【Switch】制服カノジョ まよいごエンゲージ 感想

Switch
タイトル 制服カノジョ まよいごエンゲージ
プレイした機種 ニンテンドーSwitch
メーカー エンターグラム
満足度 D(不満が勝る。たいていの場合お勧めできない。)
要点
  • 『制服カノジョ』スピンオフ作品
  • 本編よりもやや改善が見られるシナリオ
  • 本編よりも『制服カノジョ』している
  • 依然として低クオリティなテキスト・シナリオ
  • ボリュームも足りない
執筆日 2024年9月27日
本編・アペンドストーリーの感想はこちら
制服カノジョ

はじめに

Switch版をクリアまでプレイ。

エンターグラムより発売中の恋愛アドベンチャー『制服カノジョ』のスピンオフ作品。

制服カノジョ(以下、本編)』に登場したサブキャラクター『仁田原夢羽』をヒロインに据え、主人公は(嘘から始めた)マネージャーとして、声優を目指す夢羽と交流を深めていく。

  • 公式のキャッチコピーは『唯一無二の陰キャガールフレンド誕生!!』。
    • ヒロインの夢羽は役者かつ声優であるが、引っ込み思案で人前に出るのが苦手。
  • 基本的なシステムは本編同様のテキストアドベンチャー。テキストを読み進め、時に選択肢を選ぶことでゲームが進行していく。
  • 本編はヒロイン3人でフルプライスだったが、本作はヒロインが1人になった関係か価格も3000円前後になっている。
    • 本編と異なり選択肢による大きな分岐は無く、反応が変化する程度の小さな差分に抑えられている。
    • LIME(作中でのLINEのようなもの)でのやりとりや、お触りシステムであるスキンシップタイムといった要素もオミットされている。

 

良かった点

本編よりも(若干ながら)ドラマ性が増したシナリオ。

  • 本編は中身と呼べる中身が無く、脈絡もなくただイチャイチャするだけだったが、本作は(一応)ドラマ性があり、中身のあるシナリオになっている。
    • とはいえまだまだ問題点は多い。後述。
  • 登場キャラクターの数を絞ったおかげで本編よりも1人1人のキャラクターが立っている。
    • 本編はゲストキャラが無駄に多く散らかっていたが、本作はそういったキャラがいない。
  • イベントスチルの枚数も値段とヒロイン1人であることを加味して満足のいくものになっており、クオリティも本編より安定している。

相変わらず充実したシステム周り。

  • 使いやすいバックログやジャンプ機能・高速スキップはもちろんのこと、キャラごとにボイス音量を調整出来たり、オート時の挙動や各種表示までかなり細かく設定調整が可能。
    • テキストアドベンチャーとしてストレスなく遊ぶために必要な機能はしっかり網羅出来ている。

 

