【Steam】Sea of Stars 感想

Sea of Stars タイトル画面 Steam
タイトル Sea of Stars
プレイした機種 PC Steam
メーカー Sabotage Studio
満足度 D(不満が勝る。たいていの場合お勧めできない。)
要点
  • 優れたドット表現とそれを活かせる世界観
  • 質の低いローカライズと全体的に描写不足なシナリオ
  • テンポが悪く幅も狭いバトル
  • ストレスだらけの移動、探索
執筆日 2024年1月14日

 

はじめに

Sea of Stars タイトル画面

Steam版で実績コンプまでプレイ。『Sea of Stars』は美しいピクセルアートで描かれる、レトロ調のオーソドックスなRPG。

SFC~初代PS頃の名作JRPGの好きなところを詰め込んだようなゲーム性が特徴。

  • 剣と魔法とドラゴンの王道ファンタジー世界観、並行世界や観測者といったSF要素、主人公は世界を滅ぼす力を持った脅威と戦うことを宿命づけられた戦士、海底や火山や氷河といった古典的ロケーションにギミック豊富なダンジョン、コマンドバトルといった、まさに『あのころのJRPG』街道のど真ん中を走り抜けるような作品になっている。

 

良かった点

良かったところとしてはまず『クロノトリガー』をはじめとしたSFCを彷彿させる美麗なドットグラフィックだろう。

  • と言っても完全にSFCレベルというわけではなく、細かいエフェクトなどは(おそらく)CGを使用しており、懐かしいながらもリッチ感もある程度持たせている。
  • 似たようなところで行くと『オクトパストラベラー』などのHD2DもピクセルアートにCGでのエフェクトという表現を採用していたが、あちらよりもよりSFC感・レトロ感を重視した塩梅で、個人的にはこちらのほうがより『好きな人にはぶっささる』感じに仕上がっているように思う。
  • レトロライクのドットゲームは海外から多くリリースされているが、その中でも頭一つ抜けていると感じた。

また、BGMの出来もインディーズゲームとしては高水準。光田氏もゲスト参加しているだけあり、『らしい』BGMが満載だ。

ただ、個人的にはこういった『外見的な部分』しか褒められるところはなかった。プレイすればするほどメッキが剥がれていった…という感想。

 

不満点

悪かった点だが、まずはやけにアメリカンな脱力テキスト。

  • ローカライズの問題だろうが、とにかく文章のクセが強い。
  • キャラクター同士の会話の随所がアメリカンで、ファンタジー感をぶち壊してくれる。
  • 『なら』『それって○○じゃん!』がやたら多用され違和感がすごく、没入感もなにもあったものではない。
  • これを受け入れられるかどうかが本作のシナリオを楽しめるかどうかの最大の関門と言える。

そもそもテキスト量がまったく足りていない。

  • 明らかに説明不足・描写不足な場面が散見され、1つ2つイベントを見逃したかと思うシーンが何度かあった。
  • 遺物というアイテムを集めて語り部のキャラクターに渡すことでストーリー中には語られない補足説明のようなものを読めるシステムがあるが、これ込みでもよくわからない部分が多い。
  • そも、舞台説明を垂れ流すだけのものであり、シナリオ上のテキスト不足を補う要素としてはあまり機能していない。

その割に主人公たちは途中から妙に達観している。

  • 敵を打ち倒す使命を背負ったものとその仲間として、すべて理解して受け入れてどんどん進んでいくため、プレイヤーが置き去りにされやすい。
  • 作中の描写とプレイヤー側の感じ方に乖離がかなり大きく、学院長周りは終始イライラさせられたし、パン作りのあたりは変な電波を受信したかのようで本当に意味不明で不快感すら覚えた。

もう一つ大きな難点として挙げられるのが探索要素の過剰なストレスだ。

  • ダンジョン内のギミックはゼルダの伝説のようなアドベンチャーゲーム並みに豊富で、区画ごとに仕掛けを作動させないと次の区画には行けないような形になっている。
  • もちろんダンジョンに特徴をもたせる・ただ歩くだけのレールにならないようダンジョンのギミックは必要な要素ではあるが、後述する戦闘面の問題と併せてとにかくテンポが悪い
  • やることも姿が変わっただけで内容は一緒というものが最後まで多く、モノを動かす・フックをひっかける・アイテムを使うの派生系ばかり。
  • 1つ1つを切り取って見ればよく考えられているギミックもあるが、さすがにマンネリ。

