タイトル | 電気街の喫茶店 |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | 冒険者酒館(Adventurer’s Tavern)/PLAYISM |
満足度 | A(満足。たいていの場合お勧めできる。) |
要点 |
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執筆日 | 2024年11月21日 |
はじめに
Steamにていくつかのエンディングクリアまでプレイ。
レトロ調のドット絵で表現された大阪・日本橋を舞台としたメイド喫茶スローライフADV。
ひょんなことからメイド喫茶の店長(代理)となったプレイヤーは、メイド喫茶の経営を通してメイドのヒロインたちとの仲を深めていく。
現実の日本橋に存在する多数の店舗とコラボレーションを実現しており、『駿河屋』や『ソフマップ』などゲーマー的になじみのある店から、『無限麻辣湯』『たこ焼き得心』『めいどりーみん』といった飲食店等さまざまな店舗とコラボしており、日本橋の街並みを再現している。
シナリオとヒロインについて。
- ブラック企業を飛び出して路頭に迷っていた主人公は、ヒロイン『シロ』と出会い、オーナーがいなくなって潰れかけのメイド喫茶『ふわふわ』の店長代理として住み込みで働くことになる。
- ヒロインであるメイドは以下の4名。
- アニメゲーム大好きな清楚系女の子『シロ』
- 料理得意で意外とゲーム好きなギャル『ミユ』
- 中二病的な独特な言語で喋るゴスロリ少女『ファフナ』
- 関西弁で巫女さんのメガネっ子『ほのか』
- 『シロ』と『ミユ』は初期から働いてくれるが、他のキャラクターはシナリオの進行で追加される形。
- その他にも条件を満たすとお店を手伝ってくれる追加キャストが数名存在するが、ヒロインとして扱われるのはこの4名。
- 店長代理としてメイド喫茶を経営しつつヒロインと交流し、時にはトラブルに巻き込まれつつ日々を過ごしていくというのが基本の流れとなる。
- シナリオはテキストADV進行。時にはスチル表示も。
- 時に選択肢が表示される。シナリオ進行に大きくは影響しないがヒロインの好感度に影響が合ったり、誰と一緒に過ごすかが変化したりする。
- 最終的な好感度や選択状況等によってエンディングが分岐する。
メイド喫茶経営について。
- 定休日である月曜日以外はメイド喫茶の経営パートが挿入される。
- まずは控室で今日のシフトを決定する。
- メイドたちを『ホール担当』『キッチン担当』に振り分ける。
- ホール担当は接客業務。注文を聞いたり、料理を運んだり、会計を済ませたりしてくれる。
- キッチン担当は調理業務。注文が入ったら料理を作る。
- メイドたちには『サービス』『料理』『掃除』『体力』のステータスを持つ。数値を見てホール向けかキッチン向けか適性の高いほうに振り分けるのが基本。
- シフトが決定すると開店。自動進行でどんどんお客さんが入ってくる。
- メイドたちはすべて自動で業務をしてくれる。
- ホール担当のメイドは客が席につけば注文を取りに行くし、料理が出来れば席に運ぶし、食べ終われば会計をしてくれる。
- キッチン担当も注文が入れば勝手に調理してくれる。
- 主人公であるプレイヤーはホール担当のサポートが可能。
- 自分で操作して注文を取り、料理を運び、会計をすることが出来るため、ホール担当メイドの負担を減らすことが出来る。
- また、『おまじないサービス』というゲージを消費することで一定時間収益がアップする。客が多い時間に発動できると効果が高い。
- 主人公、メイド共に体力が低いと動きが遅くなる。
- 接客スピードに大きく影響するため体力の管理は重要。
- 主人公は早寝したり食べ物を食べたり銭湯の利用で体力を回復することができ、比較的体力管理が用意だが、ヒロインたちはシフトに入れると問答無用で体力が低下。回復するには定休日を待つかシフトから外してお休みしてもらうことになる。
- 画面上部の営業時間ゲージがいっぱいになるまでひたすら接客。ゲージがいっぱいになればその日の営業は終了となる。
- 営業が終了すると自動的にその日の売り上げが集計され、売り上げの20%が主人公の収入として獲得できる。
- 残りの収益はすべてお店のお金として計上される。一定額を消費してお店のレベルアップができ、集客率が向上する。
