【Steam】水星汐 感想

水星汐 タイトル画面 Steam
タイトル 水星汐
プレイした機種 PC Steam
メーカー Renka
満足度 E(とても不満。まともにプレイする気にならないレベル。)
要点
  • 劣悪なユーザビリティ
  • どこが面白いのか、何を見せたいのかが見えてこないゲームデザイン
  • 導線が弱すぎる
  • イラストやBGMなど外見的な雰囲気は良い
執筆日 2024年5月14日

 

はじめに

水星汐 タイトル画面

Steam版を実績コンプリートまでプレイ。個人製作デベロッパー『Renka』作の(自称)ローグライクカードRPG。
主人公は森を彷徨う記憶喪失の少女。カード風デザインの仲間やアイテムを集め、合成したり敵と戦ったりしつつ世界の謎を解き明かしていく…というのが基本的な流れとなっている。

  • キャラやアイテムはすべてカード風にマップ上に配置される。
  • 森や遺跡といった所謂ダンジョン、町もすべてカードのようにマップ上に存在し、ダンジョンに入りたい時はダンジョンのカードの上に自分のキャラクターを重ねると入ることができる。
  • 『篝火』のカードに『りんご』のカードを重なると『焼きリンゴ』のカードになったり、『戦闘ドローン』のカードに『主人公(作中は私表記)』を重ねるとバトルが始まったりと、ゲームデザインは『Stacklans』に近い。

謎解き要素が非常に多く、分岐シナリオも含めると値段に対してのボリュームはなかなかのもの。

 

良かった点

どこか退廃的でアンニュイなイラストと、チルいBGM、まったりとしたゲームスピード、最低限しか語らないシナリオにより雰囲気は抜群。…雰囲気だけだが。イラストとBGMは非常に好みだった。

『カードを重ねるとゲーム的にリアクションが返ってくる』という部分だけに限って言えばプレイ感も悪くない。しかし後述するがユーザービリティがとにかく悪く、さまざまな問題によりこの点も霞んでしまっているのが現状。

あとは起動、ロード、タイトルに戻るといった動作が軽いという点くらいしか良いところが思いつかなかった。

 

不満点

まず始めに言っておくと、このゲームは『ローグライクカードRPG』を自称しているが、正直ただの謎解き脱出アドベンチャーゲームだ。

ローグライクの部分はおそらく食料や素材の入手、仲間の加入にランダム性があり、ありものでやりくりしていく(つまり繰り返しプレイしても同じ状況にならない)点を指して言っていると思われるが…

  • キャラもアイテムも誤操作で捨ててしまわない限りロストがないこと、また仲間もアイテムも大した負担なしに無制限に再入手出来てしまうことから『ありものでやりくりしていく』感はほとんど無い。
  • とりわけパーティ編成においてはいくつかの『正解』が用意されていることから、ゲーム的にはほとんど『くじびき』程度にしか作用していない

カード部分に関しても、せっかくボードゲーム風にカードを配置しているのに、複数の地点で同時進行で何かが起こるとか、特定の場所に配置しておくとなにかあるといった要素は存在しない.

  • イベントカードに自キャラのカードを重ねた時などは一定の待機時間が発生するが、本当にただ待たされるだけでゲーム的になんの意味もない。

となればやってることはクエスト選択式のゲームと大差なく、森や遺跡といったダンジョンのリストから一つを選択して入るのと何も変わらない。

  • むしろ後述するプレイヤビリティ・ユーザービリティの劣悪さの分だけ手間がかかって劣化している。

バトル面も前述したように正解が用意されており、組み合わせはほとんど決まりきったものしかない。

  • 特に終盤のバトルの多くは一部の正解編成以外では倒せないバランスになっているため、構築を楽しむというよりは謎解きやパズルに近いデザインになっている。
  • 上記問題も併せて、見た目がカードというだけでゲーム的なカードの要素はまったく無い

となればもうこれは謎解き脱出アドベンチャーと相違ない。

つまり、よくある謎解き脱出アドベンチャー同様にマップ形式の場所リストから行きたい場所を選択し、そこで探索ポイントを調べアイテムやヒントを入手し、謎を解き、ボスが出てきたら特定のキャラを連れていくという形でもゲーム的に何の問題もない。

  • 差別化が全くできていないのに違うジャンルを自称しているためプレイヤーはイメージとの違いに違和感を持つ。
  • 変えたからこその楽しさがあるわけでもなく、差別化できないのに変えた部分で不必要にプレイヤビリティ・ユーザービリティが劣化している。

全体的なプレイヤビリティ・ユーザービリティの劣悪さを箇条書きで挙げると

  • マップの広さや配置されたカードの多さに対し一度に表示できる範囲が狭すぎる
  • 仕方ないのでカメラをズームアウトすると文字も小さくなってなにも読めなくなる
  • カメラ移動が設定で最速にしても遅い
  • なにかを選択している状態だとカメラ移動できない
  • せっかくカード風にしているのに省略表示がない(例えば攻撃力を剣のマークで表すとか)
  • カードがポップする時などカード同士が意図せず重なる場合、カードが押しやられて移動してしまう
  • 上記状況で移動したカードが平気で画面外に消えていく
  • 重ねたカードを移動する際は一番下のカードを掴まないとまとめて移動できないが、重ねてあるが故に一番下のカードの当たり判定が異常に狭い
  • 重ねる際の吸引力が強すぎてすぐに近くの違うカードに重なる
  • しかも食べ物など消耗品の場合それで消費される
  • その割に合成などでやたら複数のアイテムを重ねさせてくる
  • クリックだけで進める箇所と、キャラを重ねないと進めない箇所の違いが判らない(全部クリックだけで良いのでは)
  • インマップ内で2回も3回もクリック或いはキャラを重ねないとたどり着けないマップに何度も往復させられる
  • その割にインマップ1ページ目には大した意味のない木(一応意味はあるが)などが配置されている。こんなもの削除して1ページ目に重要オブジェクトを全部配置するべき
  • バトル時にこちらが何名の仲間を連れていけるのか判らない(基本は3名だが、1名の場合や5名の場合もある)
  • 重ねて下にいるカードのHPが見えない→戦闘不能状態だと敵カードに重ねられなくなる→上記した人数制限で重ねられないケースもあるため判りにくい

