【Steam】鈴蘭の剣 感想

鈴蘭の剣 タイトル画面 Steam
タイトル 鈴蘭の剣
プレイした機種 PC Steam
メーカー XD
満足度 C(満足できなかったが不満は小さい。)
要点
  • オーソドックスなSRPGとして確かなクオリティ
  • コンシューマ張りのプレイボリュームのゲームモード『運命の螺旋』
  • スマホゲームとしての快適性、課金導線の弱さ
  • 悪い意味でもオーソドックスなSRPG
執筆日 2024年8月8日

 

はじめに

鈴蘭の剣 タイトル画面

 

Steam版で現状実装済みのコンテンツを一通り、ある程度触るところまでプレイ。

中国の『XD』開発・運営のソーシャルゲームで、台湾・中国で先行してサービスインしていたものが日本版もリリースされた形となる。

  • 台湾版から日本版は約1年ほどの開きがある。
  • 中国版は台湾版と大まかな流れは同一ながらも多少駆け足気味に進行しているため、日本版も1年ズレではなくなる可能性はある。

ゲームとしてはオーソドックスなSRPG(タクティカルRPGとも)。ビジュアルや雰囲気は同ジャンルの名作『タクティクスオウガ』の影響を強く受けている。

  • とはいえ全体的な触感としては後述するソシャゲ要素を除けば至ってシンプルなSRPGであり、タクティクスオウガ味はあまりない。そちら方面で期待しすぎると肩透かしになる可能性はある。
    • 自ユニットを操りマス目を移動させ、敵ユニットを倒していくという基本に忠実なSRPGシステム。高低差や向きの概念、ロールごとの相性あり。戦闘不能によるキャラロストは無し。
  • キャラ(ユニット)は基本的にガチャ入手、ミッションでガチャで使用するいわゆる石をはじめとした報酬獲得、育成はスタミナを使って各種素材を集める、メインストーリーの進行もスタミナが必要、非同期PvP、スタミナ不要で高難易度のやり込みコンテンツといったふうにソシャゲ的な要素も押さえている。
    • スマホゲームとしては横持ちSRPGとなる。
    • タイプとしてはクエスト選択式のソシャゲ。メインストーリーは『1-4』『3-11』といった形でステージ分けされており、各素材ステージも素材ごとに別々のステージとなっている。
    • ホーム画面はプレイヤーの操作で自由に移動可能なマップになっており、家具や仲間を配置してカスタマイズできるルーム的な要素を兼ねている。

その他記載すべき事項としてはBGMには『タクティクスオウガ』で有名な『崎元仁』氏が担当。

  • この点ではタクティクスオウガ味があると言うべきか。

 

良かった点

スマホゲームながらオーソドックスなSRPGとして過不足なく遊べる内容になっている点。

  • 後述する細かい問題は抱えているもののSRPGとしての触り心地は良好で、基本無料で遊べる点も考慮すれば十分合格ラインと言えるだろう。
    • 中でも『運命の螺旋』と呼ばれるプレイモードは課金要素による差が出づらく、長く遊べるコンシューマ向けのゲームに近いプレイフィールになっている。
  • ソシャゲらしく、ステージも豊富に用意されている。
  • SRPGのためどうしても1ステージにかかる時間は長めだが、それでもスマホゲームとして長くなりすぎないようマップの広さや敵の数、勝利条件などの工夫が見られる。
  • 後述するように満足に遊べるようになるまでに時間はかかるが、環境さえ整えば日課は(この手のゲームにしては)軽め。

ピクセルアートと3D処理を組み合わせたグラフィック表現は最先端とまではいかないまでも、こちらも十二分に合格ライン。

  • SFC~PSくらいの、筆者のようなゲーマーには馴染みのあるドット絵は可愛らしく、SRPGというジャンルにも合っている。
  • ただ、『ドット絵風の古き良きJRPG系グラフィックのスマホゲーム』でいうと『ブラウンダスト2』辺りには及ばないレベル。ジャンルが違うとはいえ、グラフィック面を手放しに褒められるかというとそうでもないというのが現状。

 

