タイトル | 百英雄伝 |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | Rabbit & Bear Studios/505 Games |
満足度 | D(不満が勝る。たいていの場合お勧めできない。) |
要点 |
|
執筆日 | 2024年4月27日 |
関連作品の感想はコチラ |
百英雄伝Rising |
はじめに
Steam版で一部ミニゲームと宝箱の実績以外コンプまでプレイ。
初代PS~PS2ごろの時代に展開された『幻想水滸伝』シリーズのスタッフが集まり、クラウドファンディングによる資金集めから4年もの期間を経て発売された。
- なお本作に登場する一部のキャラクターたちの前日譚となる百英雄伝Risingが先行して発売されている。
ゲームとしてはオールドスタイルのJRPGで、ストアページに『誰もが夢中になったあの頃のRPGのワクワク感が、最新のゲーム体験としてよみがえる』とあるように、まさに初代PS時代のJRPG…というか『幻想水滸伝』を彷彿させるデザインが基盤となっている。
- 100人を超える仲間と仲間たちが集う拠点、戦争を軸にしたストーリー、ターン制コマンドバトル、多彩なミニゲームといった、あの頃のJRPGや『幻想水滸伝』に詰まっていた要素がてんこ盛りだ。
良かった点
良かった点としては何といっても売りである100人を超える魅力的な仲間キャラクターだろう。
- もう30年近く昔の作品である『幻想水滸伝』シリーズを彷彿させるタッチのイラストでありながら古臭さはない。
- 中には見た目で敬遠してしまうようなキャラクターであってもしっかりとキャラクターが立っており、攻略的な意味だけでなく純粋に全員揃えたくなる魅力にあふれている。
- この点は前日譚である百英雄伝Risingでも良かった点で、ここはシリーズとして一貫して丁寧に作られているように感じた。
- これだけ人数がいるとさすがにシナリオ上空気になるキャラは多いが、温泉でキャラクター同士の掛け合いがあったり、各種ミニゲームでも顔出しがあったりとフォローもがんばっている。
- レベル上げも楽なので、いろいろなキャラを気軽にパーティに組み込めるのもありがたい。
- フルボイスとなっており、仲間を引き継いでの2周目では、本来まだ仲間になっていない場面でもボイスが用意されていたりとキャラクター周りは本当に頑張っている印象だ。
3D背景とピクセルグラフィックのキャラクターを組み合わせたビジュアルも素晴らしい。
- 懐かしさがありつつも、最新のゲームとしてプレイ感を損なうことはない。
- BGMも良質でどの曲も場面に合っているし、プレイ後にも耳に残る曲が非常に多い。
全体を通してオールドスタイルのJRPGとしての基本的な面白さは確かにある。あるのだが、後述する数々の問題点がその面白さを悉く邪魔してしまっている。このため純粋に良かったと言えるのは魅力的な仲間とグラフィック・BGMくらいだ。
不満点
まず大きな問題点として挙げられるのが、ゲーム全編を通してハッキリと感じ取れるほどの作り込みの甘さだ。とにかくありとあらゆるものの作り込みが全く足りておらず、ほぼ全てのゲーム体験で連続的かつ複合的に不要なストレスを感じ続けることになる。
例を挙げると
- メニューを開くと画面がピカっと青く光って1秒くらい操作を受け付けない
- メニューはLT、RTで大タブをスライドしていく方式で装備変更やステータス画面にたどり着くまでに何度もLT、RTを押す必要がある
- その切り替えにもいちいち操作を受け付けないウエイトを挟む
- マップの切り替わりはもちろん、戦闘に入る際など頻繁にロード(ロード時間自体は短い)
- 戦闘開始後、『たたかう・おまかせ・にげる』のコマンド操作を受け付けるまで謎のラグがある
