タイトル | 怪話/怪話2 |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | 法螺会 |
満足度 | A(満足。たいていの場合お勧めできる。) |
要点 |
|
執筆日 | 2024年9月3日 |
はじめに/怪話
Steam版で全シナリオクリアまでプレイ。
以前紹介した『星影の館殺人事件』や『奇天烈相談ダイヤル』を手掛けるインディーゲームサークル『法螺会』の処女作となるホラー・ノベルゲーム。
- ノベルゲームらしい小説風のテキスト表現。
- オムニバス形式の4章構成、それぞれの章が前後編に分かれているため計8つの物語が楽しめる。
- 各章毎に異なる登場人物や舞台が用意され、独立した物語となっている。
- ゲーム開始時は1つの物語しか選択できず、クリアすることで後編が解放、後編もクリアすると次の章の前編が解放…という形で順番にプレイしていくことになる。
- 4つの章それぞれに1度だけ選択肢があり、結末が分岐する。
- バイノーラル方式の立体音響による臨場感ある恐怖演出。
- できればイヤホンやヘッドホン、最低でも音の位置をしっかり聞き分けられるスピーカーでのプレイ推奨。
本作に登場した怪異や伝承は、『奇天烈相談ダイヤル』にも登場する。どちらを先にプレイしてもニヤリとできるだろう。
無料で遊べるが、一部販売サイトでは設定資料集の同梱版が有料販売されている。
- 資料集単体での販売もされているため、まずはゲームを無料で遊び、気に入ったら資料集だけを購入することも出来る。
- 次回作でも同様。
良かった点/怪話
ホラー・ノベルゲームとしての高い完成度。
- 良質なテキスト、背景描写により小説風に留まらない、本当に小説を読んだかのような読後感。
- 世界観に惹き込まれ、夢中で読み進められる。
- シナリオ展開はもちろん、立体音響やイベントスチルなどの演出も効果的で、直接的なホラーではなく日本的なジワジワくる雰囲気ホラーを存分に味わえる。
- 各章の内容や恐怖の種類もバラエティーに富み、飽きずに最後までプレイできる。
- 特に1章と3章は演出面の恐怖効果が非常に秀逸。シナリオ展開とリンクした演出が楽しめる。
- ジャンプスケア的な表現は0ではないがかなり抑えられており、苦手な筆者が特に気にならずにプレイできる程度の物だった。
- 分岐まですべて読んで3時間弱。長すぎてダレることもなく、無料ゲームとしてコンパクトにまとまっている。
読者に想像の余地を残した結末で、クリア後の余韻感が心地よい。
- 各章とも完全にすべて語られるわけではなくある程度の謎が残る形で終了するため、想像・考察のしがいがある。
- 好みが分かれるところではありそうだが、筆者としては高評価。すべて説明される系のお話が好みの人には合わないかもしれない。
- 続編を匂わせるシーンもあり、これも考察が捗る要素として捉えていいだろう。
不満点/怪話
演出優先のために制限された各種設定。
- 立体音響による演出のため、音量調整やメッセージ表示速度等、通常のテキストアドベンチャーであれば最低限調整できるような項目の設定ができない。
- もちろん演出のためであり、その甲斐あって演出は素晴らしい出来なのだが、不便であることに違いはない。
- 筆者の環境・好みではBGMが小さく感じ、メッセージ表示速度は遅く感じた。
- 続編で改善されている。
選択肢による分岐はオマケ程度。
- 結末が変化するにはするが正解以外の分岐は非常に短く、内容的にも如何にもハズレといった感じで少々物足りなさはある。
- このためゲーム性はほぼ無いと言える。
- 無料なので文句を言うほどではない。
一部不快な表現が見られ、人を選ぶ。
- 特に2章に目立って見られる。
- 広い意味でのホラー表現の幅広さと前向きに捉えられる部分ではあるが、少々やりすぎ感はあり人によってはかなりキツイかも。
まとめ/怪話
非常に高いクオリティでコンパクトにまとまった良質なホラー・ノベル。日本的なジワジワ来るホラーが好きな方はもちろん、無料でもクオリティが高いゲームを遊びたい方、考察好きな方など幅広く楽しめる作品と言えるだろう。
