【iOS】シンギュラリティラブストーリー 感想

シンギュラリティラブストーリー タイトル画面 iOS
タイトル シンギュラリティ×ラブストーリー
プレイした機種 iOS iPhone13/iPad Pro
メーカー 幻境エンターテイメント
満足度 D(不満が勝る。たいていの場合お勧めできない。)
要点
  • 放置ゲームとしてまともに遊べる
  • アニメーションのクオリティは〇
  • 美少女ゲームとして致命的な序盤のシナリオ
  • 登場人物が男性だらけ
  • チープすぎる戦闘
執筆日 2024年9月9日

 

はじめに

シンギュラリティラブストーリー タイトル画面

iOS版にて3日間プレイ。

幻境エンターテイメントがリリースした、スマホ向け都市恋愛シミュレーションゲーム。

  • ストーリーパートは恋愛シミュレーションよろしく、テキストを読んで選択肢を選んで進行していく。
    • 選択肢と言っても基本的に分岐は無く、正解を選ぶまでループしたりどの選択肢を選んでも同じ展開に収束したり。
    • Web漫画風な演出展開が特徴で、一般的な恋愛シミュレーションゲームとは画面から受ける印象が少々違う。
    • Live2Dにより動くイラスト、アニメーションなど演出面はそれなりにリッチ。
  • 着せ替え要素なども有り。
  • ヒロイン(だけでなく男女関係なくあらゆるキャラ)から電話やメッセージが届き返信をしたり、SNSの投稿にコメントしたり、それによって好感度が変動したりといった交流要素も用意されている。

合間合間にバトルパートが挿入され、主にガチャで入手するコマンドカード(回想カード)を使用するカードバトルとなっている。

  • 敵は主人公の妄想によってモンスター化したバグや人間など。
  • よくあるコスト制・ターン制のカードバトルで、毎ターン決まった値が補給されるコスト内でカードを使用していく。
  • カード効果は単純に攻撃するものの他、回復したり攻撃力をアップしたりデバフを解除したりと、ターン制としてポピュラーなものは一通り揃っている。
  • ストーリー内でのバトルの他、勝利するごとにバフを得ながら連戦するモード、非同期PvPなども用意されている。
  • カードを育成する要素の他、主人公のレベル、主人公の装備(といっても一般的なゲームの剣や鎧ではなく、スマートウォッチや自転車、ペットなど現代基準の所持品・装飾品)を育成する要素もある。

その他押さえておくべき要素としては

  • ストーリー進行、バトルパート共にスタミナの概念は無し。
  • リアル時間の経過によって自動的に育成素材が集まる、所謂『放置ゲーム』系のジャンルに分類される要素有り。
    • プレイヤーレベルやストーリー進行などで度々『○時間限定お得な課金パック』が解放されるのも放置ゲーム系によくある要素。
    • 同様にリアルの時間経過で管理する会社経営や、ゲーム内通貨での株取引なども用意されている。
  • ガチャは上記した回想カードのみ。ピックアップが設定された期間限定ガチャとピックアップや期限無しの恒常ガチャが存在する。
    • 各種ミッションやシナリオ進行などの報酬で所謂石を入手でき、無料でもガチャは回せる。

 

良かった点

動くイラストやハイクオリティなアニメーションによる演出表現。

  • Live2Dの出来は2024年基準で見てもなかなかのクオリティ。イラストそのものの好みの問題はあるだろうが、滑らかに動き丁寧に作られているのが伝わってくる。
    • 一部シーンではアニメーションでの演出も見られる。1つ1つのシーンは短いものの下手な深夜アニメよりクオリティが高く、2Dテキストアドベンチャーの演出表現としてはそれなりにリッチな部類。
  • 着せ替え要素は活かせる部分は少ない(アクションやアイドル系に比べると着せ替えたキャラを動かすシーンが無い)ものの、お色気具合を度外視すればなかなか楽しめる。
    • 乳揺れや各種チラなどのお色気ギミックは、2Dスマホゲームという括りでも『アズールレーン』や『ブラウンダスト2』などの足元にも及ばない程度なので期待するものではない。