- 6人パーティと人数多めな上、メニュー切り替え同様に戦闘中のコマンド入力にもいちいち操作を受け付けないウエイトが入る
- 戦闘演出は敵味方共に長いしカットも高速化もできない
- 戦闘時の行動中に仲間のHP/MP状況が見られない。このためオートだと瀕死に気づけない
- 敵を倒すとすぐには消えずワンテンポ遅れてスッ…と地味に消えていくため爽快感皆無
- 戦闘時のトドメボイスのタイミングが微妙にずれていて最後の攻撃が終わって戻っていく時に流れるためかっこわるい
などなど、メニューと戦闘だけでもちょっと触っただけでこれだけの調整不足を感じることができる。これだけではなくゲーム全編を通してあらゆる場面でこの調子のため、まったく気持ちよくプレイさせてもらえない。
- カメラワークも非常に雑で、マップが切り替わる際に突然逆向きにカメラが切り替わる場面がたびたび発生する。
- マップの端の方は変に斜めアングルになって気持ちが悪いし、移動速度を上げるとカメラが追い付かなくて先が見えないし、それがなくても先が見えないアングルのマップが非常に多い。
- 戦闘中に至っては攻撃しているキャラが全く映らず誰が誰に何ダメージ与えたのかわからない時まである。
インターフェースも散々な出来。
- 戦闘中、キャラクターの状態表示は画面の右側に縦一列になって表示されるが、実際のキャラクターたちは前後2列、それぞれ3人ずつになって並んでいる。
- 回復などする際は右側の縦一列表示の方で選択するため、見た目と実際の操作が一致せず慣れるまでミスを誘発する。
- ルーンという装備の変更画面も同じで、装備枠の一覧は縦4横2に並んで小さく表示されているが、大きく表示されたルーンそのものは円形に配置されている。
- もちろん選択は小さく表示された一覧側で行う。正気の沙汰とは思えないがこんなのばかりで、これで操作をミスして戻るたびに上記した謎の操作不可ウエイトが入るため、慣れるまで本当にイライラする。
全体的に『RPGツクール』でシロウトが作ったかのようなガバも満載。
- イベントで表示されているキャラをパーティに編成すると画面内で2人に増える
- 『そろそろ寝るね!おやすみ!』と言って去っていったキャラが画面暗転後にまたその場に立っている
- 開けた後の宝箱のグラフィックがどう見ても中身入っている
- 一定区間内に立ち入るとはじまるタイプのイベントがワープで侵入すると始まらない
- 店の入り口近くに人が立っていて店に入るためにAボタンを押すと扉ではなく人に話しかけてしまう
等々、とてもじゃないが2024年にリリースされたゲームとは思えないレベルのガバが普通に遊んでいるだけで何度も襲ってくる。
シナリオにも不満を感じた。序盤から終始描写不足で、登場人物たちとプレイヤーの間に認識や感情の差があり、どうがんばっても感情移入や共感ができず戦争という重いテーマをまったく活かせていない。
- 主人公であるノアとセイが戦争で対立することになるのが序盤の大きなイベントとして描かれるが、プレイヤー目線では出会ったばかりの2人が対立したところで特に悲壮感を感じない。
- そもそもセイはド序盤で1度使ったきりなので愛着も沸いていない。
- そして対立することになったとはいえそれは立場上の話で、初めからお互いに何も悪くないことが分かった状態なのでなにも盛り上がらない。せめて少しくらい誤解させて仲たがいしておかないと何がしたいのかよくわからない。
- 同じように、ノアの妹もプレイヤー目線で序盤は姿も見たことがなければ何のエピソードも無い名前だけの人物でしかなく、消えたところで大して気にならない。しかも消えた理由が攫われたとか事件に巻き込まれたわけではなく、単に奔放な性格で勝手にどこかに行っただけとなれば猶更だ。
- 3人目の主人公であるメリサに関しても妹同様に序盤では影も形も出てこないため主人公感が全くなく、終盤でノア、セイとならんで主人公面で強制出撃されてもやはり愛着が無い。
