タイトル | アイ・ネット・マーダーマジック |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | Renka |
満足度 | D(不満が勝る。たいていの場合お勧めできない。) |
要点 |
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執筆日 | 2025年1月19日 |
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水星汐 |
はじめに
Steamにて実績コンプまでプレイ。
個人ゲーム開発者『Renka』より発売されたローグライト育成ゲーム。
とある事件により命を落とした配信者の少女の人格がコピーされたAI。配信の仕事を続けるため、プレイヤーはAIとなった彼女のマネージャーとなり配信活動の手伝いをしながら事件の真相を解き明かしていく……というのが本作のあらすじ。
基本システム
- ゲームはテキストアドベンチャーパートとローグライト育成パートを交互に繰り返し進行していく。
- テキストアドベンチャーパートは『Renka』お得意のチルいBGMに幻想的でアンニュイなイラスト、いい意味でも悪い意味でも回りくどい表現のテキストで雰囲気バツグン。
- ローグライト育成パートの状況によってエンディングが分岐する。
- 1周当たりゲーム内時間1ヶ月。分岐によってはもっと早く終了する場合もある。
- コンプまでプレイで3~5時間程度。
ローグライト育成パート
配信活動の手伝いとして、ライブ配信・動画投稿を行う。
- ゲーム内時間で1日1回、『データセット』と呼ばれるアイテムをランダム入手する。
- データセットはそれぞれ『HLP』と呼ばれる数値と専用のスキル、動画に変換した場合のジャンルが設定されている。
- 入手したデータセットは装備、あるいは動画に変換することで効果を発揮する。
- 装備は6枠。
- 装備したデータセットの総HLPが高いほど配信活動で得られる結果が向上する。ただし100を超えると効果が減衰し、200以上は稼ぐ意味がほとんど無いとのこと。
- スキルは『隣り合ったデータセットのHLPをアップする』『配信で得られるフォロワー数アップ』などさまざま。
- データセットを消費して動画を作成することも可能。
- データセットごとに『日常』『ゲーム』など作成される動画のジャンルが決まっている。
- ライブ配信は毎日自動で行われる。それ以外に、『動画作成』『ライブメンテ(ライブ配信の効果向上)』『プロモーション(動画の効果向上)』『データセットを追加入手』の中から1日1つ行うことが出来る。
- 『HLP』『装備したスキル』『動画』『ゲーム内曜日』等により1日の獲得フォロワー数や再生数が変化していく。
- 日数経過や一定のフォロワー数獲得、後述する度胸訓練の進行具合によってシナリオが進行する。
その他
- 育成パートでは『度胸訓練』と称した機能も用意されている。
- 1日消費して特殊なイベントが発生。ここでしか入手できない特殊データセットが入手できる。
- 翌日は疲労状態となり何もできず、その次の日も疲労が残り外出を伴う行動(度胸訓練と動画作成)が制限される。
良かった点
『Renka』作品ならではの独特な世界観とチルい雰囲気。
- 低価格ながらイラストは美麗で、幻想的かつアンニュイな世界観が表現されており、魅力的。
- ゲーム内で使用されているイラストの数は多い。
- BGMも数は少ないものの、いわゆる『チルい』曲が採用され、上記イラストと併せて独特な雰囲気、プレイフィールを生み出している。
- テキストも良い意味でも悪い意味でも雰囲気重視で、中身があるようで無いような、回りくどくて抽象的な表現が多用される。
- 好きな人にはかなり刺さるだろうし、苦手な人はとことん苦手なタイプのテキストと言えるが、本作の魅力を語る上では重要なファクターとなる。
- これも『Renka』作恒例となる要素だが、いわゆる『スターシステム』を採用しており、同開発の過去作に登場したキャラクターたちが役割を変え本作にも登場する。
- 本作のスターシステムキャラクターは、過去作を知らなくても問題が無い程度の表現に抑えられている。
- これも独特な世界観を構築するのに寄与している要素と言える。
全体的にテンポ良く進行する。
- 演出は良くも悪くも淡々としており、テンポ良く進む。