- 他、レコードを持っていれば店内のレコードプレイヤーを操作することでBGMを変更することが出来る。
特別なお客様について。
- 営業中まれに『特別なお客様』が来店することも。特別なお客様は専用のカウンター席に座り、画面に来店アナウンスが表示される。
- 接客開始すると専用のイベントが始まり、ヒントが出されるため正解のコーヒーを提供することになる。
- 正解・不正解に関わらずシナリオは進行するが、正解すると特定ヒロインの好感度が上がり、間違えると低下する。
- また、正解した場合のみその後もイベントが発生したり、『良いこと』がある。
- 接客開始してイベントが終了すると自動的にその日の営業が終了する。
- 逆に、特別なお客様に接客対応しないまま放置して営業時間が終了するとイベント自体が発生しない。
コーヒー作りについて。
- 上記した特別なお客様への接客対応や、一部シナリオ進行においてコーヒーを作ることになる。
- 最初は3種類のレシピしか存在せず、材料もそれらを作るためのものしか用意されていないが、書店等でレシピ本を入手することでレシピが増え、対応する材料が置かれるようになる。
- コーヒーを作る必要がある時は必ず『作るべきコーヒーのヒント』がお出しされる。
- レシピ本にはそのコーヒーの特徴が書かれている。覚えておくとヒントを見た時に正解がわかりやすい。
- とはいえ中にはレシピ本の内容を読んだだけではわからないヒントも存在する。
- また、レシピ本が存在しないコーヒーも存在する。
- コーヒー作り自体はイベント時以外でもいつでも可能で、営業時間外に店内のコーヒーメーカーを調べれば作成できる。
- ゲーム的に特に意味はない。
プレゼントについて。
- 営業前のシフト決定前、あるいは一部営業終了後、控室にいるヒロインに話しかけると任意でプレゼントをあげることが出来る。
- プレゼントとしてあげられるのは花やコスメなどの物と、ステータスアップ本。
- どれをあげても基本的に好感度がアップ。
- 好みによって上がり幅に違いがある可能性もあるが、反応に変化が無いため不明。
- ステータスアップ本をあげた場合は対応するステータスがアップする。
日本橋の街について。
- 日本橋の街中を自由に散策できる。メインストリートと商店会(商店街的な)の2マップ。
- 『駿河屋』など実在する店舗も含めて店の中に入ることもでき、買物可能。
- 主人公の体力回復に使用できる食べ物や、ヒロインにプレゼントできるアイテム、後述するコレクションアイテム等を購入可能。
- 飲食店では食べ物を食べることが出来る。こちらも体力回復効果。
- 質屋ではアイテムを売却できる。
- その他銭湯や家具屋、トレーディングカードショップやガチャガチャなど様々な施設が登場する。
コレクションアイテムについて。
- ゲーム内で入手したゲームやポスター、フィギュア、カード等はすべてコレクションアイテムとして扱われる。
- コレクションアイテムは主人公の部屋に飾ることが出来る。
- コレクションアイテムの中にはコラボ作品やパロディ要素が満載。
- 上記した実在店舗だけでなく数々のインディーゲームともコラボしており、『溶鉄のマルフーシャ』『VA-11 Hall-A』などのキャラクターグッズ等が登場する。
- 他にも『ポケモン』や『まどか☆マギカ』など有名タイトルのパロディも多く登場。
- 実際に価格が高騰しているレトロゲームのパロディゲームが高く売られているなど芸が細かい。
- キャラのセリフなども含めて、こういったアニメ・ゲームの知識があればあるほど楽しめる。
- 入手にはお店での購入の他、ガチャガチャを回したりカードパックを開封したり、中には特定のイベントで入手するものも。
- こういったコレクションアイテム集めの為に日本橋の街を散策するのも本作の楽しみの一つ。
自由時間について。
- メイド喫茶の営業中とストーリー進行が無い場面では自由時間となり、上記した日本橋を自由に散策し、コレクションアイテム収集や体力回復等ができる。
- 飲食店での食事等一部の行動ではゲーム内時間が進行する。
- 時間進行によってシナリオ進行に支障が出る場面では、時間が進行するような行動が出来ないよう制限されている。
- あまり夜更かしをすると、主人公の翌日の体調に影響が出る。
