タイトル | 奇天烈相談ダイヤル |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | 法螺会 |
満足度 | B(やや満足。条件付きでお勧めできる。) |
要点 |
|
執筆日 | 2024年6月24日 |
はじめに
Steam版で全怪異制覇までプレイ。
以前紹介した『星影の館殺人事件』と同じくインディーゲームサークル『法螺会』制作の怪異判定アドベンチャーゲーム。
- ゲーム性の根本は『Papers,Please』に近い。プレイヤーは怪異絡みの案件の相談員として怪異の被害に遭った相談者の話を聞き、手持ちの怪異に関する資料と内容を照らし合わせ、矛盾が無いかを探っていく。
- コチラからの質問は用意された中から行う。相談されている怪異に関係のない質問をしてしまうとペナルティもある。
- 相談者は基本的に怪異の被害に遭った、あるいはこれから遭おうとしている人たちだが、まれに怪異そのものや、怪異を装ったイタズラ電話なども掛かってくる。
- 制限時間内に必要な情報を引き出し、相談者の話す話が本当に怪異の仕業なのか、そうでないのかを暴いていく。
- 矛盾は出没する時間が違う、出没する場所が違う、対処方法が違うなど様々。
- ゲーム内時間で1日3件ノルマ、最大5件まで相談を受けることができ、それを7日間繰り返すことでゲームクリアとなる。
- 怪異の数は100+追加分20と多く、1回のゲームプレイではすべての怪異と遭遇することはできない周回前提のデザインとなっている。
- ゲーム内に名前が登場する怪異はそれ以上に用意されている。ただし資料内に名前があるだけで、実際にその怪異の被害に遭っている人から相談が来ることはなく、資料の内容も確認できない。
- グラフィックはレトロな携帯ゲーム機を連想させる白黒ドット。BGMなども良い意味でチープで、作中世界観である90年代の雰囲気が良く表現されている。
怪異ということでホラーゲームをイメージするが、あくまでも怪異の被害に遭った人とテレビ電話でお話をするだけであり、直接的なホラー表現はほぼ無い。
- ホラーが苦手な人でも存分に楽しめる。
- といっても怪異についての資料が非常に丁寧に細かく記載されており、怪異ホラーの雰囲気はしっかりと味わうことができる。
- スタッフロール後にちょっとしたホラー演出があるものの初回からスキップ可能。
- 条件を満たすことで解放される『達人モード』をONにした状態で『話を聞くと現れる』タイプの怪異の相談を受けると…
その他の要素として
- クリア時の怪異判定成功状況や難易度設定などを基にした評価システム有り。
- 相談を受けた怪異が記録されていく怪異リスト有り。周回で持ち越しできる。
- 評価の具合やリストの埋まり具合によりエンディングが多少変化。
- 条件を満たすとギブアップするか体力が0になるまで相談を受け続ける『エンドレスモード』も解放される。上記した追加怪異20体はこのモードでのみ出現。
- プレイ中の行動や怪異リストの埋まり具合などによるゲーム内実績も有り。
これだけ盛りだくさんでやはり無料。
- 各種配信サイトでのダウンロードプレイはもちろんのこと、ブラウザ版も存在し、スマホでもプレイできる。
- 同サークルの別作品に登場した一部の怪異も登場するなど、ファンサービス作品としても楽しめる。
- もちろん、他作品を知らなくても何の問題も無いようにはなっている。
良かった点
怪異の資料の内容はもちろん、相談者の話口なども良くデザインされており、直接的なホラー表現を極力排除しながらも怪異ホラーの雰囲気をしっかりと味わうことができる点が素晴らしい。
- 口裂け女やきさらぎ駅、こっくりさん、メリーさんの電話といった有名どころの怪異や都市伝説から、詳しくないと名前すら聞いたことも無いようなものまで多様な怪異が登場する。
- それらは時間や場所、怪異に狙われる条件、対処法から怪異にまつわるエピソードといった情報まで詳しくまとめられており、1つの読み物としても楽しめるレベル。
- 怪異や都市伝説を全く知らなくてもゲームプレイに一切支障はない。
- きさらぎ駅などは、今まさにきさらぎ駅に迷い込んでしまったという体で相談者から緊急の電話がかかってくる。
- ツチノコのような怪異ホラーという枠組みとしては珍しい変わり種も存在し、こちらもツチノコを見つけて興奮する相談者から連絡が来るなど相談者もバリエーションに富んでいる。