上記のノアとセイが対立することになるシーンでその時点で拠点となっている町を捨てて逃げることになるが、これも主人公たちがこの町で過ごした時間が『半年後…』で飛ばされている上この町でなにか重要なイベントがあったわけでもないためプレイヤー的には大した愛着が無く、町を捨てることに対しての認識が登場人物たちとズレてしまっている。
- そんな中でバックに主題歌を流して一騎打ちさせられても何も感情が動かない。
敵も同様で、そもそも事件の発端である原初のレンズがどういうものなのかプレイヤーに全く伝わっていない。
- すごい力を持っていることはわかるが、通常の魔導レンズとどう違うのか、それが具体的にどのように敵の目的である『レンズの力には個人差があるから、誰もが同じように扱えるようにする』に関係しているのかピンとこない。
- 終盤で原初のレンズの力で生み出されたモンスターが登場するが、『誰もが同じようにレンズの力を扱えるようにする』ことがなぜこのモンスターを生み出すことになるのかもよくわからないし、そのために生贄が必要というのもよくわからない。
- そもそもすごい力を持っているとか、昔の人はこの力を好きなように使っていたなどセリフとして言われるだけで、具体的にどんな力を持っているのか、どのようにすごいのかもわからない。
- 少なくともプレイヤーが見ている範囲では、原初のレンズの力でなにかすごいことが起きたことが無いので大層なものに見えない。
- よくわからない人たちがよくわからないものを巡ってよくわからないことをしているためどこにも共感ができない。
ノア・セイ・メリサの3人の主人公、切れ者でやり手な(という設定だが癇癪と陰口の印象しかない)ぺリエール、主人公の妹リーン、敵としてオルドリック公爵、原初のレンズあたりが物語のキーパーソンとして扱われている…と少なくとも筆者は感じているが、これらのキャラに話の展開上何の繋がりも無いのも物語の説得力を弱める要因になっている。
- たとえばノアとセイが幼馴染で妹と3人で遊んでいたとか、ノアとセイが原初のレンズに見初められてなにか力を受け継いだとか、妹が実は原初のレンズに関する重大な秘密を知っていて帝国に追われているとか、もっと序盤のうちにペリエールと一緒に戦うシーンを入れるとか、うまく見せるために出来たことはいろいろあるはずだ。
- メリサに至っては、両親や弟の件で明確に因縁がありセイとも関りがあるヤエルのほうがよほど3人目枠の適性がある。
なろうの如き主人公上げと敵や回り下げにも辟易した。とにかく主人公サイドが正しい、帝国や貴族が悪いということにしたさ過ぎて登場人物の言動がおかしくなっている場面が散見される。
- また終盤の山場となるシーンでは常に見張りがいるはずの牢屋から捕虜が脱走してずいぶん経つのにだれもそのことに言及せず、脱走したキャラの手によって事件が起こる…というガバガバにもほどがある展開でお涙頂戴モードに入る。あまりにも登場人物の知能を下げすぎている。
重要なはずの戦争パートもほとんどが伏兵か裏切りで勝負がつく展開の一辺倒。
- 終盤は上記の敵下げによって突如敵の知能が低下して勝手にガバって追い込まれていくため、『ついに強敵を追い詰めた』というカタルシスが微塵もない。
- しつこいようだが、これで『主人公と敵』という以外に大した因縁もない主人公3人とラストバトル!と言われても何も盛り上がらない。
テキストもひどい出来で、賊を追って入った人の寄り付かない坑道の中で賊に対して主人公が言い放ったのが『誰だ!』。言いたいことはわかるが、『何者だ』とか他に言いようはあっただろう。他にも画面が暗転してどうでもいいことを一言喋ってはまた画面が暗転するシーンが頻発してテンポも悪い。
- テキスト面は百英雄伝Risingでは良かったのに、明確に劣化している。
