
- 3階のカフェテリアで食事を摂ることが出来る。
- 各メニューには値段が設定されているがゲーム的に所持金の要素は無いためこちらもフレーバー的なもの。
- 注文したメニューのイラストが見られるというオマケ要素と言ったところ。
- 発表予定の別作品『MORSOMNIA』の前日譚にあたる作品とのこと。
- そのため、本作単体で物語や世界観の全貌は明らかにならない。
良かった点
独特で不可思議な世界観を丁寧に描けている。
- 『青』『海』を基調とした幻想的でややサイコなビジュアル、謎の多い不可思議な世界観設定を丁寧に描いている。
- 前日譚ゆえに本作だけで完結はしないものの、本作の物語を楽しむうえで必要になる最低限の情報は提示されており、なおかつ本編に向けての謎や伏線のようなものも散りばめられている。
- 使用されているイベントスチルやちょっとしたイラストの数はフリーゲームとしては多い。
- BGMも世界観にマッチしており、雰囲気を高め没入感の向上に寄与している。
- 全体的なデザインがしっかりと同じ方向を向いて作られている。
- シナリオ上ですべてを説明するのではなく、各キャラクターとの会話の端々やオブジェクトを調べた時の反応などから推察する形式になっており、プレイヤーに考察の余地を残している。
- 前日譚としてプレイヤーの興味を引くデザインになっていると言える。
- オブジェクトを調べた時の反応は短編フリーゲームであることを考慮すれば豊富に用意されている。
- オマケ要素である各キャラクターとの交流も楽しく作られている。
- フレーバーアイテムの入手等はご褒美感があるし、上記したように考察の材料にもなる要素のため、ゲーム進行そのものに影響はなくとも積極的に遊びたくなるよう導線が出来ている。
短編の前日譚、フリーゲームとしてテンポ良くお手軽に楽しめる。
- シナリオ本編だけを追うと2時間程度、交流などオマケも遊んで+1時間、エンディングコンプまでで+1時間程度が目安。
- 壮大な設定を匂わせつつも、前日譚・短編フリーゲームとしてコンパクトにまとまっている。
- テキスト主導のアドベンチャーながらテキストが長すぎてダレるということも無く、ゲームのテキストとして読みやすいものに仕上がっている。
- マップの広さや歩く速さの塩梅もよく、探索要素がテンポを損なわずゲーム的な楽しさを演出してくれている。
不満点
駆け足気味なシナリオで置いてけぼり感がある。
- 世界観設定やオマケ要素こそ丁寧に描かれている反面、前日譚として本作の肝であるはずの『クオンとの交流』を描いたメインシナリオは駆け足気味。
- 設定上は毎日交流しているはずだが、プレイヤーが見ることが出来るのは飛び飛びの日付。
- その間の交流は『こんなことがあって、クオンとの交流を深めた』といった回想テキストで済まされており、設定上のクオンとの親交状況とプレイヤー目線でのクオンとの親交状況に乖離が生じてしまっている。
- もちろん数ヶ月に及ぶ交流をすべて描いていたらボリュームがとんでもないことになり、ゲーム的にも退屈なものになってしまうため仕方が無いことではあるが、もう少しフォローする要素が欲しかったところ。
- このせいで少しづつプレイヤーが置いてけぼりになり、終盤の展開に感情移入しきれない状態になっている。
- 前日譚として、終盤の展開に乗れるかどうかは本編への引きの最重要ポイントと言えるため、ここが弱いのは残念。
前日譚であることへの説明不足。
- ストアページには本作が前日譚であるという記載が無い。
- 筆者もプレイ後にメディア記事を見て初めて知った。
- エンディングリストや実績なども無く、すべて終わったのかわからない。
- 前日譚と知っていれば『本作はここまでか』と判断できるが、知らないと終わった感が無くフワッとしたプレイ感になってしまう。
- 交流などで得られるフレーバーアイテムを始めとして『何かありそうで無い』要素が多いのも難点。
- 一応エンディング数は公式サイトに記載されている。
- 前日譚作品はそうと知っているかで作品の印象が大きく変わってしまい、下手をすると『よくわからない中途半端なゲーム』と思われかねない。丁寧な作風だが、この点は配慮不足。
その他の不満点。
- ランダムで移動するNPCが出入口の前に立ってしまい、退くのを待たないとマップの出入りが出来なくなる。
- 大昔のゲームではよくあったことで筆者的には『あるあるネタ』として笑えたが、イマドキのゲームとしてはストレスに感じる人もいるだろう。
まとめ
『青』や『海』をモチーフとした独特で不可思議な世界観を丁寧に描き、SFアドベンチャーの前日譚として手軽に楽しめるよう作り込まれた作品。
幻想的でちょっぴりサイコなグラフィック表現は魅力的だし、特に世界観描写は出すべき情報、ほのめかす情報をいい塩梅で取捨選択出来ており、本編が気になるよう導線として正しく機能している。
一方で本作のシナリオ展開に関しては駆け足感が漂い、肝心要の『クオンとの交流』にイマイチ乗り切れずに終わってしまった。前日譚であることの周知も甘く、プレイ感・読後感に影響を与えてしまっている。
前日譚ゆえに、将来的にリリースされる本編の内容によっても印象が変わってくるところではあるが、現時点では『世界観への没入度は高いけどシナリオには少々乗り切れない』という、なんとも言えない感想となった。
とはいえ丁寧な作風から本編が出たらぜひ遊んでみたいと感じさせてくれた。今後に期待ができるゲームとなっており、無料でコンパクトに楽しめるため遊んでみてはいかがだろうか。
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