【Steam】DREAM TACTICS 感想

DREAM TACTICS タイトル画面 Steam
タイトル DREAM TACTICS
プレイした機種 PC Steam
メーカー Spectra Entertainment Inc./Freedom Games
満足度 S(とても満足。自信を持ってお勧めできる。)
要点
  • SRPG+デッキ構築カードゲーム
  • 1戦毎の時間は長いがそれを感じさせない楽しさと快適さ
  • デッキ構築も幅が広い
  • 戦闘時の快適さに反し構築時のUIは不便さが目立つ
  • 組んだデッキの試し場所がない
執筆日 2024年4月21日

 

はじめに

DREAM TACTICS タイトル画面

Steamにて難易度ハードでクリアまでプレイ。GBA時代を彷彿させるドットアートにポップでファンシーなキャラクターデザインが目を引くが、可愛らしい見た目とは裏腹にJRPGスタイルの探索フィールド+ファイアーエムブレムのような戦略シミュレーションスタイルのバトル+デッキ構築カードゲームスタイルの多彩なキャラクターカスタマイズと非常に遊びごたえのあるゲーム性を持つ。

ゲームの流れとしては探索パートでフィールドを自由に歩き回って宝箱を探したりデッキを組んだりしつつ、イベント地点に立ち入るとSRPGバトルパートに切り替わるというもの。バトルはすべてイベント戦闘となっており通常エンカウントは一切ない仕様。

SRPGバトルパートは最大4人でパーティを組み、オーソドックスなSRPG同様にマス目を移動しつつ、各々が別々の15枚のデッキから毎ターン5枚引き、それらのカードを駆使して戦うというもの。

カードはそれぞれ消費MPが決められており、基本的には各キャラ毎ターン5ポイントの中でなら何枚でもカードを使うことができる。シンプルな攻撃効果や回復効果、様々なデバフを付与するもの、デバフ状態の対象に追加効果を持つもの、地形効果を持つもの、追加のユニットを召喚するものやユニットを移動させるものなど様々で、通常のデッキ構築カードゲームのようにカードの組み合わせを考えてデッキを組むことができる。

デッキ構築のシステムとしては、カードはそれぞれ元の持ち主が決まっており、自分のカードはノーコストでデッキに入れられるが、他のキャラのカードをデッキに入れる際にはパーティで共有のコストを消費する。コストの範囲内であれば何枚でも別人のカードを組み込める。

装備アイテムも存在。こちらもコスト制となっており、それぞれ赤と青(一部緑の特殊装備枠も)のコストが設定されており、キャラごとの最大コスト内であればいくつでも装備できる。コストの最大値はレベルアップによって上昇していく。効果は多様で、単純にステータスを強化するものから特殊な効果を発揮するもの、カードの効果を変更・強化するものまで存在する。

ストーリーは序盤を超えると4つの道に分岐し、どこからでも攻略可能。4つのシナリオではそれぞれ新たなパーティキャラが仲間になり、多くのカードや装備アイテムが入手できる。敵のレベルはこちらの仲間のレベルに合わせて変化するため、どこからでも自由に進行可能。また進行途中でもそのルートの進行状況を保持したまま別のルートに行くこともできる。再開時は前回やめたところから再開可能。

 

良かった点

戦略シミュレーション+デッキ構築カードバトルというバトルシステムが非常に面白い。元々1戦毎のプレイ時間が長くなりがちなジャンル同士の掛け合わせでありながら、とても軽快に動作しサクサクとテンポよくバトルが進行していくため、プレイフィールはすこぶる良好。実際には結構な時間が経っているのに、プレイ中は全然そう感じないくらい夢中になれた。

SRPGはキャラクターごとにできることがかなり制限されている作品が多く、どうしてもパズル的な方向に向きがちなジャンルで窮屈さを感じることも少なくないが、本作はここに自由度高めなカードバトルを組み合わせたことによりプレイ感が180度変化。1ターンに何枚もカードを使ってコンボし、大ダメージを与えて敵の大軍を吹き飛ばす、派手で爽快感のあるものに仕上がっている。

難易度の調整も絶妙で、シナジーなどをまったく考えず適当に組んだデッキではなかなか苦戦するが、しっかりとSRPG的な難易度調整になっているため強いデッキを組んだらそれだけで楽勝というほどでもない。かと言ってSRPGやカードゲームに不慣れでは難しすぎるかというと、キャラクターが戦闘不能になってもロストなどはせず、勝てれば戦闘不参加者や戦闘不能者にも経験値が入る仕様になっているためクリアするだけなら多少のゴリ押しが効く。

上記したように途中でほかに行ける分岐シナリオの仕様と、新しい仲間・カードの追加タイミングやレベルが上がって装備できるアイテムの数が増えたりと段階的にできることが増えていくデザインも相まって、少しずつ仕様や戦い方を理解してプレイヤーが強くなっていく気持ちよさを感じられる。

戦闘中には時限式の宝箱も登場し、規定ターン以内に回収するか戦闘をクリアすることで中身のアイテムを入手できる。これも戦闘難易度のいいスパイスになっており、先に回収しに行くか、それとも無視して速攻でクリアを目指すかという駆け引きになっている。速攻クリアを目指したら思わぬところで敵の増援が出現してターン内にクリアできなかった…なんてこともあり、気の抜けない楽しさがある。そういった場合のリトライの利便性もしっかり確保されている。

デッキ構築とキャラクターカスタマイズの仕様も非常に好感触。キャラごとに得意な戦い方がありつつも、他のキャラのカードをある程度自由に混ぜられるというのはデッキ構築の楽しさをよく引き立てており、ハースストーンなどを遊んでいて『このカードをこっちのヒーローで使えたらなぁ…』と感じた経験のある人には夢のようなシステムだろう。