これらのせいで、仲間キャラには魅力があると書いたが主人公たち主要キャラには魅力が全く感じられなかった。
- というのもこれらの問題点はおそらく幻想水滸伝Ⅱみたいなことをやろうとして歪な形で生み出された主要キャラたちが、本来のキャラクター性とは関係なく幻想水滸伝Ⅱの役割を演じさせられているのが原因だからだ。
- 上記したノアとセイが戦争で対立するというのも、そもそもこの展開までに共感や感情移入の土台が全くできていないうえに、驚くほどあっさり再び仲間になるため本当に『幻想水滸伝みたいなことがしたかった』以外にこの展開に納得のいく理由がつけられない。
- 台本ありきでキャラを動かしている典型で、本来のキャラクター性が全く見えてこないため何も魅力を感じられないし、それすら描写不足な上に物語の核である原初のレンズが真の紋章の役割をまったく果たせていないためそもそも再現すらできていない。
仲間たちの性能面のバランスとバトルバランスもおかしなことになっている。
- 本作は仲間ごとの固有の能力が非常に少なく、あってもそのキャラの方向性を決定づけるほど強烈な個性になっていないものが多い。
- となるとどのキャラもできることに大差はなく、これ自体は好きなキャラが好きなように使えるようにという配慮として受け止められる。が、固有能力以外の差とバトルバランスがそれを許さない。
上記した固有スキルの少なさ(性能の控え目さ)により、キャラの性能は大きくステータス差と装備枠差、S・M・Lの攻撃射程で決まる。
- 敵の攻撃が序盤から異常に激しく、雑魚敵の攻撃が1人にちょっと集中しただけで即死が頻発する。
- 隊列の概念があるにも関わらず後列にもバシバシ攻撃が飛んでくるうえダメージ軽減効果なども無いため、後列に柔らかいキャラを置けば置くほど難易度が上がる。
- これでは隊列が単に射程の短いキャラを制限するだけの要素にしかなっていない。
単体対象と全体対象の行動の倍率設定もいかれており、特に回復は回復量が少ないうえに消費面で得でもない単体回復の存在意義がほとんどなく、全員に水のルーンを持たせて適当に全体回復しておくだけになる。
- 終盤は全体火力UP+自動回復の光魔法の自動回復がそこらの単体回復魔法より回復するので本当に出番がない。
- 攻撃魔法もMPを消費しているのに無消費の通常攻撃と大差ないため、一部のぶっ壊れキャラ(イーシャとモモ)以外攻撃魔法を使う価値が無い。
ダメージ計算もおかしく、多くのキャラがHPの6~7割くらいダメージを受ける中で防御が高いタンク系キャラはダメージが1桁になる仕様になっている。
- タンク系キャラは防御だけでなく攻撃も高く火力面でも優秀。速度やMPが低めな傾向にあるが、一桁ダメージしか食らわないため速度が遅くても問題なく、回復の必要性も柔らかいキャラより薄いためMPが低い点も問題ない。
以上の点からとにかく耐久系のステータスの重要度が高く、装備も性能の高い重装が優秀となり、そもそも重装を装備できるキャラは元の耐久ステータスが高い。低耐久キャラや軽装に価値が全くない。
- そして中には火力も耐久も無い、どうしようもないキャラがチラホラいる。
- そういったキャラの中には高レベルまで育てるとステータスの伸びが良くなる大器晩成型の者もいるが、クリアレベルよりもかなり高いレベルに設定されている上にクリア後に大したコンテンツも用意されていない。
- そもそもはじめから普通に成長するキャラに追いつくくらいの成長度でしかない者も多く、その上で結局後述のルーン格差があったりするためなんの救済にもなっていない。
装備枠の点で、ルーンの装備枠と性能差にも問題がある。多くのキャラがルーン装備枠4つのなか、6つも7つも枠があるキャラがいる。
- 固有スキルを持つキャラはそれだけで1枠埋まってしまうため、装備枠4つで固有スキルを持つキャラはカスタマイズの幅がかなり狭い。
