タイトル | 百英雄伝Rising |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | NatsumeAtari/505 Games |
満足度 | B(やや満足。条件付きでお勧めできる。) |
要点 |
|
執筆日 | 2024年4月10日 |
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百英雄伝 |
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はじめに
Steam版を実績コンプまでプレイ。
主に初代PS~PS2で展開されていた『幻想水滸伝』シリーズのスタッフが集まって作られる新作RPG『百英雄伝』本編の発売に先駆けて公開された前日譚に当たる作品。
本編のほうはターン制コマンドバトルのレトロJRPGスタイルだが、本作はメトロイドヴァニア風の2D探索アクションゲームとなっている。
- 本編にも登場する一部のキャラクターが登場し、住民の願いを聞いて町おこしをしながら、遺跡に眠る魔導レンズを巡る冒険を進めていくのが基本的な流れとなっている。
- 前日譚であるため、本編とのデータ連動要素も予定されている。
良かった点
良かった点としてまず仲間キャラクターが魅力的で、キャラ同士の掛け合いが楽しかったことが挙げられる。
- 『スカベンジャー』で素直で快活、困っている人は放っておけない『CJ』、元傭兵の冒険者でCJとは真逆の現実主義者『ガルー』、舞台となる町『ニューネヴァー』の町長代行で金にがめつく頭の切れる魔法使い『イーシャ』の3人は、それぞれに物語のカギとなるような謎や秘密を抱えながらも時にコミカルな漫才めいた会話を披露してくれ、会話テキストを楽しく読み進めることができた。
- 本作のゲームとしての体験の大半は退屈なものだが、3人が魅力的だったからこそ最後までプレイしたい、物語の続きを見たいと思うことができた。
仲間キャラだけでなく、主にサブクエストで幾度となく登場する街の住民たちとのやり取りも秀逸だった。
- 住民1人1人にもしっかりとバックボーンがあり、頑固者の年配者から頼りない若者までしっかりとこの世界で生きていることが感じられる。
- 大前提としてそもそも仲間キャラ3人が魅力的というのがあるが、3人と住民の会話も時にコミカルに、時にまじめに世界観やキャラクターの掘り下げになっており、拠点となる『ニューネヴァー』全体が魅力的に感じられるように丁寧に作りこまれている。
キャラクター周りの良いところとして、ドット絵の出来もどことなく『幻想水滸伝』味を感じられるデザインになっている。
- ドットモデルに表情差分が無いなど値段相応のチープさはやや感じるものの、『幻想水滸伝』に釣られてやってきたファンには好意的に受け入れられるレベルの出来だ。
- 価格を考えれば背景グラフィックも綺麗。
快適に遊べるよう、低価格ながら配慮が行き届いている。
- ファストトラベルが充実しており快適に探索が可能。
- とんでもない数あるサブクエストも次に何をすればいいのかがわかりやすくリスト表示されるため、サクサクと進行することができる。
低価格の前日譚作品として考えれば、世界観やキャラの紹介・本編への期待感といった要件は満たしており、かつての名作のスタッフが再集結…という観点で見ても、しっかりと令和の時代に順応した利便性が確保できており、必要十分な出来であった。
不満点
悪かった点として、まずはゲームプレイの大半を占める退屈極まるお使いクエストの数々だ。
- メインクエストも、冗談みたいな数のサブクエストもほぼすべてがお使いであり、お使いに次ぐお使い、ゲーム全体がお使いの連鎖で成り立っている。
例として
邪魔な岩を破壊するのに魔導の力が必要→魔導のお店を開店するために素材を集める→この店じゃダメだった→別のお店を開店するために本を探す→この店だけじゃダメだった→別の店を開店するために素材を探す
なんて流れがひたすら続く。
- サブクエストは仕方ないにしても、メインクエストまで終始この調子であり、主人公たちが自発的に何かをするという展開はほとんどなく最後まで退屈極まる内容であった。
- ただ、ストーリーの核心そのものはありがちながらも楽しめるものになっており、これは上記したように仲間キャラ3人が魅力的であるのを前提にはしているが、見せ方さえ違えばもう少しいい印象になった可能性が高い。