不満点

『毎日触る』『長く遊ぶ』スマホゲームとして考えると、SRPG部分の難点は多い。

  • 演出の高速化ができるがそれでもかなり遅い。せっかく動作の軽いドット絵なのに活かせていないと言える。
  • オートモードも搭載されているが、AIは非常に頭が悪い。爆弾のギミックで平気で味方を巻き込んで壊滅させるし、あと1回普通に攻撃すれば倒せる場面でバフや回復を優先したり、まだ元気なタンクキャラを後ろに下げて柔らかいアタッカーを単独で敵陣に放り出したりとやりたい放題。
    • オート中は高速化状態で放置できるが、手動操作だと押しっぱなしにしないと高速化できないのも難点。
    • 攻撃すると敵味方問わず周囲のキャラクターに大ダメージを与える爆弾をはじめとしてステージギミックがやたらと多く強力な効果を持っているのもお粗末なオート機能と相性が悪い
    • オート云々は個人的にコンシューマならそこまで気にしない部分だが、やはりスマホゲームとなると重要度が高い部分であり、そこの評価が低いのは痛い。
    • 素材系のステージは条件付きだがスキップのような機能が用意されている。
  • 向きの概念があるにもかかわらず、戦闘中に向きの変更はできない。背面攻撃され放題である。
    • 一応、スキル使用画面にして向きたい方向にいるキャラクターを選択してキャンセルすれば向きだけを変えることができるが、面倒だし制限も多い。
  • ドット絵のグラフィックは十分にきれいだが、戦闘中の画面はややゴチャゴチャしており、特に密集している状況で敵味方の区別がつかない。
    • 低レアリティのプレイヤブルキャラがモブ風の見た目だったり、ゲストキャラとしてモブキャラが仲間扱いになるステージが多いのもこの問題に拍車をかけている。
    • 視点の回転もできないため、キャラの後ろに隠れているマスの操作がしづらいし、高低差が判りにくい場面もチラホラ。
  • 敵の攻撃範囲表示が不十分で、安全色のマスにいても攻撃を受けることがままある。
    • おそらく通常攻撃の攻撃範囲しか表示されていない。
    • 特に自キャラを引き寄せるスキルを持つ敵などでこの罠にかかりやすい。

スマホゲームとしての魅せ方にも難がある。

  • 本作には『愚者の旅路』という本筋のストーリーと、『運命の螺旋』というifストーリーが用意されているが、『愚者の旅路』は他のゲームで言うところのキャラクタークエストやサブクエストに当たるものを断片的に繋げたような内容となっている。
    • よく知らないキャラや勢力の話がはじまるため戦いの目的や背景が判りづらく、夢中にはなかなかなれない。
  • 対して『運命の螺旋』は時系列に沿って進んでいき、王道でわかりやすい展開が中心となっている。
    • 順番がおかしいが、実質的には『あのキャラはあの時こうだったんですよ』というネタバラシや、『運命の螺旋に出てきたあのキャラはこんな人なんですよ』というのをやっているのが愚者の旅路である。
  • このため、どちらかと言えば『運命の螺旋』の方が主軸のような扱いなのだが、ゲーム的には『愚者の旅路』がメインになってしまっているため、わけのわからないことになっている。
    • ちなみに『愚者の旅路』はスタミナ有り、『運命の螺旋』はある程度挑戦回数の制限はあるもののスタミナ無しとなっている。このことからも本来は『運命の螺旋』がメインとなるべきである。(昨今のスマホゲームはメインストーリーのスタミナ制が廃されているゲームが多い)
  • ソシャゲあるあるの『○○をクリアで△△解放』というようなものも『愚者の旅路』の方に設定されているため、特に序盤はどうしても『愚者の旅路』を中心に遊んでしまう。
    • 導線の作りやゲームの魅せ方が非常に悪い。どうしても没入度の低い『愚者の旅路』を先に遊ぶことになり、『運命の螺旋』を満足に遊べる段階まで時間がかかるため、そこまでに飽きて脱落するプレイヤーが多いのではないだろうか。
    • 2つ併せて遊ぶことでより物語を楽しめるというものなので、もう少し自然に相互進行していけるような作りにするべきだっただろう。
  • 誤解のないよう言っておくと、『愚者の旅路』も『運命の螺旋』もシナリオの内容自体はよくできている。
    • 歴史改変モノはいい加減食傷気味ではあるが、クオリティ自体は悪くない。
    • 特に『運命の螺旋』は実質スタミナ無しでボリュームも膨大、ローグライト的な遊び方ができるためこのモードを満足に遊べる段階まで続けられれば印象が大きく変わる。
    • と言っても、スマホゲームにこれだけのプレイボリューム…裏を返せばプレイ時間と労力を求めるプレイヤーがどれだけいるかはやや疑問。
  • ただ、日本語ローカライズは低品質。コロコロと口調が変わる主人公をはじめとして、違和感が大きく内容が頭に入ってきづらい。
    • 文章と音声が合っていないシーンも散見される。

