タイトル | デバッグ彼女 |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | わくわくゲームズ/Chicken |
満足度 | B(やや満足。条件付きでお勧めできる。) |
要点 |
|
執筆日 | 2024年6月6日 |
はじめに
Steam版にて実績コンプリートまでプレイ。
日本のインディーゲームパブリッシャー『わくわくゲームズ』から発売された、ギャルゲー風ノベルゲーム+2D横スクロールアクションゲームという珍しい組み合わせの低価格カジュアルゲーム。
高校時代の友人と偶然再会した主人公は、彼女と共にゲームを作ることになる。数々のバグを発見し、ゲームの完成度を高めていきながら、彼女との夏を過ごしていく。
- ノベルパートでシナリオを進行し、随所でヒロインがデバッグ作業という形で主人公の作ったゲームをプレイすることになる。
主人公の作ったゲームはピクセルアートスタイルの2Dアクションゲーム。バグを見つけつつ、ステージをクリアすることで再びノベルパートに移行する。
- 主人公が作り出してしまうバグは誤字脱字、効果音の設定ミスのような軽微なものから、無敵の敵、入手できないアイテム、進行不能バグなど重度のものまで多種多様。
- 中には普通に遊ぶだけではなかなか気づけないようなものもあり、実際のデバッグ作業さながらの検証プレイが求められる。
- ヒントのリストはあるため、ある程度は推測可能。すべてを発見できなくてもゲームの進行に影響はないものの、すべて発見することで実績を得られる。
- アクションゲームとしても簡易的なスキルツリー、敵の落とした素材から武器や防具を作る錬金システムが搭載されており、なかなかやりごたえがある。
ノベルパートでは選択肢による若干の分岐もある。
- その場で好感度の増減幅を教えてもらえるため、オマケ程度と捉えるのが良い。
良かった点
低価格ながらしっかりと遊びごたえのあるデバッグ作業+アクションゲームパート。
- デバッグ作業というと印象が悪いかもしれないが、ゲーム的にはやっていることは謎解きゲームに近いプレイ感になっており、見つけた時の爽快感や達成感が心地よい。
- 発見時のヒロインのリアクションも大きく、爽快感や盛り上がりを演出してくれている。
- ゲーム作りの経験がある人や、バグの多いゲームを遊んだ経験がある人なら『あるある』と思ってしまうような、ポピュラーでどこか面白みのあるバグが多いのも好印象。
- デバッグ部分を抜きにしても、純粋な低価格アクションとしてもそれなりに楽しめるレベル。
- 簡易的ながらスキルツリーが用意されており、しっかりと分岐もする。
- 敵の落とした素材で装備を作る要素のおかげで雑魚敵を倒す意味も持たせている。
- バグ探しのための死に戻りをする際も、スキルポイントや素材を集められるため、苦痛が軽減されている。
- デフォルト状態だとかなり高難易度だが、強化要素を活用すると最終的には温くなるバランスになっており、これもカタルシスや爽快感において良い方向に作用している。
- 爽快感のある強力な武器やスキルが用意されている。通常のアクションゲームであればバランス崩壊レベルだが、この作品のメインはあくまでデバッグ作業なので良いほうに受け止めやすい。
- バグの量も多すぎない程度に収まっており、楽しかったで終われるいい塩梅。
- こういった要素は多すぎると作業感などストレスが勝りやすい。
シナリオに関しても、内容そのものはひと夏の恋愛物語としてコンパクトながら良くまとまっている。
- ゲーム作りを通して仲良くなっていく様子が不足なく描かれている。
- 王道で突き抜けた面白さがあるわけでは決してないが、デバッグパートが楽しいおかげで好意的に受け止めやすい。
- 全体的にはコメディ寄りで軽い読み心地。
- ただし後述するが問題も抱えている。
不満点
低価格であることを踏まえてもかなりボリューム不足。
- 自力でバグをすべて見つけて実績コンプリートまで2時間ちょっとくらい。さすがに短い。
- ゲーム内での時間の進行も1ケ月も経っていない。この出来のゲームをブランク有りでデバッグ協力の実質1人制作でイベントに持ち込むレベルに仕上げる主人公がとんでもない超人に見えてしまう。
- 重要なはずの完成したゲームを持ってインディゲームイベントに参加するシーンもかなりあっさりしている。
- デバッグパートのステージは4つ。最後はイベントバトルのようなものなので実質3つ。
- ノベルパートはヒロインの最低限の立ち絵しか用意されておらず、スチルも最序盤にコメディシーンのデフォルメ絵が1枚あるだけ。
- 海や遊園地のシーンなどはさすがにスチルがほしかった。
- ボイスも無い。登場人物は主人公とヒロインの2名だけ。主人公は絵が用意されていないためノベルパートで使用されている素材の数はかなり少ない。
- とは言え、バグの量などに関しては楽しかったで終われるちょうどいいボリュームになっており、ボリュームに対して楽しさが維持されてもいるため、短いこと自体が悪いという感じはない。
- スチルが無いなど、値段に対して盛り込み不足という印象。この値段だと演出面をもう少し求めたくなってしまう。
ボリューム面もそうだが、全体的に最低限だけ揃えたという印象。
- 最近のノベルゲームは低価格でもフローチャートからのシーンジャンプ機能が標準搭載になりつつあるが、そういったものは無い。
- シーン回想など準ずる機能も無い。このため各シーンでしっかりセーブしておかないとバグを取り逃してデバッグパートをやり直したい時かなり面倒になる。
- スキップ機能などはさすがにあるが、シーンごとに入力しなおす必要があり快適性が充分とは言えない。
- スチルが無いため当然だが、スチルのアルバムなども無い。実績集めたらハイお終い、と全体的なプレイ感がかなりあっさりしてしまっている。
その他の問題
- テキストの質は低い。決して読めないレベルではないが、誤字や誤用が目立ちやや違和感のあるテキストになっている。
- ゲーム開始早々に、『ゲーム売り場にやってきた』というシーンで背景がどう見ても本屋になっており没入感を削がれる。
- 書籍売り場とゲーム売り場が併設されている店もあるが、そもそもこのシーンで本を映す必要性が無い。
- この辺りは『バグや誤字、設定ミスを見つけるゲームそのものに誤字や設定ミスがある』と笑って許せるレベルではある。
- ヒロインのデザインは生成AI感が漂っており、好みが分かれそうではある。
- デバッグパートのUIの操作性がやや悪い。
- バグを指摘する際の操作が若干やりづらい。
- メニュー画面に関してはカーソルの視認性が低い。
- といってもそう長く操作することはないため大きな不満にはならない。
まとめ
低価格なりの至らなさは見受けられるものの、ノベル+横スクロールアクション、そしてデバッグ作業といったあまり類のない珍しい要素をうまく作品としてまとめ上げている。
ボリューム不足と、それに伴うかなりあっさりとした後味に決して無視できない物足りなさを感じるが、カジュアルゲームとして概ねよくできている。
セールなどでもう少し安くなることがあれば広くオススメしたい作品だ。
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