【Steam】パラノマサイト FILE23 本所七不思議 感想

パラノマサイト タイトル画面 Steam
タイトル パラノマサイト FILE23 本所七不思議
プレイした機種 PC Steam
メーカー Square Enix
満足度 S(とても満足。自信を持ってお勧めできる。)
要点
  • 序盤の掴みは抜群
  • 魅力的なキャラと呪い
  • シナリオと演出がゲームとしてよくまとまっている
  • ホラー・バトル要素が中盤からやや弱い
  • 若干尻すぼみ感
執筆日 2024年5月1日

 

はじめに

パラノマサイト タイトル画面

Steam版でリアル時間に関連する実績以外の実績コンプまでプレイ。

スクエニ発のホラーアドベンチャー。実在する怪談『本所七不思議』と死者を蘇生するとされる『蘇りの秘術』、そして過去に起きた凄惨な事件。様々な形でそれらに関わる人々が交錯する群像劇となっている。

  • ひょんなことから知り合った葉子と共に『本所七不思議』について調べていた彰吾は、七不思議になぞらえた呪いの力と怨念が込められ、人を呪い殺して滓魂を集めると『蘇りの秘術』を操ることができるという『呪詛珠』を手に入れる。それと同時に、彰吾の他にも『呪詛珠』を手にした者たち(呪主。かかりぬしと読む)が現れた。『呪詛珠』に込められた呪いには発動条件があり、条件は持ち主にしかわからない。また、呪主を殺すとより多くの滓魂が手に入る。『蘇りの秘術』を求める者、呪いを止めようとする者、様々な思いを胸に、壮絶な呪い合いが始まる…というのが大まかなあらすじ。

システムそのものはノベルパートで話を進め、探索パートで各所を回り気になるところを調べるという非常にシンプルなテキストアドベンチャーゲームの形をとっている。

特徴的なのは複数の呪主のルートが用意されそれぞれのルートでの行動が別のルートに影響を与えるシステムと、それをわかりやすく可視化し、好きなルートをプレイできるようにしたチャートシステム、そして360°背景による臨場感あふれる探索演出。

  • その他探索時に暴走族風の姿をした鳥類のステッカー通称『なめどり』を集めるオマケ要素も用意されている。おそらく『なめ猫』のパロディ。

 

良かった点

まずはシナリオと演出について。とにかく序盤の掴みが完璧で、ゲームを起動した瞬間からメーカーロゴの段階ですでに演出が始まっており、そこから世界観説明はそこそこにすぐに能力バトルならぬ呪いバトルが始まる。

  • 七不思議になぞらえた呪いは条件・効力共に魅力的で、それが複数あるというワクワク感もバッチリ。
  • 怒涛の勢いで何名かの呪主が次々に現れ、こちらの条件を満たす・あるいは相手の条件を踏まないように立ち回るというバトルは時にプレイヤーをも巻き込み、選択肢やシステムを駆使して死を回避していく…この流れが序章のうちに一気に展開され、その勢いのまま複数の呪主のルートに派生していく。
  • まさに息を持つかせぬ展開で、序盤のうちにすっかりこのゲームに夢中になってしまった。
  • この流れの中で呪いの使い方や回避方法などが自然に身につくようになっており、序盤らしくしっかりとチュートリアル的な側面も持っている。なのにまったく退屈さを感じさせないのは見事の一言だ。
  • 同時に、ある程度『どんな人物がどんな呪いを持っている』のかもざっくりとわかるようになっており、のちの展開への布石にもなっている。

ここまで呪いバトルが主軸となるとホラー要素が弱くなりそうに思うが、360°背景システムによりホラー風の演出ができているためそこまで気にならないようになっている。

  • 雰囲気作りがしっかりできているため、横や後ろに視線を向けると何かがあるかもしれない…という緊張感が表現されている。

その後も複数のルートが影響し合うシステムを活かした謎解きと、まだ見ぬ未知の呪主とその呪いの条件への恐怖を中心に物語が展開していき、七不思議の全貌や過去に起きた凄惨な事件、それぞれの呪主の事情などが少しずつ明かされていく。

  • 細かい突っ込みどころはあるが序盤の掴みのおかげであまり気にならない。
  • 結末にやや不満を感じなくもないが、そこに至る流れや描写が非常によくできており、10時間程度、クリアまで一気にプレイしてしまった。