不満点

テキスト・シナリオは相変わらずの低品質・低ボリューム。

  • 全体的にテキストアドベンチャーとしてあるべきテキストが足りておらず、逆に不要なテキストが多い印象。
    • 状況や心情・舞台となる街の描写が非常に少なく、逆にセリフのやり取りが冗長。
  • 夢羽があまり陰キャに見えない。
    • 舞台人としては確かに引っ込み思案ではあるものの、普段は割と普通に会話できるため敢えて陰キャヒロインというほどの印象はほとんどなく、ややおとなしい女の子の範疇。
    • 陰キャを売りにしている女性キャラが溢れるほどいる時代であり、この程度の特徴づけでは弱く感じた。
  • 役者や声優の仕事シーン中心に物語が進んでいくが、(アルバイトとはいえ)給料をもらって仕事としてやっているのにこれは…というシーンが非常に多い。
    • 言っていることが二転三転するヒロインに好感が持ちづらい。
    • それでいてなろう系じみた『あからさまなやられ役が出てきてギャフンと言わせる』展開ばかり続く。敵も悪いが、主人公サイドの言動にも問題があるため素直にスッキリできない。
    • 主人公サイドの行動が普通に警察を呼ばれても文句を言えないものになってしまっており、なまじ現実感のある舞台設定故にコメディとして見ても少々目に余る。
    • 結末も疑問。『これでええんか…?』感が漂う。
    • かなり治安が悪そうだな…という印象を受けるが、シリーズに協力している福岡が心配である。
  • 本編もそうだったが、開幕からややシリアス・重めな展開を持ってくる割にその展開をまったく活かせていない。
    • 開始時点での主人公の境遇を作り出すために無理やりやっているだけのご都合展開になってしまっている。
    • 『あからさまなヘイト役を出してギャフンと言わせる』という展開が多い割に、肝心要のこの部分の回収がおざなり。
    • 本編でも開幕の展開に関与したサブキャラクターを上手く扱えていなかったが、本作も似たようなポジションとして開幕の展開に関与するサブキャラクターの扱いが途中から投げやりになる。
    • このせいで『イチャイチャ重視のコメディシナリオ』として見ても異物混入状態になってしまう。
  • ボリュームも少なく、筆者は4時間かからないくらいで選択肢回収まで終わってしまった。
    • ヒロイン1人で分岐と言える分岐も無い。価格は本編より抑えられたが、本編に存在したLIMEのやり取りやスキンシップタイム、選択肢でデートの行き先が変化するといった僅かなゲーム性も削られてしまっている。
    • 正直DLCで済ませてしまっても良いレベル。
    • イマドキのテキストアドベンチャーとして、Live2Dなど立ち絵を動かす仕組みすら導入されていないのも厳しく見ざるを得ない。
  • スピンオフ作品だが、本編とのリンク性もほぼ無い。
    • 本編側の要素を匂わせられそうな場面は多くあったが、最後まで活かされることはなかった。
    • 本編を知らなくても楽しめると捉えることも出来る。
  • とはいえ、上記した通り完全に中身が無かった本編に比べればしっかりとドラマ性があり、マシになっている。
    • テーマ自体は昨今の『下手なアイドルよりアイドル売りされる声優』を扱ったもので悪くはない。
    • 『制服を着たヒロイン』という本シリーズのコンセプトも、本編より守られている。本編が崩壊しすぎているだけとも言えるが…。

主人公の不快度がかなり高い。

  • 選択肢次第だが、出会ったその日に夢羽の靴下を(文字通り)味見しようとするなど、未遂に終わるとはいえ少々奇行が目立つ。
    • 本編もフェチ的なお色気シーンが多かったためその流れで本作は『匂いフェチ』を描きたかったのだろうが、『エロい』『面白い』よりも『気持ち悪い』の印象が強くなってしまった。
    • もちろんそういうゲームであると言われれば許せるレベルではあるが、なまじ本編よりもドラマ性があるシナリオになっているため奇行が目立つ形となった。
  • 嘘から始まったとはいえ正式にマネージャーとして活動をしているのにあまりにも浅慮。
    • 同じような流れのトラブルが何度も繰り返される。
    • 上記したが主人公側の行動にも問題が多いにも拘らず、相手が悪いという形で進行するため困難を乗り越えてもスカッとしない。

 

まとめ

本編から若干の改善は見られるものの、依然としてシナリオ・テキストやボリュームに多くの問題を抱える作品。

価格は抑えられたがそれ以上にゲーム性が削られ、スピンオフならではの本編との繋がりといった楽しみ方さえできず、このくらいの内容・ボリュームでは低価格帯のDL専売タイトルやスマホゲームと戦えないというのが正直なところ。

便宜上本編と同じ満足度としているが、シナリオ面で頑張りの痕跡が見受けられることと、”フルプライスのボリューム不足”よりは”3000円のボリューム不足”の方が精神的ダメージが少ないことから、筆者個人としては本編より満足度が高い。

余談だが本編側の次回作も発表されており、現時点での情報ではヒロインの追加に加えてゲーム性を強化してきている模様。シナリオ面も本作で若干の改善が見られたため、次回作に期待。

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