- 特にテキストスキップを活用する2周目からはかなりテンポが良く、周回前提のゲームとして快適に周回を重ねることが出来る。
- 逆に言えば簡素・単純な作業の繰り返しとなるため合わない人には合わないだろう。この辺りは問題も多く、詳しくは後述。
不満点
各要素の作り込みがあまりにも甘く、育成ゲームとしての楽しさが見えてこない。
- 様々な数字を盛って、最終的にはフォロワー数を稼いでいくデザインになっているが……。
- フォロワー数がシナリオ分岐に関連しており、ただ稼げばいいというわけではないのが大きな問題。
- シナリオ分岐に必要な分の最多のフォロワー数条件は1周目で適当にやっているだけでも稼げてしまう。このため、2周目からはむしろフォロワー数を稼がないプレイを強要される。
- スキルの効果も単純で、基本的に数字を盛る、盛らないに関連した能力しか持たず、スキル間のシナジーもほとんどない。
- 上記通りただフォロワー数を稼げばいいわけではないため、ローグライトなのに強いカードが手に入っても何も嬉しくない。
- 『HLP』『ライブ配信での獲得効果』『動画投稿での獲得効果』と要素が多く、その上で演出が簡素なため『何がどうなってこの結果になっているのか』がわかりづらい。
- そしてこれもフォロワーを稼がないプレイを強要される都合、結局考えても意味が無いとなり、プレイヤーのゲームシステムに対する興味を削ぐ方向に作用してしまっている。
- ライブ配信は自動で行われ、日数を消費するとはいえ度胸訓練以外の行動はすべて一切のデメリットなく毎日自由に行えるため、育成ゲームによくある行動管理・体力管理の概念も無い。
- これらの仕様により、フォロワー数を稼いでも達成感が感じられず、手ごたえが全くないプレイ感になってしまっている。
- 雰囲気ゲーとは言っても、システムまで雰囲気で”なんとなくそれっぽいもの”になってしまっている。
- ローグライト育成ゲームとして破綻していると言っても過言ではないだろう。
雰囲気ゲーとしてもノイズがある。
- テキストゲームとして独特な世界観や雰囲気を楽しむものとして考えると、上記の破綻した育成パートが完全にノイズ。
- 結果として雰囲気ゲーとしても、育成ゲームとしても勧められない出来になってしまっている。
- そもそもローグライト育成システムが幻想的な世界観とマッチしていない。
- ローグライト育成に世界観を活かすようなリンク性が無く、シナリオや世界観側にもローグライト育成である必然性が無いため。
- 世界観に没入させたい雰囲気ゲー側と、システム・遊びに夢中にさせたいローグ部分で喧嘩してしまっている。
- 別の言い方をするなら、事件の真相にフォーカスしたシナリオと、配信の手伝いをするゲームシステムで別の方を向いてしまっており、2つを繋ぎ合わせる要素が存在していない。
- おそらく方向性としては当ブログで扱った作品だと『存在/しないあなた、と私』や『見習い死神シミュレーター』に近い。
- これらの作品は向き不向きはあれどゲーム作品としての長所を活かした内容になっていたため、比較すると本作はやはり数段落ちる印象。
- 不快感強めのストレス演出も見受けられる。やたら大きなSE、強制的にタイトル画面に戻されることも。
- この点も雰囲気ゲーとしてはノイズだろう。せっかく没入していても強制的にはじき出されるのだから。
まとめ
幻想的・退廃的なイラストとチルいBGM、テキスト表現で独特な世界観や雰囲気を作り出せてはいる。それは確かに魅力的ではあるものの、そこに乗せるゲーム性が完全にノイズとなっており、世界観や雰囲気に浸るのを邪魔してくる。
前作『水星汐』でもそうだったが、ゲームとしての面白さに対しての感覚がプレイヤーとズレてしまっている感があり、この作品の長所はどこなのか、それを最大限に表現するために何が必要で、何が不要なのかの選別が出来ていない印象。
正直、ここまで『世界観や雰囲気が魅力』だけど『ゲーム性がイマイチ』なら完全にテキストアドベンチャー(ノベルゲーム)にしてしまった方が、この作者の作り出す世界観を活かせるのではないかとも思ってしまう。
ただ、前作『水星汐』と比較した場合、前作ほど異常なストレス要素にまみれてはおらず、まともに遊べるようになったため前作よりは満足度を高くした。
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