タイトル | 水たまりのスペクトル |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | mizutamarism(ミズタマリズム) |
満足度 | S(とても満足。自信を持ってお勧めできる。) |
要点 |
|
執筆日 | 2024年12月28日 |
はじめに
Steamにて実績コンプまでプレイ。
インディーゲーム制作サークル『mizutamarism(ミズタマリズム)』が手掛けた2Dアクションゲーム。
水たまりと光の演出が美しいドット絵で描かれた世界で、プレイヤーは画面内に出現する敵キャラクターを倒し続け、全4ステージを進んでいくことになる。
システム
- マップの広さは縦横にスクロールすることはなく、常に1画面分。
- ステージギミックやゴールなどの概念はなく、画面内にポップする敵をひたすら倒し続けるゲーム性となっている。
- 一定間隔で決まった敵キャラが出現する。
- 敵の攻撃に当たると体力(HP)が減り、0になるとゲームオーバー。
- 敵を倒しつつ一定時間が経過するとボスが出現する。
- ボスを倒せばステージクリア、全4ステージ。
主人公の操作
- 主人公側の攻撃手段は傘による斬撃・必殺技・ジャストガードでのカウンターの3種類。
- 傘による斬撃の通常攻撃はノーコストで何度でも使用可能だが低威力で後隙が大きい。
- 必殺技は選択可能。高く跳んで傘を地面に叩きつける攻撃や、傘の先から貫通するレーザーを放つ攻撃など。
- 必殺技はポイント(SP)消費あり。消費したSPは時間経過で回復する。
- 傘を使って防御もでき、タイミングよくガードすることでジャストガードとなり一瞬の硬直演出の後に攻撃を跳ね返し、周囲の敵を大きく弾き飛ばす。
- 敵を連続で攻撃し続けることで画面上部のゲージが溜まり、最大になると一定時間パワーアップ状態になる。
- パワーアップ状態では攻撃力が上昇する他、必殺技の効果が強化される。
カスタマイズ
- ステージ進行中、一定間隔で出現する『蛇』を攻撃するとショップ画面になり、主人公のカスタマイズが可能。
- 敵を撃破すると落とす雫を消費することで、HPやSPの即時回復、最大値の強化ができる。
- ボス撃破時やゲームオーバー時に累計獲得雫が清算され、一定値に達するごとに新しい必殺技や『持ち物』を獲得。
- 付け替えは蛇を攻撃してショップ画面に入る必要がある。
- 持ち物は移動速度アップやHP増加、通常攻撃を連続攻撃化など様々な効果を持ち、同時に2つまで装備可能。
ストーリー
- シナリオ内でのセリフ演出は一切なし。登場人物のジェスチャーのみで進行する。
- 雫の獲得量が一定値に達すると『日記』が手に入り、これを集めて閲覧することでシナリオの全貌が明らかになる。
良かった点
優れた表現力により独特な世界観を魅力的に描けている。
- 水と光にフォーカスしたグラフィック表現が秀逸で、『一面水たまりで虹が架かっている世界で傘を武器に戦う』という作中世界観をしっかりと描けている。
- 水面の反射、光や虹の眩しさ、水滴が跳ねる様子など、少しプレイしただけでも丁寧に描かれているのが伝わってくる。
- ジャストガード時の光の表現は特にかっこよく、爽快感にもつながっている。
- 登場する敵キャラクターもスライムやクラゲ、ペンギンなど水を連想するものばかりとなっており、世界観に合っている。
- ジェスチャーだけで進行し、日記で背景を描写するシナリオ表現も素晴らしい。
- ジェスチャーだけとは言っても、そのジェスチャーの動作はドット絵ながら非常によく描き込まれており、文章が無くてもキャラクターの感情まで伝わってくるようになっている。
- 日記の方も簡潔なテキストかつキャラクターの雰囲気に合った内容で、多くを語らなくても伝えるべき内容が伝わり、多くを語らないことで余韻を生み出している。
- アクションゲームとしてゲーム性の邪魔にならないという意味でも◎。
- ゲーム全編を通して水と光というテーマに沿ったデザインになっていて統一感がある。
- ストーリーの内容まで込みで『ステキなゲーム』という感想がスッと出てくる。表現力に対しての満足度は非常に高い。
適切な難易度調整により最後まで楽しめる爽快アクション。
- 対複数向けの攻撃手段に乏しい点、行動後の隙が大きい点がいい方向に作用し、ちょうどいい難易度になっている。
- 敵が多くなるタイミングでどう捌いていくかを判断しながら戦うのが楽しい。
- 上位版の敵が出現するタイミングや数も適切で、出現パターンや行動パターンも固定なので何度かプレイすれば理解できるようになっている。
- 実績コンプには2周目のプレイが必要だが、このおかげで全く苦に感じない。
- 各モーション演出も気持ちがいい。
- 傘を剣のようにして戦うという子供の頃の妄想を体験できる。
- 傘からレーザーが出たりするのも、ツボを押さえている。
- 上記したがジャストガード時の光の演出も爽快感抜群。
- 基本的には単発の攻撃ばかりだが、ボス相手には簡易的なコンボのように攻撃がつながる。これも爽快感がある。
- 敵を倒した際の雫のドロップ演出なども気持ちが良く、アクション面でもしっかりと水と光というテーマの中で最大限の表現がなされている。
- 低価格なりのボリュームだが、その中で最初から最後まで楽しさが詰まっている。
不満点
デフォルトの操作性がやや悪い。
- 正式にはコントローラー対応しておらず、キーボード操作もデフォルトでは矢印キーで移動、ZXCで各種行動という『右で移動、左で行動』スタイルで癖のある操作感になっている。
- この点は個人差もあるだろう。慣れている人にはあまり気にならないかもしれない。
- 設定で弄れるので大きな問題にはならない。
ジャストガードが苦手な人にはやや厳しめのバランス。
- アクション面は適切な難易度調整で最後まで楽しめると書いたが、ジャストガードが出来ないと体感難易度が大きく上がると思われる。
- 特に空中に浮遊していて傘での攻撃を当てづらいクラゲの上位版はジャストガードによる反射が使えないと処理が難しい。
- アクションが苦手な人の中には『とにかく攻撃ボタン連打』みたいな人も多いため、そういった人には厳しく感じる可能性はある。
- とは言っても、実は死にさえしなければ時間経過で敵は消滅するため、とりあえずガードしておけばクリアは簡単。
雰囲気重視は合わない人には合わない。
- ジェスチャーと日記によるシナリオ表現が秀逸で本作の大きな魅力でもあるが、全部指示してくれて全部説明してくれるゲームが好みの人には放り出された感を感じてしまい、合わない可能性がある。
- ドット絵でレトロ調なので、何かと放り出されがちなレトロゲームに理解のある人がターゲット層と考えればこの点も大きな問題にはならないかと思う。
まとめ
優れた表現力により作品世界観の魅力を最大限に引き出された力作。あらゆる要素がしっかりと同じ方向を向き、独特な雰囲気を余すことなくプレイヤーの心に刻み付けることに成功している。短編ボリュームながらプレイ後の余韻感まで感じさせ、値段以上の満足度で楽しむことが出来た。
細部まで丁寧に作り込まれ、最初から最後まで楽しく遊べるレベルデザインとなっている。ステキなゲームという言葉がぴったりな作品なので、ストアページの雰囲気に惹かれた人はぜひ遊んでみてもらいたい。
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