タイトル | 存在/しないあなた、と私 |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | Fontainebleau/Nino Games |
満足度 | B(やや満足。条件付きでお勧めできる。) |
要点 |
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執筆日 | 2024年12月18日 |
はじめに
Steamにて条件がわからないもの以外の実績コンプまでプレイ。
『Fontainebleau』開発の短編テキストアドベンチャーゲーム。
目の前に現れた謎の少女との対話を通じて、自分や少女、世界の謎を解明していく、ややサイコホラー味のあるシナリオとなっている。
- 謎の少女であるヒロイン『リリス』は日本語フルボイスが実装されている。
- タイトル画面ではなぜか中国語のタイトルが表示されているが、しっかりと日本語対応。
- イベントスチルも値段の割に多数収録されている。
システム
謎の少女『リリス』と会話し、選択肢を選んで進行していくテキストアドベンチャー。
- 章仕立てになっており、1章ごとにタイトル画面に戻る形になっている。
- 続きからを選択すると次の章がスタートする。
- 本作は章ごとの自動セーブのみとなっており、また章クリア時しかタイトル画面に戻ることが出来ない。そのための仕様と思われる。
- 選択肢によってルートが分岐する。
- エンディングは3種類だが、実績用の分岐もあるため体感的なルート数はもう少し多く感じる。
良かった点
価格に対して豪華な仕様の数々。
主に演出面において、価格以上の豪華仕様となっており満足度が高い。
- 前述のとおりヒロイン『リリス』はフルボイス。
- 低価格帯のゲームはボイス無しの作品も多いため、これだけでもお得感がある。
- イベントスチルも価格帯としては多め。
- テキストアドベンチャーとしてシーンを彩るイベントスチルの数は重要。下手なミドルプライスくらいの量が用意されている。
- イラストも雰囲気抜群で魅力的。
- 一部シーンにて、ヒロインの歌唱シーンが用意されている。
- 簡易的ながらムービー風の演出で豪華。分岐によるささやかな仕掛けも。
- システムに絡めたシナリオ演出も多く採用されており、没入感の向上に一役買っている。
- BGMも雰囲気に合ったものが採用されている。
非常に哲学的な内容のシナリオ。
- シナリオは非常に哲学的。純粋に物語というよりはプレイヤーに問いかけてくるような内容になっており、まさにヒロインとの対話を通じて進行していくデザインになっている。
- 謎の少女について知る中で、世界の在り方や自分自身についてまで深く考えさせられる。
- メタ的な発言も多く、かなり好みが分かれそうな点ではある。純粋な恋愛アドベンチャーのような物語を求めていると全く合わないと思われる。
- 少々毛色は違うがイメージとしては『ドキドキ文芸部!』や『最悪なる災厄人間に捧ぐ』あたりが近いか。
- 翻訳のクオリティも高く、難しい内容ながら読みづらさは全くない。
- 会話メインでヒロインフルボイスの仕様も手伝って、軽い読み口で楽しめる。
- おかげで感情移入や共感・理解もしやすく没入度は高い。
- ただし、本作の設定や世界観に没入出来すぎる人にはホラー味がかなり強く感じる可能性がある。逆に言うと、普通に感情移入する程度であればホラー感はほとんどない。
- 日本語訳は日本版ボイス担当の声優さんが協力しているとのこと。頭が下がる。
不満点
哲学的なシナリオ展開上、やや退屈な面がある。
- 感情移入しやすいとは言ったものの、まだ謎だらけの最序盤だけは感情移入しづらい。
- 哲学的が故に、内容があるようで無いようなシーンが目立ち、感情移入しきれていない序盤はやや退屈に感じてしまう。
- 上記した通り最終的な没入度は高いため、あくまで序盤が退屈という程度のもの。
- なお筆者のプレイ時間は4時間弱。後述の難点から分岐回収のペースによって差が出てくるだろうが、1周当たりのプレイ時間は短編を自称するだけあって短く、最終的には退屈さはあまり残らないだろう。
- 章が切り替わるタイミングでしかタイトル画面に戻れない=正常にゲームを終了できない点については、各章10分程度で終わるため問題には感じにくい。
周回前提の仕様でありながら、周回プレイにおいて不便な仕様が目立つ。
- ゲームの仕様上仕方が無いことではあるが、選択肢が多い。
- 高速文字送りできるものの、選択肢の度に止まるため周回テンポは悪い。
- 一度選んだ選択肢が見た目で判別できないため、分岐や実績を探すのは困難。
- 飛ばせない長尺シーンが多い。
- オーブンのミニゲーム、歌唱シーン等。
- 手動セーブ無し、エンディングまで進めないと前の章に戻れない仕様のため分岐を誤った際の虚無感が凄まじい。
- せめてエンディングを2つ見たらチャプターセレクト解禁などあればよかった。
- エンディングリストやスチルのアルバム等が存在しない。
- 進行具合の確認はSteamの実績機能でしか確認できず、周回時の指針が立てづらい。
- 各実績の説明文も解除条件に関わらないものになっている。
- スチルや歌などせっかく豪華な仕様になっているのに、アルバムが無いため自由に鑑賞できないのも難点。
その他
- ヒロインのボイスについて、通常・明るい系統のシーンでの演技は合っているが、シリアス・暗め・悲しい系統のシーンの演技がやや合っていないように感じる。
- 通常時や明るいシーンの演技とあまり差が無く、少々軽く感じてしまった。
- とはいえこの価格帯でフルボイス、翻訳の監修まで担当されているのだから贅沢を言ってはいけない。
まとめ
値段以上の強力な演出に裏打ちされた抜群の雰囲気と、プレイヤーに問いかける哲学的な展開が魅力の個性的な作品。
ちょっと重めの中二病患者や、やや病み気味の人に特に刺さりそうな世界観は、ストアページの雰囲気に釣られた人ならどっぷりと浸れることだろう。
演出重視でプレイヤビリティが低くなってしまっているのが残念だが、総じて値段以上の体験ができる作品と言える。
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