タイトル | クリエイターズ・デスゲーム |
プレイした機種 | PC フリーゲーム DL版 |
メーカー | 茶碗蒸し |
満足度 | A(満足。たいていの場合お勧めできる。) |
要点 |
|
執筆日 | 2024年12月6日 |
はじめに
DL版にてエンディングコンプまでプレイ。
個人ゲーム制作者『茶碗蒸し』氏によって製作されたデスゲーム・アドベンチャー。
プレイヤーはゲーム制作者のスズヤとなり、新規マルチメディアミックス企画の打ち合わせ場所で同じく集まった神絵師、歌い手、脚本家、ボカロP、小説家といったクリエイターの面々と共に、謎の暴露系VTuber『暗罪もえ』が主催する『世間にばれたらクリエイター人生終了』の炎上スキャンダルを賭けたデスゲームに巻き込まれることとなる。
ゲームシステム
- ゲームはテキストアドベンチャーパート(後述する断罪放送含む)と探索パートを交互に繰り返しながら進行していく。
- 基本的な流れは『ダンガンロンパ』や『逆転裁判』等のシリーズをイメージしてもらえばわかりやすい。
- 一部シーンはイベントスチル有り。
- 選択肢や探索パートでの行動によってエンディングが分岐する。
探索パート
- 主人公たちが監禁された館内には、各人物の炎上スキャンダルの証拠品が隠されている。
- これを探し出すのが探索パートの目的となる。
- 館内の各部屋を移動しながら、探索可能ポイントをクリックして証拠品を集めていく。
- 探索できるポイントには基本的に【?】マークが表示されているため、マップを一通り回れば調べ逃すということはなく親切な難易度設定になっている。
- 謎解き要素などもあるが、全体的に難易度は低め。
- 基本的には『その章で手に入る証拠品をすべて集める』『必要な会話イベントを見る』まで終わらないようになっている。
- このため、必要な証拠品が無くて詰むということはない。
- 証拠品(アイテム)を集めるというよりは、フラグを立てて回ると言った方がいかもしれない。
- ただし、章によっては証拠品が集まっていなくても任意で探索パートを強制終了することも可能。
- 館内中央に位置する広間のモニターを調べると、探索のヒントを見ることが出来る。
- ヒントというよりはほぼ答え。前述したように一通り回れば迷うことはないと思われるため、一部の謎解き等がどうしても解けないという場合の救済の意味合いが強い。
断罪放送
- ターゲットに選ばれた1名(A)とその他の参加者(B)に分かれ、Aのスキャンダルの疑惑を有罪に確定できればBの勝ち、できなければAの勝ちという勝負をすることになる。
- ターゲットに指定される人物は章ごとに固定。
- 一部選択肢はあるものの、基本的には探索パートで集めた証拠品が話の流れの中で適切なタイミングで使用されるため、勝負と言ってもテキストアドベンチャーの延長上にある。
- 選択肢は正解を選ぶまでループする。
- Bが勝利した場合はAの炎上ネタがネット上に投下され、残りの参加者は翌日以降に進み同じことを繰り返す。
- 反対にAが勝利した場合はBの参加者全員が炎上ネタを投下され、Aの一人勝ちとなる。
その他
- 各種サウンド調整、オート、高速文字送り有り。セーブデータも多数保存可。
- テキストアドベンチャーとして最低限必要な機能は網羅している。
- エンディング分岐があり、探索パートの存在を考えるとセーブデータは細かく分けて保存して遊ぶこと推奨。
- イベントスチルやエンディングのアルバム機能あり。
- 所謂フリーゲームであり、ブラウザ版・ダウンロード版共に無料で最後まで楽しむことができる。
- 最近のフリーゲームでは定番化しつつあるが、オマケ付きの有料版も販売されている。
- 本作の有料版にはオマケシナリオが付属している。
良かった点
登場人物のキャラがしっかり立っており、会話劇が面白い。
- 主人公含め、各クリエイターたちの人となりや創作に対するスタンスなどがしっかりと描かれており、物語に入り込みやすい。
- その上で、どのクリエイターの炎上スキャンダルもキャラクター性や創作に対してのスタンスが色濃く出たものになっている。
- キャラクター同士の会話も、デスゲームという舞台の中で深刻になりすぎず、適度なコミカルさを以て繰り広げられる。
- こういったキャラクターの魅力を活かした会話ベースの展開で作品全体の魅力を表現することが出来ており、テキストアドベンチャーゲームとしてテキストを読むのが楽しい。
- 探索パートというテキスト進行だけに頼らないゲーム性を持つ作品として、テキストパートの長さにも気が配れている。