少々やりすぎな不快表現はあるため、特に2章はヤバそうだなと思ったら薄目でプレイしてもいいかもしれない。
はじめに/怪話2
こちらもSteam版で全シナリオクリア。
1作目と同じく、オムニバス形式のホラー・ノベルゲームとなっている。
- 4章×2編の計8話だった前作から、倍近い15話へとボリューム増。
- 前作との繋がりはあるものの、直接的に関わりのあるエピソードは無いため前作未プレイでも問題なく楽しめる。
- 前作同様最初からすべてのエピソードを見ることはできないが、オープニングに当たる短編エピソードを見た後はすでにいくつかのエピソードが解禁されており、ある程度好きな順番で見ることができる。
- 前後編の概念がなくなった。とはいえ続き物のエピソードはある。
- 前作では小説風だけだったテキスト表現が、本作ではエピソードによって小説風かアドベンチャー風かに変化するようになった。
- 前作で不満点に挙げた設定制限は改善され、各種音量バランスやメッセージ速度などの調整が可能になった。
前作に引き続き、本作に登場する怪異や伝承も『奇天烈相談ダイヤル』に登場する。
良かった点/怪話2
前作同様、ホラー・ノベルとしての高い完成度。
- 本作もストーリー構成、テキストでの各種描写、音やイベントスチルでの表現が秀逸で、没入感が非常に高い。
- 15話に増えたことにより、前作以上にバリエーションに富む。
- 純粋な恐怖系から、奇妙な話風の雰囲気重視のものまで様々。
- ジャンプスケアは前作より少々強化されたが、それでも苦手な筆者が不快に感じるレベルではなかった。
- ジャンプスケア以外の不快な表現については前作よりかなり抑えられている。
- 全シナリオ読了で5時間弱。ボリュームは増しつつも、長くなりすぎない範囲に留まっており最後まで楽しく読める。
コチラも前作から引き続き、想像の余地を残す結末でクリア後の余韻が心地よい。
- 全てを語らないことで考察の余地だけでなく不気味さも残り、ホラー・ノベルの後味として見事な塩梅。
- 明らかな続き物以外にも、他のエピソードとの繋がりを示唆するシーンがチラホラ見られ、前作以上に考察のし甲斐があるだろう。
- 本作にも次回作を匂わせるシーンが用意されている。コチラも考察派向けの要素と言えるだろう。
上記の通り、前作で不満点で挙げた点が改善されている。
- 各種設定や不快表現など。
不満点/怪話2
選択肢での分岐は前作以上にオマケ程度。
- 前作では各章に1度、エンディングの分岐(というか当たりハズレ)に関わるものだったが、本作ではエピソードによっては複数回選択肢が用意されている。
- そういった意味では強化されているが、実態としてはエンディングの分岐がなくなり、展開の差分程度の変化が見られるだけとなった。
総合的な演出とストーリー展開のリンク感は前作よりやや弱体化。
- 依然として高い完成度ではあるが、前作の1章3章レベルのものは見られなくなった。
小説風の画面構成時、テキストがやや読みづらい。
- 本作ではおそらくアドベンチャー風構成との差別化のために、小説風構成時は縦書きでテキストが表示されるが、テキストの区切りが中途半端なシーンがあり、やや読みづらい。
- 文章の途中で次のページに切り替わってしまうことも。実際の小説でも同様とは言え、ゲームのテキストとしては少々不親切。
まとめ/怪話2
前作同様に高いクオリティを誇るホラー・ノベル。前作が楽しめた人は間違いなく本作も楽しめるだろう。本シリーズの怪異やエピソードが登場する『奇天烈相談ダイヤル』も含めて、ぜひセットで遊んでみてもらいたい。
前作と併せて上質なホラー・エピソードが多数並ぶが、このクオリティの作品が無料で遊べるということが一番のホラーとも言える。
- これが基準になってしまうと、それなりの金額でリリースせざるを得ない企業系のテキストゲームを見る目が変わってしまいそうで、不憫ではある。
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