良かった点
優しく温かいストーリー。
- シナリオ展開はとにかく優しい。ヒロインたちも、街の人々も全員が温かく、シナリオ展開によって不快な気分になったりストレスを感じたりは無い。
- では中身が無いかと言うとそうでもなく、しっかりと立ち向かうべき困難は発生するし、困難を乗り越えるための努力もあるし、そうした中でヒロインや街の人々と関係性を築いていく過程も描かれている。
- 冒頭にだけ主人公が務めるブラック企業のイヤな上司が登場するが、それっきりで出番はなくなる。
- ストレスを無くしすぎて中身までなくなる作品が多い昨今であるが、本作はしっかりと中身が優しいという良い塩梅で作られており、楽しめる。
- 公式に『コーヒーを一杯淹れて、リラックスしながら、心温まるストーリーに浸ってください』と書かれており、まさにその通りのゆるい世界観で描かれたシナリオは、決して大きく心を揺さぶるものではないが、プレイしていて優しい気持ちになれるものだった。
- 欲を言えば、作中の舞台が夏であり、ノスタルジックさも強い作風のため夏にプレイしたかった。
- もともと夏発売とアナウンスされていたが、暑い日が続いていたとはいえ実際の発売日は11月と秋。
ドット絵で描かれた日本橋の街並みやキャラクター。
- レトロ調のドット絵のクオリティはバッチリで、街並みもキャラクターも美しく表現されている。
- キャラクターのドットはよく動き、ヒロインたちはもちろんモブキャラに至るまで非常に可愛らしい。
- モブキャラたちもメイド喫茶に客として何度も来店するため、出来は重要。
- チェキ風のイベントスチルもドットで描かれ雰囲気抜群。
- 更衣室でのイベントスチルはチェキ風なせいで盗撮みたいになっている。
- 街並みも看板の一つ一つまで緻密に描かれており、グラフィックだけでも見ごたえがある。
- 筆者は大阪・日本橋に特に近しい人間ではないが、馴染みの深い人ならより楽しめるのではなかろうか。
低価格帯とは思えない抜群のボリューム。
- ストーリー1周あたりのボリュームは価格帯とジャンルを考えれば非常に満足のいくものになっている。
- 基本は恋愛ADVなのでエンディングも複数存在。周回プレイできる。
- エンディング埋め以外にもコレクションアイテム収集まで含めたら相当なプレイボリュームとなり、低価格と侮るなかれ、ゆるい作風とは打って変わってガッツリ遊べる内容になっている。
不満点
ロードが多く長い。
- とにかく何をするにもロードを挟む。マップ切換はもちろん、会話イベント発生時、果てはガチャガチャ画面への切り替え時まで。
- 1つ1つが無視できない長さ。
- 特にメイン拠点であるメイド喫茶『ふわふわ』では、主人公の自室→ふわふわ店舗内→ふわふわ控え室と移動するのにかなりのロード時間を要する。
- 後述する不親切さも合わさり、せっかくシナリオでのストレスが無いのにプレイにおけるストレスは大きくなってしまっている。
- 発売2日後にロード時間の改善を含むアップデートが入ったがそれでもまだ厳しい。
- レトロ調2Dゲームでこれだけロードが発生するのは印象が悪い。
- ロードと併せて、PC負荷も最近の2Dゲームとは思えないほど重く、筆者の環境ではプレイ中のファンのまわり方が『崩壊スターレイル』プレイ時と同等だった。
- とはいえ発売2日で一応の対応を見せる等フットワークは軽そうなので、今後の改善に期待はできる。
レトロ調・低価格というだけでは見逃せない不親切な仕様。
注意:筆者は終始コントローラーでプレイ。
- 移動や選択の操作はすべてスティック操作。
- 普段は問題ないが、1つの場所で複数の行き先がある場面で、どちらに行くかの切り替えもスティックの上下で操作することになる。
- スティックの跳ね返りなどで反対側に反応することも少なくなく、非常に操作しづらい。
- 上記『ふわふわ』内での移動で特に目立ち、何度も操作ミスをした。
- 『ふわふわ』内はスティックの上下で奥行きの移動もできるため、出入口選択の操作でスティックを下に倒すと主人公が下に移動して出入口から離れて選択反応が無くなる。
- 同様に一か所に人が集まっている場面で誰に話しかけるかも選択しづらい。
- しかもすべて『話す』としか表示されないため、『話す』『話す』と並びどちらを選べば誰に話しかけるのかがわからない。
