タイトル | Chained Echoes |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | Matthias Linda/Deck13/WhisperGames |
満足度 | S(とても満足。自信を持ってお勧めできる。) |
要点 |
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執筆日 | 2024年2月15日 |
はじめに
Steam版でクリア後の要素まですべてプレイ。
Chained EchoesはSFC時代を彷彿させるピクセルアートで描かれるRPG。SFC時代の古き良きJRPGを意識した作りになっており、先日レビューを投稿したSea of Starsと近い作風となっている。
- 剣と魔法が存在するファンタジー世界、国家間の争い、謎の兵器に神の存在などオールドJRPGらしい要素がてんこ盛りだ。
- 基本はオーソドックスなコマンドバトルを採用しているが、オーバードライブゲージというゲージを管理する要素がアクセントになっている。
良かった点
まずはシナリオ面。RPGのシナリオとしては王道ながらも非常によくまとまっている。
- 登場する人物や国が多いため序盤はやや頭に入ってきづらいものの、いい意味でコロコロと展開が変わり、伏線を散りばめつつその時々でわかりやすい敵を用意しつつ『本当に悪い奴は誰なのか』がわからないまま進んでいくため先が気になる作りになっている。
- 海外産ゲームにつきまとう問題としてローカライズの問題があるが、このゲームは誤字・脱字こそチラホラ見られるものの、全体的なテキストとしては違和感なく読める内容になっている。
RPGとしてテキスト量が多くなりすぎない範囲でキャラクターの心情もよく描かれており、登場人物一人一人にしっかり行動原理が存在し、それがゲーム内で理解できるようになっているため違和感や不快感なく進められる。
- このため仲間キャラクターに愛着も沸きやすい。
- ラストの盛り上げがやや足りない感があるのは残念だが、RPGとしては満足感のあるシナリオだった。
グラフィック面も、SFCテイストのピクセルアートのクオリティは高い。
- 火山以外の伝統的なファンタジーRPGのロケーションは網羅しており、見やすく遊びやすく作り上げられている。
バトルもよく作り込まれており、特にシナリオ中のバトルは雑魚戦・ボス戦ともに遊びごたえがある。
- オーバードライブゲージという、味方の行動の種類によって増減し一定値をキープすることで味方に恩恵があるゲージの管理のため各キャラは様々なスキルを使うことができる。
- 前線で戦う4人に対しそれぞれにペアとして後衛に4人を編成し、ペアになっているキャラクター同士はいつでも交代してすぐに行動することができる。
- 各キャラのスキルは攻撃・回復・バフ…のように種類分けされており、それによってゲージの増減が決まるため、前衛後衛のペアにどんなスキルを持たせるか、どんな順番で使っていくかといった戦略性がある。
- 通常こういった『味方サイドに自由に行動させないためのシステム』があると戦闘が窮屈で面倒なものになりがちだが、このゲームでは上記した編成自由度の高さに加えて、戦闘ごとにHP・TPが全回復、そもそも雑魚敵の数が少なめに設定されている、多少オーバードライブゲージを雑に扱っても勝てるような難易度に収まっている場面が多いなど面倒にならないような工夫が随所に施されている。
- ある程度ゲームを進めると『スカイアーマー』と呼ばれるロボットで弱い敵を蹂躙できるようになり、宝箱回収などの目的で序盤のマップに戻っても雑魚戦が面倒に感じにくい。
- バトルスピードを倍速にすることができるのもありがたい。
オールドJRPGタイプのゲームとしてはやや珍しくレベル制を廃しており、キャラクターの強化は『グリモワールの欠片』というポイントでのスキル取得、戦闘後に入手できるSPによるスキルの強化、そして装備で行う。
- このため常に製作者の想定した範囲の戦力で戦うことになり、戦闘バランスはすこぶる良好。