- おそらくは地震被害により店などの施設がない拠点の発展(復興)をストーリーの中に組み込んでしまったのが原因とは思うが、お使いという形でしか物語を進められないのは非常にもったいない。
上記お使いだけでなく、戦闘や探索についても退屈な時間が長く続く。
- 本作は3人の仲間キャラを頻繁に入れ替えながら戦闘・探索を行うシステムになっており、これそのものは割とよくできていて楽しいのだが、序盤はまだ3人揃っていないうえ、各キャラのアクションもすべては解放されていない状態のためできることが少なく窮屈なプレイを強制される。
- 3人揃って全員のアクションが解放される頃にはメインクエストはほぼ終盤に差し掛かっており、それまではシナリオも戦闘も探索も退屈…と、ゲームとしての楽しさを見出すのが難しい。
- 3人揃いさえすればリンク攻撃の爽快感など低価格のアクションゲームとしては一定以上の楽しさはある内容になっているため、もっと早く3人揃うようにしてくれれば印象は変わっただろう。
- せっかく3人を切り替えながら戦闘・探索するシステムなのに、上記のお使い要素もあって高機動のCJばかり操作することになるのもややもったいない。
インターフェースにも難点が多い。
- 探索要素として特定の属性の攻撃でしか壊せない岩が存在するのだが、属性を切り替えるためには対応した『ルーン』という装備を持たせる必要がある。
- 『ルーン』を変更するためにメニューを開く→装備画面を開く(1番上ではない)→装備変更画面を開く→ルーンの欄を選択→所持ルーン一覧からルーンを選択→何度か戻ってメニューを閉じる、と結構な手間がかかる。
- この岩は一度壊せば復活しないためまだ我慢できるが、当然敵にも属性が設定されているため、たとえば火山で火属性の敵ばかり登場するなら水攻撃・火耐性をつけるべきなのだが、この変更が面倒すぎて結局属性など無視してゴリ押してしまった。
- ルーンの付け替えに関連して、仲間の1人であるイーシャは装備しているルーンによって攻撃方法そのものが変化する性質を持っているのだが、これも場所ごとに切り替えることなどせずずっと同じでゴリ押してしまった。
同じように、アクセサリーもステータスを強化するもの以外にドロップ率を高くしたり、釣りで獲れる魚のグレードを上げたりとさまざまな能力を持つが、こちらも付け替えが面倒であまり活用しなかった。
- ルーンもそうだが、一覧ページでソートはおろかページ送りすらできないのは令和の時代のゲームとしてプレイ体験が非常にチープに感じられてしまう。
- もう少し楽に装備変更できる仕組みが欲しかったが、低価格のゲームにそこまで求めるのは酷か。
ただ、クエスト達成演出としてスタンプカードが採用されていたり、ファストトラベルやわかりやすいクエスト情報、高機動のCJなど、お使いによるストレスが大きくなりすぎないよう快適化の工夫は凝らされている。
- 3人揃うのが遅い問題も、ゲーム進行の中で面白さを段階的に解放していくのは飽きさせない工夫とも捉えられる。
- プレイ時間自体がクリアまでで10時間程度、実績コンプでも20時間弱程度とそこまで長くはないこともあり、値段も考えれば退屈ではあるが苦痛ではない範囲ではある。
まとめ
問題点も多く抱えるが、本編よりも策に発売された前日譚作品として見た場合、世界観やキャラクターの紹介・本編への期待という要件は十分満たせており、かつての名作を作ったスタッフという観点でも令和の時代にも順応できていることがわかる内容になっている。
特に仲間キャラ3人の魅力は申し分なく伝わる作品だった。少なくとも筆者は本作をプレイして、『本編も楽しみだな』『本編で仲間にできるならまたこの3人を使いたいな』と前向きな感想を持つことができた。
- 問題点についてもお使いはともかくとして、インターフェース関連は低価格帯のゲームにはありがちなものであり、本編では解消されていることを期待したい。
- 百英雄伝の本編を購入予定なら、本作もプレイして損はないはずだ。
余談だが、本編の出来がアレだったせいで低価格のコチラのほうが純粋に楽しめた。
※百英雄伝Risingのパッケージ版は現在、一部の販売店で新品定価よりも高い価格で販売されているためご注意ください。
こだわりがなければ各プラットフォームのDL版を購入するのがオススメです。
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