- ゲーム途中で自転車を入手し移動速度がアップするのだが、ことあるごとに降りてしまうため不便。
- マップ切換はもちろん、人に話しかけたりもout。
- GBのポケモンですら室内以外のマップ切換や人との会話では降りなかったのに、レトロ調とはいえ令和最新のゲームでこの仕様は見逃せない。
- 自転車そのものはヒロインとのデート中に乗ると二人乗りができたり、移動速度も申し分なく決して悪いものではない。
- イベントでの強制位置移動など、『そのマップが表示される際にはじめから出入口に立っていた』場合、少し移動して戻ってこないと出入口の選択が反応してくれない。
- 上記したヒントを元にコーヒーを作るイベント時、『コーヒーを作るのに必要な材料』という意味ではレシピを見ながら制作できるものの、『ヒントに即した情報』という意味では、イベントが発生してしまってからではレシピ本の内容を確認できない。
- 多くがゲーム進行に無視できない影響を与えるイベントであり、さらには経営パートを挟んでの発生なのでリセットロードでのやり直しも面倒。
- 経営パートがメインのゲームなら許せるが、ゆるい雰囲気のシナリオメインのゲームであるため不要なストレスに感じる。
- そもそもレシピ本では確認できないヒントまである。知識があれば連想できないことも無いが、さすがにひどい。
周回前提のゲーム性なのにシナリオ周りが周回前提で作られていない。
- メイドが揃うのが遅すぎる。
- 初期はシロとミユの2名だけ。1周目でも遅く感じるが特に問題になるのは2周目以降。
- 2周目以降は店のレベル(集客率)が引き継がれた状態でメイドは2名に戻されるため、客の来店数に接客対応がまったく追いつかない。
- おまけに前周で鍛えたステータスも初期値に戻される。せめてそこも引き継いでほしかった。
- そもそも1周目でも4人揃うのが遅く、ふつうに遊んでいると4人揃う頃には4人でちょうどいいくらいの集客率になっているため、『誰かを休ませて体力管理する』のが困難。
- 料理が得意なメイドが少なく、特に初期メンバーかつ料理が得意なミユはほとんど疲労状態で働き続けることになる。
- 疲労状態で働かせたからと言って何かあるわけではないが、冒頭で登場したブラック企業と同じことをしてしまうことになるのは優しい世界観とミスマッチ。
- 逆に、ホール担当は人数が多いうえに主人公も手伝えるため余りやすい。
- シナリオ上は加入していなくても、2周目以降は経営パートでのみ最初から使用できる形で引き継いでほしかった。
- ステータスも引き継いでほしかった。シナリオ重視なのだし、最終的に全員全ステータスカンストで最強のメイド喫茶になるくらい許されるだろう。
- シナリオ演出のオート・スキップなど便利機能なし。
- 2周目で解禁かと思いきや、まさかの無し。
- シナリオメインのテキストADVでオートも既読スキップすらもなしでエンディング回収のために周回はキツイ。
- シナリオの長さを考えればオート・スキップどころかチャプターセレクトがあってもいいレベル。
- バックログすら無い。
- 上記したように経営パートも楽できない。(もちろんメイドたちがオートで動いてくれる以上は採算度外視で放置しておけば経営パートは楽できるが…)
- なまじボリュームがあるため、余計にこれらの不親切な仕様が牙をむく形になってしまっている。
まとめ
ゆるく温かい雰囲気が抜群で、シナリオを通して非常に優しい気持ちになれる作品。
実在する店舗やインディーゲームとのコラボやパロディも含めて、とにかく優しいゲームを作ろう、温かいゲームを作ろうという意気込みがヒシヒシと伝わってくる。
スローライフらしく、長くまったりと遊べるボリュームも満載ではあるが…
細かいところの気配りが行き届いておらず、レトロ調で低価格とはいえあまりに不親切な仕様が目立ち、決して大きくはないが余計なストレスを生み出してしまっているのが残念。
細かいところにも気を配る、作中のメイドさんたちのようにはいかなかったようだ。
とはいえ開発のフットワークも軽く今後も改善に期待できるため、コーヒー片手にまったりとノスタルジックな雰囲気を楽しんでみてはいかがだろうか。きっと優しくて暖かい気持ちになれるだろう。
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