- 前述したオーバードライブゲージをうまく利用しながら戦うことで骨のあるバトル体験ができるようになっている。
- 自由度が無いとも考えられるが、それ以上に楽しさが勝っていた。
そして全編を通して飽きがこないよう、ゲームを楽しんでもらおうという工夫がちりばめられている。
- 操作やシステムに慣れてきて、そろそろ飽きがくる…というちょうどいいタイミングで新たな要素が解禁されるようにデザインされており、それがクリアまでしっかり維持されている。
- シナリオの出来も相まって、最初から最後まで楽しめた。
不満点
シナリオ上仕方がないことだが、仲間キャラクターの一時離脱が非常に多い。
- それ自体は問題ではないが、離脱のたびにパーティ編成がぐちゃぐちゃにされるため編成をし直す必要があるのが前述した前衛・後衛の組み合わせのシステムと相性が悪い。
- パーティ編成をプリセット記録する機能などがあれば良かったかもしれない。
また、一部の仲間キャラクターは仲間にしなくてもゲームを進行することができる任意加入キャラになっている。
- 任意加入キャラに付きまとう問題としてシナリオ上で空気になりやすいというものがあるが、このゲームでももれなく空気になっている。
- オールドJRPGらしいといえばらしい点ではあるが、そもそも任意加入のキャラというものが本当にゲームに必要なのかどうかを考えさせられた。
- シナリオが良かったということで各キャラクターに行動原理が云々と語ったが、任意加入キャラたちは例外。とはいえ、ほかの多くのゲームよりはうまく扱えてはいる。
仲間キャラは最大12人とコマンドバトルのゲームにしてはパーティメンバーが多い部類だが、グレン・レニー・シエナ・ビクター・バトラスが強すぎ、逆にロブ・トムケ・エギル・ラファエルあたりは使いどころが限定されすぎていて性能面のバランスはやや悪い。
- とはいえ、バトルデザインがしっかりしているためどのキャラも活躍はできる。
全体を通して快適なゲームデザインとなっているが、クリスタルという装備だけは不快指数が非常に高い。
- 装備に付ける装備であるため武器を付け替えると古い武器に連帯して一緒に外れてしまう。
- 新しい武器への付け替えは鍛冶屋などの所定の施設でしかできず、その際もいちいち『古い装備からはずす』→『新しい装備に付ける』と2工程かかるためとにかく面倒。
- キャラの基本性能が進行で管理されている中で、このシステムがキャラカスタマイズのやり込み要素という位置づけだが、不快指数が高すぎて楽しさよりもストレスが勝ってしまっている。残念。
- 幸いクリスタルなしでもクリアできるようにはなっているが、他のシステムがしっかり作りこまれているだけに、この点は目立って不便だった。
ラスボスよりも強いオマケボスも数体存在するが、シナリオ本編の作りこまれたバトルデザインと比較して、クリア後のバトルのデザインがやや悪い。
- シナリオ本編で戦ったタイプのバトルの焼き増しだったり、なにか意味ありげっぽいけど誰なのかよくわからない敵だったり、初見殺しのギミック前提のボスが多く、クリア後のコンテンツとしては少々面白みに欠ける。
- これらを乗り越えた先で最後に戦うことになる強大なボスは最後にふさわしく純粋な力比べができるボス…なのだが、びっくりするほど弱い。思わず『え、もう終わり!?』と言ってしまうくらい弱い。
ちなみに強大な存在として設定上存在しているがゲーム中に登場しないものが一部存在する。実装されているクリア後要素が物足りなかったため、こういったものと戦えたりできたら良かったと感じてしまう。
まとめ
海外産オールドJRPGライクのドットゲームとして、非常に高いレベルでまとまった作品。
オールドJRPGをしっかり分析して、面白さを再現しつつも現代風に便利にしたり、オリジナリティを出す挑戦をしたりと、7年という長い開発期間に恥じない作りこみが随所で感じられる。凡百のクロノフォロワーに収まらない名作と言えるだろう。
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