など様々。一つ一つはそこまで大きなものではないがこの数であり、ゲーム中常に付きまとってくる上、上記した通りほとんどがそもそも普通の謎解きアドベンチャーなら無かったストレスなので余計にイライラする。

そして、これらの問題点がすべて解消されたとして、アンニュイな雰囲気の謎解き脱出アドベンチャーとしてどうなのかと言えばたぶんそれでも面白くないというのも問題だ。

そもそも謎解き要素というのが、謎を解くことである程度世界やキャラが見えて来たり、シナリオが進行していかないと爽快感やゲーム性とのリンク感が薄れる

  • なのにアンニュイな雰囲気を重視してか多くを語らず、語る時もやたらとクサい言い回しでポエム的・小説的に語る上、目的もはっきりせず、そもそも世界観やキャラ、シナリオに関係のない謎解きが圧倒的に多く、謎解きゲームに必要な謎を解いた時の爽快感や達成感が微塵もない。
  • 謎を解き終わると消えるポイントもあれば残るポイントもあり、一度謎を解いたけどまた再訪する必要のある場所とそうでない場所も混在しているせいで、今どこまで謎が解けたのかがまったくわからないのも爽快感・達成感の無さに拍車をかけている。
  • 終わったのかどうかすらわからないせいで無駄に何度も調べてしまうなど虚無感や作業感まで生み出している。
  • リンゴを焼いた時にはSEが鳴るのに謎解きではSEが鳴らないのも爽快感の面でマイナス。

ヒントがヒントになっていない謎解きが散見されるのも問題。解いたけど意味不明というようなものも多く、スッキリしない。

  • ほぼ答えが見れる『コンパス』が最初から使用出来たり、ある程度ゲームを進行させると答えのまとめのようなものも貰えるが、そもそもそれだけ直接的に答えを出さないと意味不明というのが問題だ。

これは上記した『謎を解き終わると消えるポイントもあれば残るポイントもあり、一度謎を解いたけどまた再訪する必要のある場所とそうでない場所も混在している』というのもそうだが、全体的に導線が無さすぎるのが原因だろう。

  • 作者的には好きなところから自由に攻略できるゲームにしたかったのだろうが、答えを言わないと導けないほど導線が弱いのではそれは自由ではなく放任だ。
  • 導線が弱すぎて謎解きをしたいとすら途中から思わなくなった。

シナリオはどうかと言えば、答えが答えになっていないのを難しい言い回しや退廃的な雰囲気で誤魔化しているだけのシーンが多く、終始ふわふわしたまま進んでいく。そもそも主人公の記憶喪失すら必要だったか疑問なレベルだ。

  • すごそうなことを言っているように見えて実際は中身が無いシーンが多い。
  • 下記の通りキャラクター性が全く描けていないのが要因だろう。

キャラクターもほとんどが中身がまったくなく、絵と名前だけの記号的なものになってしまっている。イラストそのものは魅力的だが、キャラクターとしての魅力は皆無に等しい。

思うに、個人製作の悪い面が存分に出てしまっているのだろう。個人製作の作者は基本的にゲームのすべてを知っているし、すべてに手を出せる立場だ。知っている前提で作り、知らない人の目に触れる機会もないため、知らない人から見ると意味不明な部分が出てくる。

  • そもそも全体的なデザインが『作者の他の作品にも出ているキャラがなんかすごそうなことをやるのを面白いと感じる人がプレイする』前提になっており、これも知らない人のことを一切考えていない
  • そうならそうで別に構わないのだが、知らない人が避けられるようにタイトルをナンバリングにしたり、そうでないのなら知らなくても楽しめる配慮は必要だろう。身内のノリが外に出てきた的な不快感すら感じてしまった。

値段の安さに対してボリュームはあるが、プレイ体験が悪すぎるため良い方向に作用していない。

  • 謎解きの難易度に対して報酬が釣り合っていないものが散見され、ボリュームに対して実際のプレイ中の感覚は徒労感が強い。

 

まとめ

作者がやりたかったことは何となく伝わってくるものの、ローグライクやカード、謎解きといった各要素のリサーチや擦り合わせが徹底的に不足しており、おまけに自身の持ち味との食い合わせもあまり良くなく、結果として『なにが面白いのか』『どこを売りにしたいのか』が見えてこないゲームになってしまっている。

その上でストレス要素がまんべんなく散りばめられているためプレイフィールがすこぶる悪く、値段を加味しても前向きな印象を持てなかった。

かなり辛口な感想となったが、イラストやBGMなどの外見的な世界観構築、ある程度自由が利くであろう個人製作ならではのスターシステム的な手法、自由(本作は通り越して放任だが)な導線など、うまくゲームに落とし込めれば面白くなるであろう要素は押さえているため、まずはゲームの面白さについてしっかりとリサーチし、それを自分の世界観に取り入れていってもらいたい。

同作者の他の作品も非常に安価なため、応援の意味を込めて機会があれば遊んでみたく思う。

コメント

  1. test より:

    同じような感想をもってる人がいてよかった

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