- ただし相談者のパターンは怪異ほど多くはなく、バリエーションが楽しめるのは序盤の1~2周程度。
- 資料から目当ての怪異を検索する際はゲーム内でテキストボックス内に直接名前を入力して検索する。この作業が雰囲気の向上や没入感を高めるのに一役買っている。
- 同時に難点でもあるが…。
テキストベースの推理アドベンチャーとしても遊び応えはしっかり確保されている。
- 資料と相談者の話を注意深く見比べないと気づけないような細かい(悪く言うとわかりづらい)矛盾も存在し、そういった矛盾を指摘して正解した時の爽快感や達成感、逆に間違えた場合の『え、今の違うの???』という驚きなど、ゲームとしての楽しさが感じられる。
- 幅広く調整できる難易度設定により裾野も広い。
- 何度もプレイしていくうちに怪異の情報を覚えたり、どこに注意して話を聞けばいいかがわかってくるためプレイヤーとしての成長も感じられる。
- 『○○ババア』をはじめとした似たような怪異が多いのも、慣れてくるとスムーズに判別できるようになる要素として機能している。
- テキストベースで周回前提でありながら、上記したような相談者や怪異のバリエーションにより飽きを感じづらい作りになっている。
不満点
怪異の数が多すぎて、全怪異を揃えようとすると後半はかなり作業的になってしまう。
- 出現する怪異はある程度未発見が優先されるようになっているような気がしなくもないが、基本はランダム。
- 目当ての怪異がなかなか出現せず、すでにリストに登録された怪異が何度も出現すると作業感やストレスが勝り始める。
- 怪異リストだけでなく実績集めでも狙った怪異が出現するまで粘る必要があるため、ここまでプレイするとどうしても『作業ゲー』という印象が強く残ってしまう。
- リスト埋めに入るころにはプレイヤーも判定に慣れ、緊張感や楽しみが薄れてきてしまうのも一因。
- 怪異の名前を入力するのもだんだんと面倒になってくる。
- 最初から名前が判明している怪異は自動入力されるし、検索したことのある怪異は直接入力しなくても一覧から選択して入力できる。
- 怪異の数が多いのは良い点でもあるため難しいところだが、もう少し『特定の怪異を狙って出現させる方法』のようなものがあれば後味が良くなったと思われる。
また、『20歳の誕生日までに忘れないといけない』シリーズの怪異がゲームの楽しさを損なっている。
- このシリーズの怪異は矛盾のパターンがかなり限られ、一瞬で判定できてしまうため純粋に推理ゲームのネタとして面白くない。
- にも拘わらず、名前が違うだけの亜種が非常に多い。
- 一回のプレイで亜種が何度も出現するとさすがにうんざりする。
一部、やや無理のある矛盾が存在するのも気になる。
- 『○○ババア』の相談をしてきたのに見た目を聞いたら少年の姿だと言い出したり、『○階のボタンを順番に押す』とどう聞いてもエレベーターの話をしているのに出現場所がエスカレーターだと言い出したり、ゲーム的に仕方がないとはいえ少々現実に引き戻されるところである。
- 『対処法が間違っているから怪異じゃない』というものも。
- それはむしろ怪異だけど対処法が間違っているという、より危険な状況なのでは…?と思ってしまう。
- 上記した20歳の誕生日シリーズも19歳だから怪異じゃない判定となる。それでいいのだろうか…?
- ゲームだから仕方ない、で済ませられる範囲ではある。
ストーリーはほぼない。
- ゲーム内容的には問題ないとも捉えられるが、周回前提・テキストベース・ホラー物・エンディング分岐といった要素的にストーリーが無いことでモチベーションを損なっている部分もあり、人を選ぶ。
まとめ
『Papers,Please』から着想を得た、テキストベースの推理アドベンチャー・怪異ホラーとして遊び心に溢れた内容になっており、無料であることを考えれば十分に楽しめる作品。
しかしある程度プレイした段階から作業感が非常に強くなり、そういう意味でプレイ後の後味はあまり良くない。ストーリーの弱さも周回前提のテキストベースとしては少々気になるところだ。
全体としてはよくできており無料で遊べるのは破格であると言えるが、最後まで楽しくプレイできるかは人を選ぶゲームといったところか。
作業感があまり気にならない人なら存分に楽しむことができるだろう。
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