【Steam】星影の館殺人事件 感想

星影の館殺人事件 タイトル画面 Steam
タイトル 星影の館殺人事件
プレイした機種 PC Steam
メーカー 法螺会
満足度 S(とても満足。自信を持ってお勧めできる。)
要点
  • 優れたレトロ表現
  • シナリオ、テキスト、演出、キャラクター性すべてがすばらしい完成度
  • 無料
  • レトロ調ならではの軽い難点は有り
執筆日 2024年6月12日

 

はじめに

星影の館殺人事件 タイトル画面

Steam版にて真相解明までプレイ。

インディーゲームサークル『法螺会』制作の怪異ホラーミステリーコマンド選択ADVゲーム。ファミコン時代の『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』辺りを彷彿させるレトロテイストなグラフィックとシステムが目を引く。

  • ホラーとあるが、雰囲気とグロ表現がメインでホラー(特にジャンプスケア)苦手な筆者でも全く問題なくプレイできた。
    • ドット絵ながらそれなりにインパクトのある表現があるためグロ苦手な方は注意。
  • 会話を読み進めながら、捜査パートでは行き先や探索箇所を選択して情報を集め、推理パートで今までに集めた情報を元に事件を解決する、昔ながらの推理ADVを踏襲したシステムになっている。
  • 捜査中に得た重要な情報や謎はすべてファイルに自動で記録され、会話中でもいつでも確認できる。
  • 重要シーンはイベントCGが用意されており、こちらもファミコンスタイルのレトロ調で表現されている。

『助けてください!人が…殺されたんです!』見知らぬ少女に導かれ、星影の館に訪れた主人公。素人ながらも、現場や関係者から情報を集め、複雑な事件の謎を解き明かしていく…というのがストーリーのあらすじ。

  • 密室、関係者はみな事故だと断定している、謎の手紙など、この手のミステリでは王道の怪しい要素が序盤から目白押し。
  • 怪異要素も早いうちから顔を出し、事件の複雑性を高めてくれる。
  • シナリオそのものの分岐はないが、一部の選択肢でゲームオーバーやテキストの変化はある。

 

良かった点

怪異物のミステリーADVとして高いレベルで完成されたシナリオが好印象。

  • 序盤から多くの伏線がばら撒かれており、ヒントとして機能しつつも回収時には達成感をもたらしてくれる。
    • ヒントの出し方が絶妙で、簡単すぎず難しすぎず、タイミングもよく練られており推理ゲームとして楽しさがしっかりと確立されている。
  • 怪異や超常的な力が絡む事件という、ミステリとしてノックスの十戒を破る要素があるものの、これらの要素がプレイヤーに適切に情報開示されている。
    • 序盤からインパクトがあり、ストーリーに引き込まれる。
    • 怪異という未知の存在に対し、わかりやすい形でルール作りがなされている。プレイヤー自身が自然に怪異を推理に組み込めるよう、うまく導線として機能している。
    • 怪異そのもののシナリオ上の役割もよく出来ており、怪異物のミステリーならではの面白さとしてしっかり昇華している。
  • 登場人物たちは一癖も二癖もあるキャラが揃い、各々がそれぞれのスタンスで捜査に関わってくる。
    • 捜査の進展に合わせて状況が二転三転して飽きさせない。
    • キャラクターの魅せ方もうまく、はじめは不快に感じた人物も最後には愛着を感じられる。
    • 主人公のキャラクターも良い意味で推理物の王道的なもので、入り込みやすい。
  • 事件解決後の後日談のとあるシーンの演出がシンプルながら秀逸。
    • 満足感、達成感、どこか寂しい感じなどクリア後の『余韻』を増幅させるすばらしい演出と言える。
    • 終わり方も残されたキャラクターたちのこれからが垣間見える内容になっており、上記した愛着もあってこの点でも余韻を感じやすい。

グラフィック、BGM、SEも演出を効果的に盛り上げている。

  • ファミコンテイストのドット絵は当時風の趣がかなり濃く表現されており、雰囲気抜群。
    • ただ、公式のイラストと雰囲気が違いすぎるため現代のゲームとしては好みが分かれそうではある。
  • BGMも数は少ないが場面に合ったものや、シナリオの展開上印象に残りやすい曲が揃っている。
  • 謎が解けた時や怪しい発言を聞いた時などはしっかりとSEが鳴る。
    • テキストベースのゲームとして臨場感、爽快感の演出やプレイヤーへの印象付けなど、シンプルながら非常に効果的な演出となっているが、低価格のテキストADVゲームはこれが出来ていない作品が意外と多い。
  • ボイスはないが、レトロスタイルのため特に気にならない。
    • 後述するが、そもそも無料なのでボイスまで求めるのは酷である。

この完成度のゲームが、なんと無料で遊べる。

  • 安めのミドルプライスくらいなら余裕で納得してしまいそうなクオリティだが、無料である。
  • 公式の想定クリア時間は7~10時間。筆者も7時間ちょっとくらいだった。無料のテキストADVゲームとしては十二分すぎるボリュームだ。
  • 一部の配信サイトでは攻略情報やおまけデータをセットにした有料版も販売されている。それでも550円と格安。

 

不満点

大きな不満はないものの、捜査パートはやや面倒な仕様が気になる。

  • 一度調べた箇所や聞いた話に目印が付かないため、同じ話を何度か聞いてしまうことがままある。
    • もちろんレトロスタイルであることは理解しているが、現代のゲームとしてやや不親切なことは否めない。
  • シナリオチャートで好きなシーンからやり直す機能も無いため、適切にセーブしておかないとやり直しはかなり面倒。
    • 特にエンディングの変化に関わる選択肢を探す際に気になる。
    • エンディングの変化に関わる選択肢が少々わかりづらいのも難点。
    • 一応補足しておくとセーブデータはかなり多くスロットが用意されているし、高速既読スキップもある。

テキストフォントがファミコン風ドットで固定のため、現代の高解像度モニターだとやや読みづらい。

  • ファイル内のテキストは通常のフォントが使用されている。

この手のゲームには付き物だが、事件が起こるまでの最序盤はやや退屈。

  • 最序盤はコメディ調で読みやすいためそこまで気にならないが、開幕から一気に引き込まれるようなパワーはない。
  • といってもかなり短い期間なのでそこまで気にならない。

 

まとめ

怪異系のミステリーテキストADVゲームとしてシナリオ面、テキスト面、演出面、キャラクター性すべてにおいて非常に高い完成度を誇り、これが無料で遊べるというのは驚きの一言。現代のレトロ調ならではの軽微な難点こそあるものの、全体的な満足度は非常に高い。

レトロ調、怪異物ミステリーに抵抗が無ければぜひ遊んでもらいたい傑作だ。

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