タイトル | 制服カノジョ |
プレイした機種 | Windows PC ソフト |
メーカー | エンターグラム |
満足度 | D(不満が勝る。たいていの場合お勧めできない。) |
要点 |
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執筆日 |
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制服カノジョ シリーズ作品の感想はこちら |
制服カノジョ まよいごエンゲージ(スピンオフ) |
制服カノジョ2(2作目) |
はじめに
Windows版をフルコンプまでプレイ。恋愛アドベンチャー…ギャルゲーと呼ばれるジャンルのノベルゲーム。
都会での学校生活で女子への告白をクラスLINE(作中ではLIME)に晒され居場所をなくした主人公が福岡に転校し、『制服カノジョ』という制服モデルに携わる中で3人のヒロインと恋に落ちていくというのがストーリーの流れ。
- コンシューマのこの手のゲームはエロゲーからエロを除いた移植版が多いが、このゲームはコンシューマ発の新作となっている。
基本システム
- オーソドックスなテキストアドベンチャー
- テキストを読み、時折表示される選択肢を選ぶことでシナリオが進行していく。
- 一部シーンではイベントスチルあり。アルバム機能も搭載。
- テキストアドベンチャーとしての基本的な設定機能は充実。
- テキストスピードやオート・スキップの挙動設定などに加え、メッセージウィンドウの透明度やフォントの種類、キャラごとのボイス音量まで細かく調整可能。
LIMEとConstagram
- 作中で登場するSNS。
- ヒロインからLIMEで連絡が来ることがあり、返答次第でシナリオが分岐する。
- ゲーム的には通常のテキストアドベンチャーの演出の一環程度のものだが、イマドキで没入感がある。
- 特定シーンではヒロインたちがConstagramに画像の投稿を行う。
- 閲覧は自由。イイネするかしないかで後の反応が変化するなどこちらもイマドキな演出。
スキンシップタイム
- 一部シーンではスキンシップタイムと呼ばれるイベントが挿入される。
- ヒロインとのデート中に起こったハプニングを解決するためにお触りをするというシーンで、タッチした場所によって反応が楽しめる。
良かった点
イラストやキャラデザは元エロゲーのイラストレーターが担当しているだけあってなかなかのクオリティ。
- 昨今、いろいろと配慮してエロ表現が控えめな作品も多い中で、エロ表現に関しては頑張っているほうだと感じた。
- ド直球のエロというよりは、シチュエーション重視のフェチ度高めのエロという感じなので、刺さる人にはかなり刺さるのではないだろうか。
- 透けた素材を使用した制服のデザインもこの手のゲームが好きな人に刺さるものになっており、たいへんエロカワイイ。
- ただ、シーンによっては若干だが作画が不安定になっているように見受けられる。
テキストゲームとしての基本的なシステムは完成されており、不自由なく遊べる。
- キャラごとのボイス音量設定も可能でかなり細かく調整できる。
不満点
シナリオの中身が無さすぎる、テキストのクオリティも低い。
シナリオ面
- シナリオの内容はあまり褒められたものではなく、序盤で制服カノジョ3人が揃うところが盛り上がりの最高潮で、あとはほぼ起伏がない。というか中身がない。
- ちなみに制服カノジョ3人が揃うまでというのは体験版として事前に公開されていた範囲。
- シナリオの流れは実質なろう系の異世界転生ものや追放ざまぁものであり、タイトルをつけるなら『制服カノジョ~カースト上位の女子にいじめられて追放された俺は田舎でハーレムライフ送る。いまさら気づいてももう遅い~』といったところか。
- 女性がらみで耐えがたい経験をして追放された主人公がたいした努力もせず謎のカリスマ性を発揮し、ヒロインは全員出会ったその時から惚れる過程も描かれず好感度MAX、女の子たちは勝手に発情してお色気イベントを披露してくれるし、制服カノジョの活動も自動的にうまくいくし、再会した因縁の相手もたいしたドラマもなくヒロインがうまいこと助けてくれていつの間にかいい奴みたいな扱いになっている。
- いじめられる前の描写があまりにも薄く、いじめという抑圧からの解放も回りが勝手にやってくれただけでいじめられた主人公に共感も感情移入もできない。
- 制服カノジョだの転校関係だので主人公が中途半端に自己主張してくるせいで自己投影さえも微妙にしづらい。
- 唯一、後輩ルートだけは若干のドラマ性がある(それもあっという間に解決するが)ので後輩ルートから始めると全体のプレイ印象が多少変わる可能性がある。筆者は先輩ルートから遊んだが、このルートが一番中身がなかった。
テキスト・演出面
- シチュエーション重視なのにそのシチュエーションに至る過程が不足しすぎており、絵のクオリティでゴリ押しているだけという印象。
- 全体的にテキストアドベンチャーとして必要な背景・心情描写が足りておらず、逆にセリフのやり取りが冗長で面白みも無い。
- 場面と場面のつなぎが非常に弱く、書きたいシーンだけ書いて適当に切り貼りしただけにすら見える。
- このせいで、女の子がカワイイ・エロいという観点だけで見ても説得力が無い。