たとえば敵に疲労というデバフを付与し、疲労状態の敵に大ダメージを与えられるキャラクターがいるのだが、通常であればこのキャラクター自身で敵に疲労を付与し、疲労状態の敵に大ダメージのカードで攻撃しなければならないためカード枚数や消費MPの点で効率が悪い。

そこで疲労状態を付与するカードを他のキャラに持たせてやれば、自分で付与する必要が無くなり、そのぶんのカード枠やMPをさらに攻撃に充てることができる。といった組み合わせができ、カードゲームとしてのコンボ性はもちろん、SRPGとしても自由度やコンビネーションという面でよくできたシステムになっている。

装備アイテムの仕様も面白く、魔法攻撃が得意なキャラに物理攻撃のカードを持たせても普通はあまり効果を発揮できないが、カードの効果を変更するアイテムによってカードの威力を攻撃力依存から命中依存に変更できたりする。

上記のようにデバフの付与とデバフ状態の敵に攻撃の役割を分担するなら、付与役のキャラには火力が必要ないため、火力強化の装備を攻撃役に集中できるなど単純ながら奥は深く、そして幅広いカスタマイズに対応し得る多彩な種類の装備が揃っている。

これらのカスタマイズ性のおかげで極端に弱いキャラというのが生まれにくいデザインになっているのも高得点。

こういった要素をうまく組み合わせて、自分なりの戦術を組み立て、SRPGの土台でぶっぱなしていく楽しさは他のゲームではなかなか味わえないものだった。カードゲームでありながらも使いやすい引き直しシステムのおかげで運要素が抑えられており、運要素を排除したいSRPG側のゲーム性とうまく調和している。

その他細かいところとしてはBGMも雰囲気ばっちりで、GBA風ピクセルアート、可愛らしいデザイン、SRPGどこをとってもよく噛み合っている。プレイ後も頭に残った曲が多かった。

カードゲームゆえに用語が多く出てくるが、ヘルプ表示がとにかく充実していて覚えなくてもその場で見れば済むレベル。分岐シナリオではどのルートでどんなキャラが仲間になるのかが示されているため気になるキャラのルートを選べる。

各種設定も豊富に揃っており、特に文字表示をピクセルフォントと通常フォントで選べるのはよく気が利いている。全体的にユーザーフレンドリーで好感触。

 

不満点

豊富なカードや装備アイテムに対してページ送りやフィルターができないのがかなり厄介。ゲームが進み山のように増えた装備アイテムの中から1つずつスクロールして目当ての品を探す行為を繰り返すことになり、せっかくのデッキ構築やカスタマイズの楽しさに水を差してしまっている。

装備中のアイテムが一覧の上にズラリと並ぶため、ゲーム終盤は数十もの装備中アイテムが壁の如く立ちはだかることになる。装備アイテムはせめてステータスアップ系・カード効果変更系・特殊能力系でわけられたらよかったのだが…このゲームに限らず低価格帯のゲームには最早標準搭載と言っても差し支えない問題点だ。

デッキ編集と装備アイテムの編集画面が完全に別なのも不便。カード効果と連動したアイテムの装備についていちいち行ったり来たりしないといけない上、デッキ編集画面はカードの枚数が足りないと出られない。

シナリオにも少々問題がある。シナリオそのものはありがちながらも別に悪くはないしローカライズもほとんど問題ないのだが、上記した4分岐していてどこからでも進められ、いつでも中断して他のルートに行ける仕様の悪い面が出てしまっている。各ルートとも後半の戦闘は難易度が高く、

勝てないから別ルートでカードや装備を増やそう→そのルートも後半勝てなくなる→また他のルートでカードや装備を増やそう

の繰り返しに陥りやすく、どのルートも最後まで読み進められずに中途半端で、ようやくクリアできるようになったころにはそのルートの物語への関心が薄れてしまっている、なんてことになりがち。

もちろんこうしないとクリアできない難易度ではないが、おそらくゲームの導線としてはこうプレイできるようにデザインされている。それでいて各分岐ルートの最後に本筋のことがいろいろと明かされる形になっており、本来ならすこしずつ明らかになっていくハズのものがずっとふわふわしたままで、終盤にぜんぶ一気に明らかになってしまいバランスが悪い。

そもそも常にちょっとシュールなギャグテイストで進行し、時に登場人物の倫理観を疑う展開になるのも賛否わかれそうだ。

何よりも大きな問題に感じたのはラスボスより強い敵や自由に戦える敵がいないこと。ゲームをクリアし、すべてのカードや装備アイテムを揃え、頭の中で完璧なデッキを組んでいざ無双…!と思ってもそれを試す相手がいない。バトルシステムが楽しいからこそ、この点は非常に物足りなかった。

拠点となるほこらでしか正規にゲームを終了できないのもやや面倒だがすぐに慣れるため大きな問題ではないか。

 

まとめ

戦略シミュレーションとカードゲームという全く異なる、かつ時間のかかるジャンルをうまく融合させ独自の楽しさや爽快感を生み出している秀作。難易度はもちろんテンポの良さや各種設定などユーザーフレンドリーな部分を見ても作り込みが感じられるが、やり込むほどに痒いところに手が届かない『あと一歩』さも見受けられる。価格が安価であることを踏まえればこの『あと一歩さ』も許容できる範囲であり、間違いなく楽しめる一品であるため、ぜひとも遊んでみてもらいたい。

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