- 装備できるルーンの種類もキャラによって違い、ステータスがこれだけ重要なバランス設定なのにステータス系のルーンを一切装備できないキャラもいるし、強力なレベル4のルーンを一切装備できないキャラもいる。
- また、魔法ルーンが1つで3つの魔法を習得できる(魔法の使用価値はともかくとして)のに対して、技ルーンは1つで1つの技しか習得できない。同じ1枠の装備枠でここまで不公平にできるのはすごい。
- しかも大半の技がSPを使うほどの価値が無い技で、SPを溜めるほどステータスが上がるパッシブルーンのほうが使い勝手がいい。
- となれば特に性能の弱いレベル2の技ルーンで枠を潰されたキャラは不遇であり、終盤は極意系のパッシブルーンが非常に強いためレベル3以上のパッシブ枠(または自由枠)がないとアタッカーとしては性能が低い。アタッカー寄りのステータスでパッシブ枠が無いキャラはどうしようもなくなる。
仲間の数が非常に多いためある程度の性能差は目を瞑るべきではある。弱いのもまた個性であり、弱いキャラを使ってクリアする楽しみ方もあるだろう。だが本作のこれはそうした前向きなものではなく、単に調整やバトルバランスとの擦り合わせができていないだけの意図していないものであるように見受けられる。
- 本作には体が大きく1人で2枠使う大型キャラが数名存在するが、そういったキャラの性能が普通のキャラと大差ないのもこうした調整不足の最たるものだろう。
- 結果上記した操作性の悪さも相まって、コマンドバトル大好きな筆者ですら途中からクリア後までボス含めてほぼすべての戦闘をオートで済ませてしまった。
他にも細かい不満が数えきれないほど存在。
- ファストトラベルなどの便利機能の解禁が遅すぎる→上記したシステム面の作り込みの甘さと併せて特に慣れないうえに制限が多すぎる序盤のプレイ体験が非常に悪い
- 各種ミニゲームのプレイ要求数が多すぎる→特に料理とベーゴマは仲間の加入に必要な回数が多すぎるし、段階的に楽しくなっていくことも無い
- ベーゴマバトルは3戦して2回勝った方が勝ちのルールであるにも関わらず、どちらかが2勝していても3戦目まで遊ばなければならない。中断やリタイヤはできない
- ラストダンジョンで唐突に始まるベーゴマバトル。やりたいことはわからないでもないが、本編にしてもベーゴマにしてもここに至るまでの出来がお粗末すぎてネタ的な面白さよりもドン引きの感情が先に来る
- 料理に関しても、対戦相手が出す料理は固定で、ランダムに選ばれる審査員によって点数が変わるだけ。こんなくじ引きを長ったらしい演出で10数回もやらないと仲間にならないキャラがいる
- 探索中シームレスにパーティメンバーの会話が始まる場合があるが、ミニマップが画面右上に表示されているのに会話は右下に表示されるため見づらい
- 町や拠点の作りも甘い。宿屋などの重要施設が遠いのはまだしも、変なところで引っかかることが多い。特に旧ハイシャーン市街では入って1歩で引っかかる
- マップの広さに対して移動速度が遅すぎて移動速度UPの効果を持つ装備やキャラが必須レベル。にもかかわらずイベントでたびたび主人公ひとりにされるためこうした装備やキャラがいなくなる
- 戦闘開始時のサポートキャラ演出が長すぎる。上記の移動速度UPのキャラが必須レベルなこともあり、戦闘時に効果を発揮するサポートキャラを編成する気がなくなる
- シナリオの都合で強制出撃になるキャラが多い。強制出撃キャラをパーティに入れなくて済むように強制出撃枠が別枠で用意されてはいるが3枠しかなく、4人以上強制出撃になるシーンがあるため満足に機能していない
- しかも強制出撃キャラの装備をろくに変更できない場面が多いため、事前に準備しておく必要がある