- とにかくプレイヤーの没入感を削ぐことに余念がない。
- 特に序盤に多く見受けられるが1~2分進めるごとに話の切りが用意されていたり、シーンごとに次回予告が挿入されたり、誤字脱字も多い。
- 一つ一つの話がコンパクトなのはスマホゲームなら長所にもなるが、フルプライスのテキストアドベンチャーでやられると満足度や没入感はかなり下がる。
- 次回予告などアニメ的な演出もそのものが悪いわけではないが、本編がペラペラすぎてプレイヤー側とゲーム側の温度差を感じさせてしまっている。
設定面
- 制服カノジョという概念が個別ルートに入ってからはほぼ空気になる。
- ロケ地に行ったりかわいい制服を着せるためのご都合主義な設定にしかなっておらず、この点もペラペラ。
- 個別ルートに入るとほかの制服カノジョたちも空気になる。
- それどころか途中から制服でなく私服になる。ちなみに私服は2種類から選べるが制服は選べない。
- 上記した序盤のイジメ展開に関わった因縁のある相手や妙に気合の入ったキャラデザの先生もほとんど出番がなく、あらゆる設定をまったく活かせていない。
フルプライスのテキストアドベンチャーとしてはボリュームも不足。
- シナリオそのものの短さもあるが、上記したように場面と場面のつなぎが弱くそれぞれのシーンが飛び飛びに見えるため、体感的なシナリオの長さもかなり短く感じる。
- 中身が無さすぎるせいで『楽しいシーン』のボリュームはさらに少ない。
- フルプライスとしては分岐のボリュームも少ない。
- 分岐の少なさに関連して、LIMEやConstagramといったSNSでの演出も活かせていない。
- ここまで中身がないとこれ以上長くても困るという話ではある。
- 彼女とのスキンシップが楽しめるスキンシップタイムも、体験版に収録されていた1シーンを除くと各キャラ1シーンずつしかない。
- エッッッ方面でも満足度はかなり低い。
- そもそも、シナリオの中身がほとんどなくエッッさも中途半端、全体的にボリュームも無いとなると、基本無料のスマホゲームや低価格のDL専売タイトルとどう戦うつもりだったのか疑問。
まとめ
キャラデザ、イラストは良好で、制服美少女とちょいエロありのイチャイチャを楽しむだけのゲームとして割り切って頭を空っぽにしてプレイすればそれなりには楽しめる。しかしその場合フルプライスが大きく足を引っ張り結局純粋に楽しむのは難しい。
単にイチャイチャするだけのゲームは、需要の大半を基本無料のスマホゲームや安価なDL専売タイトルに奪われてしまっているように感じる。そういったタイトルもシナリオや演出に力を入れている作品が多くなっており、ここまで中身が薄いゲームは昨今あまり見られなくなってきている。
その中であえてフルプライスのパッケージ販売でリリースした度胸は買いたいが、20年前から進歩のないゲーム性で肝心のシナリオや演出もこの出来ではさすがに厳しい評価をせざるを得ない。せっかくの魅力的なヒロインや制服がこのように使いつぶされてしまうのは残念だ。
追記
アペンドストーリー
無料の更新データにより、アペンドストーリー(追加ストーリー)が実装された。
各ヒロインと交際を始めてからのデートの様子が描かれた内容になっており、タイトル画面からすぐに追加分を遊ぶことができる。
- 見たいヒロインを選択することで対応したストーリーが見られる。
本編の描写不足を補う、或いは質の悪さを払拭できる内容ではなかった。
- そもそも不足しているのは付き合うまでの心情描写やイチャイチャの説得力であるため、付き合ってからの追加ストーリーでそこを補うのは難しい。
- 質の悪さも本編譲り。行きは電車、帰りは車で迎えの状況で帰りの車の運転手に『帰りも送迎ありがとう』と言い放つ。
- ただ、本編の個別ルートと比べると『他のヒロインもちゃんと存在している感』は出ていたように感じる。
無料とはいえ、ボリュームも物足りない。
- 3ルートすべて見ても1時間もかからない。
- 選択肢による分岐は後輩ルートでクイズが1度あるのみで、実質無し。
- 新規イベントスチルはSDキャラのものが1枚と後輩ルートのものが1枚の2枚だけ。
- ただでさえ背景描写が足りていないのに、イベントスチルも無いせいで(主人公目線で)はじめて訪れる場所としての共感性が非常に低い。
- 凄い景色だと言うだけで、どんな景色なのかプレイヤーにはまったくわからない。
- 本作は舞台である福岡県とコラボしているが、これではPRにもならないのでは…。
- お触りシステムであるスキンシップタイムも当然のように無い。
相変わらず『制服』は空気。
- 追加ストーリー内でヒロインたちが制服を着ているシーンは驚きの”0”。皆無である。
- タイトルは『制服カノジョ』、公式サイトによればコンセプトは『制服を着た可愛い女の子と触れ合う!』とのこと。
- 休日のデートとはいえ、本編もそうだがそもそもコンセプトが崩壊してしまっている。
まとめ
筆者の感想としては本編プレイ時と何も変わらず、むしろ当時の感想をより強固なものにする結果となった。
- 本編の感想で『中身が無いのにこれ以上長くても困る』と書いたが、まさにそれが実現してしまった。
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