シナリオに関連する要素として、テキストも秀逸。シリアスなホラー物ではあるが基本はコミカル調で、重くなりすぎないテキスト構成になっていて非常に読みやすい

  • 特に刑事の先輩後輩である津詰と襟尾、探偵とその依頼主である利飛太と春恵の各コンビのルートはそれぞれ刑事・探偵という立場上、物語における重要な情報が集まりやすく、それでいて時に笑いを挟みつつのコミカルで読みやすい文章になっているためかなり楽しく読み進めることができる。
  • この読みやすいテキスト構成とコミカル調、そして呪いの効力や条件、『蘇りの秘術』に対する向き合い方などに関連付けてキャラクターの魅力がしっかりと描けており、その上でひとたびルートを変えれば呪い合う敵にもなり得るという点が緊張感や作品の魅力を底上げしている。

呪いバトルの中で、敵の呪いの回避方法そのものが謎解きギミックになっており、中には一風変わったというか、ややメタ的な要素で呪いを回避する場面もある。

  • メタ的な要素というのはうまく扱わないと滑りやすいが、本作は上記したような序盤の畳みかけるような掴みとテキストによる雰囲気作りによる没入感がとにかく強いため、メタ的な要素も良い方向に作用している。

その他、探索の中で『もうこのルートで出来ることはいったん終わりなので別のルートに行ってね』ということがある程度わかりやすく、それでいて雰囲気を壊さない形で示されるようになっており、どのルートに行けばいいのかも話の流れから推察しやすくスムーズに進行できるよう工夫されている。

オマケ要素である『なめどり』集めも、20という多すぎない数かつ大半が難しすぎない隠し場所設定になっており、緊張感を損なわない・作業感を感じすぎない塩梅になっている。

  • 他のゲームだとこれが50とか100とかの途方もない数に設定されていたり、シリアスなシーンでドカンと派手に配置されていたりで緊張感を損なったり、集める作業感が強すぎる形になっていることが多く、この点からもこのゲームが丁寧に作られているのが伺える。

ジャンプスケアは序盤こそやや目立つが、全体的には控えめでこの点も筆者的には高評価。基本的には雰囲気重視のホラー演出になっている。

  • BGMも良好で雰囲気作りに大きく貢献している。
  • 低予算らしくボイスは無いが、ボイスが無いことを活かしたギミックがあったり上記した序盤の掴みのおかげで特に気にならなかった。

 

不満点

特に序盤の掴みが強く、全体的にもよくできたシナリオではあるのだが、そのシナリオは呪いや魔術などのオカルトと雰囲気でのホラー要素・呪いを活用したバトル要素、そして謎解きなどのミステリー要素と様々な要素によって構成されている。その中で特にホラーとバトルに関してはやや中途半端に感じる節がある。

  • ホラーもバトルもゲーム体験としてうまく機能しているシーンが序盤に集中しており、中盤以降は謎解きがメインとなり鳴りを潜めてしまう。
  • もちろん中盤以降これらの要素がまったく無いわけではないものの、良くも悪くも普通に面白いホラー風ミステリーといった展開がメインになってしまい、結果としてホラー要素を求める人にはホラーがやや弱く感じてしまうし、序盤の展開で能力バトル物としての楽しみを期待した人にはバトル要素が弱く感じてしまう。
  • バトル要素が鳴りを潜めることによって、話が面白くなりそうな条件の呪いがゲーム的にうまく活かされなくなってしまうのも残念。
  • 掴みが良すぎて期待値が高くなりすぎるというのもあるかもしれない。

ホラーやバトル要素が弱くなる一因として一部の味方サイドが強くなりすぎるというのもある。

  • 能力バトル要素のある作品としては珍しく警察や探偵が有能であることと、これらの勢力に味方する形で霊障に強いキャラクターまで登場するため、特に中盤は各勢力のパワーバランスがやや悪い。
  • と言ってもこれらのキャラクターもしっかり苦戦・苦悩が描かれるため大きな問題ではない。

また、それまでの演出や描写の丁寧さとは対照的に、物語の黒幕回りの展開や演出はややあっさりしており、結末に少々物足りなさを感じた。

  • 話としてはうまくまとまっているのだが、終盤になるにつれ多くの謎が解け、残った情報からなんとなく想像がついてしまうのもこの結末の弱さに拍車をかけてしまっている。
  • とはいえ全体的にはゲームのシナリオ・演出として水準以上に出来ており、価格も考えれば大きな不満というほどではない。

 

まとめ

様々な要素を取り入れたシナリオとそれを支える良質なテキスト、ギミックを含めた演出での雰囲気作りにより、安価ながら非常に完成度の高いテキストアドベンチャー。

やや尻すぼみではあるが抜群の掴みと遊びやすい様々な工夫により最後まで夢中になってプレイできる。重厚なホラーを求める人には少々弱いものの、大半の人にお勧めできる作品だ。

 

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