- テキストが長くなりすぎてダレるといった場面が無く、必要なことは語りつつも簡潔にまとまったテキストになっており読みやすい。
クリエイターやファンの在り方、ネット炎上について考えさせられるシナリオ。
- 各炎上スキャンダルは実際にありがちなものになっており、それらをクリエイター側と周り側、双方の視点で見ることが出来るような内容になっている。
- 敗北した参加者の炎上ネタがネットに投下されると、SNS上での反応が表示される演出が入る。
- 上記したようにキャラクターがしっかりと魅力的に描かれているため他人事のようには見えず、人となりや創作に対してのスタンスと絡めてなぜこんなことをしてしまったのか、本当に許されないことなのか、ネット上の第三者が気軽に口を出していい問題なのかといったことを考えさせられる。
- この『有名クリエイターとそれを取り巻く周りの環境のドラマ』こそが本作の面白さのキモであり、この点は存分に発揮されたシナリオと言える。
フリーゲームのテキストアドベンチャーとして適切なボリューム。
- コンプ+記事執筆のために追加で少々遊んで4時間弱。
- 無料のテキストアドベンチャーとして長すぎてダレることも無い良いボリューム。
不満点
考えさせられる反面、やや納得感は薄いシナリオ。
- 各スキャンダルは確かに悪いことではあるものの、それに対して作中で与えられる罰がいくらなんでも重すぎる。
- だからこそ考えさせられるという面はあるが、少々ご都合主義感も漂ってしまっている。
- 炎上前後のクリエイターの反応も妙に達観しており、せっかく身近なテーマを扱っているにも関わらず妙に現実離れした印象も残る。
- 各クリエイターのキャラクターがしっかり描かれている反面、黒幕についてはかなり描写不足で結末にもやや共感しにくい。
- デスゲームとは理不尽なものであると言えばそれまでではある。
- それぞれのスキャンダルに対してのプレイヤーの考え次第でも、この納得感は変わってくるだろう。
デスゲーム・探索アドベンチャーとしてはややチープな面が目立つ。
- キャラクターはイラスト表示なのに対して、背景オブジェクトはポリゴンで描かれている。やや浮いている感がある。
- すぐに慣れるが、最初は少々面を食らうかもしれない。
- 館内の各部屋は、出入口付近と内部の2マップ構成になっている。
- 入るとまず内部側のマップが表示され、出る際は出入り口側のマップに切り替える必要があり少々手間で操作性が悪い。
- 出入り口側に配置されたアイテム類があるため部屋数を増やさず探索パートのボリュームを稼ぐための策とも思えるが、不便さが勝ってしまっている。
- 舞台が館の中のみのため、探索範囲が狭く同じマップを何度も探索することになる。
- 上記したようにボリュームが丁度良いため飽きるということはないが、多少のマンネリ感はある。
- 探索パートで手に入る証拠品によって、次の断罪放送でだれがターゲットにされるか、どんなスキャンダルかがわかってしまう。
- 本来なら断罪放送の中で『まさかこの人が…!』となるほうが自然であり、事前にネタバラシを食らう形になるため盛り上がりに欠ける。
- 一応、この点に関してはシナリオ上でも理由付けがなされてはいる。
- 断罪放送がほぼ自動的に進行し、上記通りターゲットになるクリエイターも妙に達観していてあっさり終わるため、この点でも盛り上がりに欠ける。
- プレイフィールが近い作品として冒頭で挙げた『ダンガンロンパ』等のように、議論の果てに追い詰められて本性が出るといった要素は無いため注意。
- これに関しては、やはりこのゲームが『有名クリエイターとそれを取り巻く周りの環境のドラマ』を主題にしており、ミステリー要素や頭脳バトル的な展開はメインではないということなのだろう。
- ミステリー要素や頭脳バトル要素を過度に期待していると合わない可能性がある。
まとめ
インパクトのあるタイトルに反して、現代におけるクリエイターやファンの在り方、それらを取り巻く環境、ネットの正義といったややセンシティブなテーマを丁寧に扱い、登場人物たちを魅力的に描くことでより身近な問題としてプレイヤーに問いかける、良く出来た逸品。
デスゲームの頭脳戦、ミステリーの探索の面白さを求めると合わないところはあるものの、全体的にテーマに沿って良くまとまっている、フリーゲームの枠に収まらない作品だ。
無料でコンパクトに楽しめるため、イラストの雰囲気やドラマ性・風刺性のあるテキストアドベンチャーが好きな方はぜひ遊んでみてもらいたい。
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