『放置ゲー』として普通に楽しめるクオリティ。

  • リアルの時間経過により自動で育成素材が集まり、強くなって各コンテンツを少しずつ進行していく放置ゲーの基礎部分は整っている。
    • 前述したように要所要所でお得パックが販促されたり、進行度や戦力によるランキングもあったりと、放置ゲーに慣れている人ならすんなり入り込むことができるだろう。
    • ただしこの部分にも無視できない問題はある。後述。

 

不満点

問題点だらけのシナリオにより、恋愛シミュレーションゲームとしての良さが全く発揮できていない。

  • 日本語ローカライズは低品質。読めないことは無いが没入感は皆無。
    • 翻訳の悪さに加えインターネット関連の用語が多用され、内容が頭に入ってこない。
    • ローカライズの問題か、多めのギャグシーンも滑り気味。
    • ただ、各ネタの端々から『日本のオタク文化の知識』は伝わってくる。
  • シナリオ展開はぺらっぺらで完全に出来の悪いなろう小説
    • なんの変哲もなかったはずの主人公が突然俺ツエーしはじめ、不自然に周りの知能が下がり、主人公を持ち上げるために生まれたようなキャラばかり登場する。
    • 会社から追放され、信じていた人に裏切られ、都合のいいヒロインに出会うという見事な追放系なろう展開。
    • もちろんなろう展開そのものが悪いわけではない。出来の問題である。
    • なまじ現代舞台故に、法的にも怪しい展開が散見される。
  • 主人公の不快度も高め。
    • 物語の展開に合わせて知能や能力が上がったり下がったり、都合のいいように扱われる。
  • 1章が中途半端な胸糞展開から始まるのも主人公が不快すぎて共感・感情移入できないし、そもそも序盤の楽しさが重要なスマホゲームと相性が悪い。
    • スキップもできない。
  • 最大の問題点は、恋愛シミュレーションゲームを謳っているのに男性キャラが多すぎる点。
    • ヒロイン以外の女性キャラがほとんど登場せず、重要キャラの多くが男性キャラ。
    • ヒロインたちも序盤は顔見せ程度でほとんど登場せず空気。
    • 途中からはそれなりに出番が多くなるが、多くの人がそれまでに脱落してしまうのではないか。
    • 出番が増えてからも主人公を持ち上げるための展開ありきで、恋愛シミュレーションのヒロインというよりは出来の悪いなろうの女キャラといった印象が強い。
    • このせいで少なくとも序盤はヒロインたちの魅力を知る機会が無い。恋愛シミュレーションとして致命的な欠陥シナリオと言える。
    • 男女比率から考えると乙女ゲームと言われても納得してしまうレベル。

誰にどう売り出したいのかチグハグな売り方。

  • このゲームは『少年よ、思う存分恋に落ちるがいい』をキャッチコピーに各種媒体で宣伝しているが、上記した通り男性向け恋愛シミュレーションとしては致命的に女性キャラの扱いが下手。
    • 選択肢で分岐するわけでもなく、そもそも恋愛シミュレーションゲームなのかどうか…
    • 昨今の美少女スマホゲームとしてはお色気要素も弱く、美少女売りするにはかなり厳しい。
  • シナリオだけでなく、ゲームとして全体的にヒロインたちの出番が無い
    • 戦闘に参加するのは主人公だけで、回想カードはあくまでイベントスチルの柄のカードというだけ。
    • ホーム画面にも妹しかおらず、その妹も後ろを向いているか見切れているかのどちらかである。
    • 特に序盤は、最早『武器(カード)に書かれた絵』くらいの存在感しかない。
  • コチラも上記したが、スマホゲームのシナリオとして序盤がつまらなすぎる。中盤からもヒロインの出番が少し増えるというだけで特に面白くはならない。
    • 出来の悪いなろうとして押さえるべきポイントはほぼ押さえているため、出来の悪いなろうが好きなら楽しめる…かもしれない。
  • 対して放置ゲームとしてはまともに遊べる出来になっているものの、どこにも放置ゲームとしては宣伝していない。筆者も始めるまで知らなかった。
    • まともに遊べるとは言っても、『AFKアリーナ』のような快適さがあるわけでもなく、『メメントモリ』のような世界観があるわけでもなく、あくまでまともに遊べるの域を出ない。

