タイトル | アルタイル号の殺人 |
プレイした機種 | ニンテンドーSwitch |
メーカー | ORANGE GAME WORKS |
満足度 | A(満足。たいていの場合お勧めできる。) |
要点 |
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執筆日 | 2024年4月11日 |
はじめに
Switchにて全チャートコンプまでプレイ。航行中の宇宙船が舞台のSFミステリーアドベンチャーゲーム。
- プレイヤーは宇宙船アルタイル号のマスターAIとなりアンドロイドの『フレム』に指示を出し、宇宙船内で発生した不可解な事件と、船内に侵入した地球外生命体の謎を解く…というのが簡単なあらすじ。
- 基本的にはノベルパートでシナリオを読み進めつつ、船内を移動しながら気になるポイントを調査したり、乗組員に話を聞く中で証拠を集めていく。
- 調査がある程度進行したところで推理パートが入り、正しい選択肢や証拠品を選ぶことで事件が進展していくオーソドックスなアドベンチャーゲームとなっている。
良かった点
まずはシナリオ全般。宇宙船のAI目線で進行していくストーリー設定は物珍しく、テキストの質も安定していて惹き込まれる。
- 宇宙だの地球外生命体だのAIだのアンドロイドだのと、ミステリとしては『プレイヤー目線で未知の存在が推理に関わる』という不安要素があったが、丁寧な描写と適切な情報開示が行われるためプレイヤー自身も推理に参加しやすい。
- トリックには細かいところで『フィクション味』はあるものの、十分に推理が成り立つ範疇でまとまっており、楽しく読み進めることができた。
テキスト・シナリオ面で言うとキャラクターもしっかりと魅力的に描かれている。
- 登場するキャラの人数は少ないとはいえ、低価格ゆえに短めなシナリオの中でミステリ面もしっかりと描きつつキャラの魅力も引き出しているのはライターの力によるところが大きいだろう。
- 全体的なテキストが軽い読み口でまとまっており、話のテンポも良いためミステリ要素もキャラクター性も頭にスッと入ってくる。
ゲーム性は非常に薄く、選択肢や証拠品を選ぶ場面でも間違った選択をすると『よく考えなおしてみよう』となって正解を選ぶまでゲームが進まないようになっている。
- 一応バットエンドがあり一部の選択肢で間違えるとゲームオーバーとなるが本当に一部だけであり、基本的にゲーム性はほぼ無いに等しい。
- この点は普段ならマイナス点だが、本作はテキストがしっかりしていることと推理自体がある意味ゲームであることを踏まえ、没入感のために要所でプレイヤーに選択をさせつつ、全体的にはシナリオ進行のテンポを妨げないようゲーム性を無くしている、と個人的には前向きに受け止めている。
シナリオチャートにより、好きなところからシナリオを再開することができる機能も搭載。
- チャート形式で分岐も一目でわかるため上記したバッドエンドの回収がしやすいようになっている。
- ログ機能はもちろんオート・スキップ、推理中に証拠品や人物データを自由に見られる、基本的な音量バランス調整など低価格ながら推理物のテキストゲームとしてのシステムは不足ない。
不満点
不満点としてはまずボイスが一切ないこと。低価格なので仕方ないと我慢できるところではあるが、キャラクターが魅力的だったことや、ゲーム性が薄いことを考えるとボイスが無いのはさすがに演出面で少々チープに感じる。
- 特に物語序盤、最初の事件が発生するまでの間は退屈さが際立ってしまっている。
また、全体的にキャラクターは良かったが犯人だけはイマイチ共感も同情もできず、犯人の結末も演出が弱く盛りあがりに欠けたようには感じた。
- トリック面でも全体的に『さすがに犯人ガバりすぎでは…?』と感じるところ。この辺りは純粋に推理物として見るか、ゲームなのである程度エンターテインメントとして見るかで好みが分かれそうだ。
価格を考えればシナリオそのもののボリュームは適正だが、分岐の少なさを考慮するとやや物足りなさはある。
- 宇宙やAI、地球外生命体といった舞台の壮大さに対して事件の規模は小さ目で、その点では残念。
- ボリュームに関連するところとして、公式サイトやストアページのサンプル画像を見るだけで誰が死ぬのかが察せてしまうのはかなり痛い。
- シナリオのボリューム、イベントスチルの量、登場人物の数が悪い方向に作用している部分と言える。
まとめ
低価格ながらコンパクトにまとまった質の高いミステリーアドベンチャーで、ゲーム性や演出を犠牲にテキストに一点集中したような作品となっている。
ミステリー小説とはまた違ったゲームならではの軽快な読み口となっているため、そのあたりの好みが影響しそうではあるが、ミステリーアドベンチャーゲームとしての完成度は一級品。
主に演出面で低価格相応のチープさは感じるものの、読み物としては値段分の満足度がある作品なので、宇宙船やAI、ボーカロイド味のあるメインヴィジュアルに惹かれた人はぜひ手に取ってもらいたい。
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