タイトル | ミッドナイトシンドローム |
プレイした機種 | PC Steam/DL |
メーカー | ナツミカン |
満足度 | B(やや満足。条件付きでお勧めできる。) |
要点 |
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執筆日 | 2024年6月16日 |
はじめに
Steam版、PCのダウンロード版を全エンディングクリアまでプレイ。
個人開発者『ナツミカン』氏制作の探索型ホラーアドベンチャーゲーム。フリーゲームとして無料配布されている他、一部配信サービスでは投げ銭Verとして有料配布もされている。
- ゲームの内容はどちらも一緒。
RPGツクールMVを用いて制作されている。全体的な作りとしてはオーソドックスなツクール製ホラー同様のものとなっているが、タイトルからしてPS時代の名作ホラー『トワイライトシンドローム』シリーズを意識したような要素が随所に見られる。
- RPGツクール製らしく、マップは見降ろし型。
- 主人公たちが遭遇するさまざまな怪現象を調査し解決の糸口を探る『探索パート』と、怪現象の噂を集める『調査パート』を交互に繰り返しながらゲームが進行していく。
- シナリオは章仕立てで、各章で別々の怪現象が描かれるオムニバス形式で進行していく。
- 物語上の大きな分岐は無いが、周回しないと全貌が明らかにならない部分がある。
- 各章のフラグによってエンディングが分岐する。
『夏の夜が、少女たちを蝕む』をキャッチコピーに、ある夏の日の夜、3人の少女が学校に忍び込んで『こっくりさん』を決行するところからストーリーが展開される。
- ホラーゲームではあるが雰囲気重視にとどまっており、3人の少女たちのやり取りがコメディ風味なことで恐怖感が緩和されているため、ホラー苦手なプレイヤーでもとっつきやすい。
- ジャンプスケア(驚かす系の恐怖演出)も最低限に抑えられている。
良かった点
各章毎に異なる『遊び』が提供され、怪現象に特徴づけがなされている。
- 1章はよくあるツクール製鬼ごっこホラー、かと思えば2章は推理アドベンチャー風に選択肢で謎を暴き、3章は謎解き脱出アドベンチャーのような探索がメイン…というように、遭遇する怪現象に合わせてバラエティに富んだゲーム体験が楽しめる。
- 怪現象に合わせて自然に変化をつけてくるため、無理やりねじ込んだミニゲームのような『やらされてる感』はまったくない。
- 物語とゲーム性がリンクしているため没入感がある。飽きも来づらい。
- 失敗するとゲームオーバーになるような場面では必ずセーブさせてもらえるため親切。
- RPGツクールで出来る探索型ホラーのゲーム体験を網羅するような挑戦的な試みとも言える。
- 概ね良い方向に作用しているが、難点もあり。
王道で入り込みやすいストーリー展開。
- 夜の学校で『こっくりさん』を決行するホラーの始まりは既視感こそ凄まじいが、やはりわかりやすく入り込みやすい。
- 3人の少女たちのやり取りも軽快で、いい意味で聞き分けが良いためテンポよく読み進められる。
- グラフィック面でもクオリティの高いオリジナル素材が使用され、一部場面では衣装違いなどの専用グラフィックも多く登場し、3人の魅力を後押ししている。
- 個人的に空気の読めないトラブルメーカーポジションの猫屋に序盤はイライラしたが、シナリオを読み進めることで最終的には3人全員に愛着が持てた。
- 各章毎の展開もまさに王道で外さない内容になっている。
- 悪く言えばありがちではあるが、全体的に丁寧に描かれており、上記したようなゲーム性とのリンクもあって納得感がある。
- ただ概要でも述べた通り、ド直球のホラーというよりは都市伝説的な田舎のちょっと不気味な話・雰囲気でジワジワ怖くなるといった趣なので人によっては物足りないかも。
- 田舎の夏休みらしい、ノスタルジックな描写・演出もツクールの表現力の中でよくできている。
- 全体的に、強烈なホラー体験というよりは『3人の少女たちが不思議な夏を過ごす』という点にフォーカスされており、怪現象を通して3人の関係性や心情が変化していくところに面白さがある作風となっている。
不満点
怪現象の噂を集める『調査パート』が非常に退屈。
- 調査パートと言っても、やることは校舎内でひたすらモブ学生に話しかけるだけであり、ゲーム性に富む探索パートとは対照的にゲーム性が一切ない。
- ゲーム性の無さを考慮してか、アイテムを使用することで進行に必要な話が聞ける場所を教えてくれる。
- 一部、ゲームの進行とは関係ないが舞台となる『神舞町』のことがより知れる、オマケ的な情報をくれるモブ学生もいるにはいる。
- とはいえそれも面白みのある情報ではなく、あくまで補完的な範囲にとどまっている。
- もう少し面白みのある話だったり、サブクエストのような展開が用意されていればゲーム的に面白くなったかもしれないが、無料のフリーゲームにそこまで求めるのは酷か。
- 面白みも無いモブ学生の話というのは、リアリティを強める要素になっているとも言える。
- 怪現象と怪現象のインターバル的に毎回挿入され、『またこれか…』と感じてしまう。
- 移動速度に対してマップが広すぎる点や、机などの配置物が邪魔で回り道する場面が多い点も、この問題に拍車をかけている。
- 一応、集めた噂が可愛らしいイラスト付きでメモに追加されていくという演出で飽きさせないような努力は垣間見える。
バラエティに富む『探索パート』も、幅広い遊びと引き換えに物足りなさを生み出してしまっている。
- 裏を返せば様々なゲームをつまみ食いだけしているようなものであり、ゲーム性としてはジャンルを絞ったゲームと比べるとどの章も序盤程度の内容止まりになってしまっている。
- ゲーム的に”どんどん深く面白くなっていく”と言うよりは”一定の面白さが広く浅く続く”方向性になっており、ゲームとしてのインパクトや面白みは薄い。
- 序盤程度止まりということで、ボリュームもやや物足りない。
- ゲーム性のある探索パートのボリュームが不足している一方で、ゲーム性が無い調査パートのボリュームが膨れてしまっており、バランスが悪い。
その他細かい点
- 一度クリアするとチャプターセレクトができるようになるが、選べるのは各章の頭からのみ。
- 会話パートなどセーブリセットができないシーンが長いため、フラグ回収用としてはやや快適性に欠ける。
- 会話の高速スキップはあるものの、演出やモーションは等速再生。周回前提のゲームとしては不便。
- 操作性は悪い。ツクール側の仕様もあるため仕方ないが、鬼ごっこ系のアクションがあるため少々気になる。
まとめ
ホラー物としてはややパンチが弱い面もあるものの、3人の少女たちの関係性や心情の変化、いじめや都市伝説などの身近にある恐怖を丁寧に描き、多種多様なミニゲームでシナリオ展開とゲーム体験をリンクさせた意欲作。
『トワイライトシンドローム』のフォロワーゲームとしてはもちろん、1本のゲーム作品としても魅力ある出来になっている。ツクール製のフリーゲームならではの浅さはどうしても残るが、『トワイライトシンドローム』ファンや、ノスタルジックな少女ホラー物が好きな人には満足できる内容になっていると言えるだろう。
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