その他細かい問題点。

  • UIは見た目重視で使い勝手が悪い。どこに何があるかわかりづらいし、無駄にタップやスクロールの回数が多い。
    • UIに関連して、機種の問題か筆者の環境ではiPhoneだとしっかり全画面表示になるが、iPadだと左右に余白ができる。イマドキのゲームでこれは珍しい。
    • コチラも関連して、シナリオパートでセリフが画面下部に表示されると、バックログやオートなどの操作パネルに被ってしまい見づらい。
  • バトルパートは2024年の作品とは思えないほどチープ。
    • ガラケー時代やスマホゲーム黎明期を彷彿させる化石カードバトルインターフェース。
    • 敵のデザインは劣悪。ストアページには『爆笑デザイン(要約)』というふうに書かれている。
    • 戦闘テンポは倍速でもかなり悪い。
    • 戦闘バランスも悪い。敵によって戦い方が違い、対策用の回想カードを用いて戦うことを想定した難易度になっているが、対策カードはガチャ入手な上数も無いため、デッキに入れられない、或いは入れても必要なターンに引けないことばかり。
    • 放置ゲーなこともあり、結局放置して戦力を上げてゴリ押しの方が早くて安定する。
    • バランス面はカードの種類が増えてくれば解決しそうではあるが、現時点でも同レアリティ内でのカードの性能差がそれなりに激しいため、うまくバランスが取れるかは不安。
  • シナリオモードのステージ数が無駄に多い。
    • スタミナ無しとはいえあまりにも多すぎる。飽きももちろんだが、下記の各種要素の解禁を遅れさせるための要素にしかなっていない。
  • 各種要素の解禁も遅い。
    • 面白くない序盤をすべて乗り越えないとデイリーやウィークリーに関わるコンテンツを満足に遊べる状態にできない。
    • 放置ゲーとしては変なところでユーザーの滞在時間を稼ぎがち。
  • ガチャは他のスマホゲームと比較すると高め。
    • 天井200連、最低保証は20連で1つ下のレアリティ以上、天井までの回数引継ぎ無し、最高レア2.5%、ピックアップ1.0%、とかなり不味い。
    • 恒常カードの中ですら、同レアリティ内の他のカードより排出率が低く設定されているものがある。
    • 放置ゲー故のお得パックが多いとはいえ、2024年リリースの新規IPのゲームとして戦うにはやや強気すぎる設定。
    • 補足すると、各種イベントやリソース交換などガチャ以外のルートで、最高レアのものも含めてある程度カードがもらえるようにはなっている。
  • 翻訳漏れの他、一部の敵が明らかにアウトっぽい(乳首)など、修正されそうな点もチラホラ。

 

まとめ

『少年よ、思う存分恋に落ちるがいい』と言いつつ主人公の周りをオッサンが取り囲み、スマホゲームとして重要な序盤のプレイフィールをオッサンで消費するという、一歩間違えれば男性向け乙女ゲーム(オッサン)というかなり狭き道を突き進むニッチゲー。

放置ゲーとして一定の遊びは確保されているものの既存の人気タイトルと比較してフックが無く、何よりどこにも放置ゲーとして売り出していないため放置ゲーとして認知すらされていなさそうなのがセールス的につらいところ。

仕様通りに丁寧に作られているようには感じるが、その仕様自体が2024年も後半にリリースされたゲームとしては正直かなり厳しい内容であり、なかなかお勧めしかねる作品となってしまった。

この内容なら素直にコンシューマでミドルプライスくらいの恋愛シミュレーションゲームとして発売したほうが(もちろんそれでもシナリオや翻訳のクオリティは改める必要があるが)評価されたように思う。

放置ゲーが好きな人の中でも、出来の悪いなろう系シナリオが楽しめ、なおかつヒロインよりもオッサンに興味のある人なら楽しめるという、かなりニッチ向けなタイトルと言えるだろう。

  • 今後に望むこととしては、できれば1章クリア後くらいのタイミングでヒロインの魅力が伝わるようなサブシナリオを解禁する、少なくとも3章くらいまではスキップできるようにする、放置ゲーであることを明確にして宣伝することが最低条件といったところ。
  • その上で、何らかの形でヒロインも戦闘に参加するようにし、カードも増やし、快適要素を盛り込んでいけば、なんとか…。

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