- 待機キャラに経験値が入るシステムがあるが、強制出撃枠に退けたキャラはどうやっても経験値が入らない。このため強制出撃率の高い主人公3人のレベルが上がらないし、待機メンバーも主人公のレベルまでしか自動では育たないためシステムが破綻している
- ボス戦はほぼすべてで特殊ギミックがあるが、ボスがしぶといため何度も何度も同じギミックを繰り返す羽目になり、演出も長いものが多い。ランダムモグラたたきなど単純に面白くないギミックも目立つ
- 面白いとか以前の話として、『ギミックを攻撃対象として選択する』だけのものが非常に多く、そもそもギミックと呼べる代物ですらない
- 防御コマンドにも問題が多く、挑発系の防御は効果を発揮しているか怪しいうえにダメージを軽減できない
- 特定の属性のダメージを軽減する装備があるが、敵の属性がわからないためあまり機能していない
- 戦争パートはなにがどのように戦況に影響しているのか非常に分かりにくく、それでいてテンポも異常に悪い
- 戦争パートやミニゲームの中にはプレイヤーの操作に関係なくシナリオ上の演出で強制的に勝敗が決する、所謂イベント戦が少なくないが、プレイヤー側にそれを判断する機会が無さ過ぎてその時になるまで気づかず、まじめに操作して徒労に終わるパターンが多い
- ボスとの連戦コンテンツがクリア前から遊べてしまい、この時点で数戦なら勝てる難易度でありながら獲得経験値が非常に多いためクリア前に遊んでしまうと一気にレベルが上がり以降がヌルゲーと化す→しかもこれが仲間加入の条件にもなっている
- とはいえバトルが何も面白くないため、この方法でレベルを上げてさっさとクリアしてしまった方が良い…とさえ思ってしまう
- ゲーム内にクラウドファンディング支援者が多数登場する。世界観が重要なスタイルのゲームでここまで露骨に登場させるのは没入感を大きく削ぐため、オンオフ機能など欲しい
発売前のアーリーアクセスから発売後数日はこれらに加えて致命的なバグ(エンカウントしない、仲間が仲間にならないなど)もあった。一部はすでに修正され、残りも重大なものはさすがに修正されるとは思うためこの感想はこういったバグは除いてのものだが、それでもこれだけの問題点を抱えている。
主にプレイアビリティの問題について、本作がレトロライクで『幻想水滸伝』を始めとしたPS時代当時のような作品を目指していたという点で見た場合でも擁護できるものではない。
- 当時でも配慮できていたことができていないし、低価格のRisingで出来ていたことも出来ていない。
- 本作の不満の中には『幻想水滸伝』のころにも似たような不満があったものもあるが、そもそも『幻想水滸伝』のようなゲームを作りたいとして、悪いところまでわざわざ再現する必要性が感じられない。
- 必要性のあるストレスを再現するならわかるが、本作のストレスの大半は不要なものだ。
- 『古き良き』と『単なる作り込み不足』を混同し、調整不足の免罪符にしてはいけない。
まとめ
レトロライクのJRPGの面白さはたしかにあり、方向性も間違ってはいない。にも関らず、調整不足から来る数々のストレスが面白さを素直に認識することを阻害し、その調整不足感がプレイヤー目線ではっきりと感じ取れてしまうというのはゲーム体験として極めて低品質。
『誰もが夢中になったあの頃のRPGのワクワク感が、最新のゲーム体験としてよみがえる』とは公式の文言だが、夢中とは正反対の感触が強く、少なくとも最新のゲーム体験としてよみがえっていないのは間違いない。
昔からのゲームファンとしてこういった企画は素直に応援したい。不満の中には慣れれば我慢できるものもあり、クリアして少し時間が経てばストーリーの粗も気にならなくなるだろう。が、どうしても人にお勧めはしかねる。繰り返しになるが、面白さのタネはたしかにあり、あらゆる部分をもう少しだけでもしっかり調整すれば名作にもなり得た。非常に勿体ない作品だし、プレイしてなんだか悔しいような、やるせない気持ちになった作品だった。
コメント