また、課金ありのスマホゲームとして課金要素の魅力がない点も難点として挙げられる。

  • キャラのイラストは非常にきれいで、デザインもこの手のSRPGによく合ったものにはなっているのだが、2024年のガチャの景品として見た時のインパクトに欠ける。
    • 特に日本では、どうしても『肌の露出が多い女性キャラ』『わかりやすくイケメンな若い男キャラ』の売り上げが伸びやすく、そういったキャラがいないのは売上的に厳しそうという感想。
    • 3Dグラフィックや、イラストとは思えないほどよく動くゲームが世に溢れている現代において、ドット絵+動かないイラストの組み合わせは商品としてどうしても弱い。
  • 加えて、『愚者の旅路』の進行にガチャキャラの戦力はほとんど必要なく、『運命の螺旋』も持ち込み制限が激しいためガチャキャラのパワーで押すタイプのコンテンツではないと、性能面でも課金するほどの魅力を感じにくい。
    • 所謂『凸』もキャラを重ねなくても時間をかければ無課金で可能。優しいとも言えるし、徹底して課金するところが無いとも言える。
  • ユーザーが売り上げを気にしても仕方ない、課金しなくても遊べるのだから良いゲームだという意見もあるだろうが、売り上げが上がったほうがサービスが良くなる、売り上げが上がっているゲームのほうが安心して遊べる(サービス終了に怯えなくていい)と言う観点で『無課金でも遊べるけど課金したい人は気持ちよく課金できる』のが良いゲームだと筆者は思っているため、その点で大きな懸念点になっている。
    • この辺りも導線の作り方が悪いという部分に通ずる。

このゲーム独自の面白さや魅力に欠ける。

  • 良かった点である『オーソドックスなSRPGとして楽しめる』というのは、裏を返せば『よくあるSRPG』であり、この作品ならではの、この作品でしか味わえないような特徴が現状見えない。
    • 上記したガチャの景品としてのキャラクターの弱さもそうだが、数あるゲームの中からこの作品を選ぶ動機付けになる部分が無い。新作だから注目されているの域を出ない。
    • もちろんよくあるSRPGとして楽しめるのだから良いと言いたいところだが、このように難点も多く抱えているためフックが無いと楽しさを維持しにくい。

その他気になる点。

  • 序盤からスタミナの縛りが厳しく、満足に遊べる状態まで各要素を解放するのにかなり時間がかかる。
    • 他の多くのゲームでは序盤はスタミナが溢れすぎて逆に困るくらいのバランスにしている。
    • スタミナ回復も中国産によくある1日の回数制限付きでだんだん高くなるというもので、このタイプのゲームはスタミナを強烈に縛っても売り上げに繋がらないのだから(いくら課金しても回数制限があるので)、せめて各コンテンツ解放まではもう少し緩和すべきと思う。
    • こういった点がストーリー進行にスタミナを消費する『愚者の旅路』とかみ合わせが悪い。返す返すも『運命の螺旋』をメインにするべきであった。
  • 2024年にもなって曜日ダンジョンあり。『毎日やらせたいけどやりたい時にはやらせない』という、悪しきソシャゲ文化を引き継いでいる。
    • 上記スタミナ制限と併せて、たびたびストップがかかるため夢中が続かない。
    • 全体的な導線の悪さもあり、離脱率に繋がりそうな点である。
  • キャラの育成において、不可逆の要素がある。
    • 具体的には、キャラのレベルが5上がるたびにランクを1つ上げることができ、奇数ランク時に2つのスキルから1つを選んで習得する。
    • 選ばなかった方のスキルは貴重なアイテムを使えば再習得が可能だが現状易々と使える数の入手は難しく、基本的にはどちらかしか習得できないという認識で育成することになる。
    • 選んだスキルによって使い心地がかなり変化することもあるため、面白い要素ではあるもののソシャゲと相性が悪いシステムのように思う。
    • 『ガチャで出たキャラの育成を失敗したら戻せない』というのはなかなかシビア。
    • そもそもレベル等も1度上げれば戻せないしどのゲームでも基本は同じだが、本作はSRPGであり、このジャンルは難易度調整の妙で楽しませる面が大きいゲームのため、人によって育成状況に差がつくこと自体がゲームの面白さを損なう要因になりかねない。
  • 前述した通り台湾、中国ではすでに先行してサービスが始まっているため、少し調べるとそちらの情報が出てきてしまう。
    • この点は『先行版のおかげで安定してサービスインできた』『先行版の情報でガチャや育成の計画を立てやすい』といった良い面もあるし『先行版のせいでネタバレを食らった』『先行版情報で性能の低いキャラがバレてスルーされ売り上げが上がらない』といった悪い面もある。
    • 本作だけでなく、海外産のゲームではたびたびあることではある。

 

まとめ

オーソドックスなSRPGとして確かな完成度を誇り安定して遊ぶことができる一方で、スマホゲームとしてリリースしたが故の難点が目立つ形となり、現状は『SRPGとして普通に楽しめるけどソシャゲとしては続かない』というのが筆者の感触。

ゲーム自体の出来は決して悪くなく、売り方や魅せ方をもう少し工夫するだけで大きく化ける可能性はあるため、気になる人は触ってみてはいかがだろうか。その場合は『愚者の旅路』3章まで、どうか頑張って続けてもらいたい。

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