テレポートを始めとするお手軽長距離移動手段がほぼないのも苦しい。

  • 最終盤で飛行できるようにはなるが、ドラクエで言うところのルーラやリレミトが存在しないため飛行できるようになるまで以前のマップに戻るのがつらい。
  • 飛行侵入できないインマップを経由しないと出入りできない町すらある。
  • 船の移動速度アップのアイテムがあるが、それができるなら通常の移動速度アップや、ダンジョンから瞬時に外に出られるアイテムを用意してほしかった。後述するアイテム回収の為に世界各地を巡るころにはすでに船での移動はほとんどしなくなるため存在意義が薄い。
  • コンプリートのために特定の町やダンジョンを往復しなければならないものもあり、この点はとにかく作りこみが浅いと感じた。

戦闘面にも問題は多い。まずはとにかくテンポが悪い点。
マリオRPGのようなQTE要素があるためかどうかはわからないが雑魚敵までイチイチ攻撃モーションが長い。

  • このQTE要素も最初こそ楽しいと感じるがすぐに飽きがくる。味方サイド1人1人が取れる行動の種類が極端に少ないため、ゲームを通して何度も何度も同じ攻撃をするのだから当然だ。
  • ゲーム側としてはこの要素は必須ではないとしているが、QTE要素が敵のスキル攻撃をキャンセルするのに必要になる仕組みになっているせいでそうも言っていられない。
  • 特に序盤の斬撃属性や毒属性などは攻撃手段に乏しく、敵の特殊攻撃をキャンセルするためには通常攻撃でタイミングよくボタンを押さないといけない状況が多く発生する。
  • 月属性や陽属性も複数出されるとムーメランやサンムーメランを複数回当てないと実質解除できない。
  • もちろん敵のスキル攻撃をキャンセルできなかったとして即全滅確定というわけではないため必須ではないのは間違いではないが、少なくともプレイしている側の心境としては入力を強要されている形であり、すぐに面倒な要素に成り下がってしまう。
  • この点に関しては単に硬いだけの単調なボスが多いのも併記しておく。長期戦で作業的に敵の行動をキャンセルし続けるだけというボス戦が少なくない。

ゲーム終盤の展開で収集要素の実質的なコンプリートを要求されるのもこれらの問題に拍車をかけている。

  • 取り逃したアイテムを回収するために以前のダンジョンに戻り、ギミックのせいでやたらと広く複雑なマップを再び歩き回り、面倒な戦闘を繰り返すことになる。
  • 雑魚敵との戦闘はシンボルエンカウントだが、避けるのがかなり難しい配置が散見され、戦闘に入ってしまうと逃げることもできない。
  • 敵が妙にタフで格下の相手でもボタン連打で簡単ノーダメージ瞬殺はなかなかできないため、序盤のダンジョンでも再探索が非常に面倒に感じてしまう。

これらのマイナス要素は特にレトロゲームにはつきものではある。

  • しかし世にある多くの作品はテキストや演出の妙によってキャラやシナリオに夢中にさせたり、様々な要素を段階的に開放しながら新しい楽しさを提供し続けるなど、工夫によって軽減したり逆に面白さのために必要な抑圧に昇華させている。そういった工夫は感じられなかった。

 

まとめ

制作側が作りたいものを好き勝手に作っただけのゲームという感じが否めない。

ドットで書き込まれたグラフィックや良い意味でどこかで見たようなシーン、オールドJRPGの楽しかった部分を切り取って短期的な場面場面では同じような体験ができているように感じるが、そこに至るまでの描写であったり、各要素の研究や作りこみが足りていないせいで、全体を通したプレイ体験としては低品質。先にも言ったようにメッキが剥がれていく。

もちろん制作側が作りたいものを作るというのはモチベーションの面で重要なことだが、それだけでユーザーが楽しめるものを作るには相当な技術やバランス感覚が必要になるだろう。

結果としてプレイ体験に影響の大きい難点をいくつも抱えた、よくあるクロノフォロワーの凡ゲーというのが筆者の感想。

DLCが開発中とのことで、移動の負荷や戦闘のストレスを緩和する要素が実装されれば多少印象が変わる可能性はある。

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