タイトル | 椿屋敷の亡霊 |
プレイした機種 | PC フリーゲーム |
メーカー | 腐乱ぼわーず |
満足度 | A(満足。たいていの場合お勧めできる。) |
要点 |
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執筆日 | 2024年10月7日 |
はじめに
DL版をクリアまでプレイ。
サークル『腐乱ぼわーず』開発の推理ノベルゲーム。『ノベルゲームコレクション』にて無料でプレイすることができる。
昭和初期の日本を舞台とし、探偵事務所に届いた死者からの手紙、謎の脅迫状、顔が潰された遺体、亡霊の目撃証言、謎が謎を呼ぶ事件の真相とは…というのがゲームのあらすじ。
- 基本はノベルゲームで、テキストを読み進めることでゲームが進行していく。
- 物語パートと推理パートを交互に進行していく。推理パートでは事件に関する資料等から得たキーワードを用いて考察メモを完成させることになる。
- 昭和ホラーミステリーとされているが、あくまでもミステリーが主軸。ホラー要素はかなり薄い。
- ホラー要素と言うよりは事件のギミックとして機能されている。ジャンプスケア等のホラー演出も無いためホラーは苦手だけど雰囲気に惹かれて…と言う人も安心して楽しめる。
- 主に遺体のスチルにて、軽度のショッキングな表現があるためそちらが苦手な人は注意が必要。
- ノベルゲームではあるが、選択肢等によるシナリオ分岐は無く一本道。
- 推理パートも正解するまで何度でもやり直せる。
ゲーム自体は完全無料だが、設定資料集が有料で販売されている。
- データ販売の他、現物の本としての販売も行っている。
- プレイしてみて気に入った人はお布施気分で購入してみるのも良いだろう。
良かった点
短編ミステリーとしてきれいにまとまったシナリオ。
- 分岐は無く、クリアまで3時間前後といったところ。2つの視点で語られる事件や各登場人物の交錯、事件にまつわるドラマ性などがしっかりと描かれており、短編ミステリーとしてよくまとまっている。
- 推理パートも普通に読んでいればすぐに解ける程度の難易度に抑えられており、難しくて先に進めないということはまずないだろう。
- 裏を返せばゲーム性が弱いということでもあるが、プレイヤーを捜査に介入させ適度な没入感を演出しつつシナリオを楽しむ邪魔をしないという意味でちょうどいい塩梅に感じた。
- テキストもよく、語るべきところをしっかりと語りつつ冗長にならないようになっているため、序盤から退屈せず、世界観に惹き込まれる。
- ミステリー系のノベルゲームは事件が発生するまでの序盤が退屈になりがちだが、本作のシナリオはテンポの良さや演出、特に序盤に濃く描かれる人間関係のドロドロ感により序盤に退屈さを感じなかった。
- 探偵と助手のキャラクター性も良い意味でシンプルでわかりやすく、この点もプレイヤーが序盤から作品世界にスッと入っていけるよう機能している。
昭和感の演出が良くできており、世界観に惹き込まれる。
- イラストやテキストにより、舞台となる昭和初期の日本が繊細に描かれている。
- BGM・SEはフリーのものが使用されている。世界観やシーンにマッチしたものが採用されており、こちらも演出の強化に一役買っている。
- 3時間前後というプレイ時間に対してイベントスチルの枚数は多め。フリーゲームとしては十分すぎる演出ボリュームと言える。
完全無料のフリーゲームながら、オートや高速スキップ、バックログなどノベルゲームを快適に遊ぶための各種設定はしっかり揃っている。
- 条件を満たせばイベントスチルのアルバムや章ごとのジャンプ機能も解放される。
不満点
ノベルゲームという媒体が事件にまつわるトリック(ギミックとも)を活かしきれていない。
- ネタバレになるため詳細は言えないが、このシナリオに対して『純粋なノベルゲーム』というジャンルがベストマッチだったかは疑問が残る。
- フリーゲーム故にゲーム性について贅沢は言えないが、純粋なノベルゲームであるがために、トリックのインパクトが少し弱くなってしまった感は否めない。
- そも、トリック自体は特別目新しいものではないこと、伏線が丁寧すぎて逆に普通に読んでいると割と簡単に予想できてしまうというのも一因。
- これらの点や推理パートの難易度の低さにより、重厚で複雑な高難易度ミステリーを期待していると肩透かしに感じるかもしれない。
- プレイ時間の短さも相まって、少々物足りなさが残ってしまったのが正直なところ。
- 繰り返すが、フリーゲームとしては十分すぎるボリュームとクオリティではある。
- 上記したように世界観や人間模様、事件にまつわるドラマが非常に丁寧に描かれているため、そういった方向を重視する人なら間違いなく楽しめるだろう。
一部、投げっぱなしや活かせていないように感じてしまった設定が見受けられる。
- 双子や蓉一朗など。
- とはいえ全体的に綺麗にまとまっているためそこまで気になるわけではなく、重箱の隅をつつく程度のものと言われればその通りではある。
- ここまで拾って逆に冗長になってしまっても問題ではある。
まとめ
3時間程度で遊べる短編ミステリーとして綺麗にまとまった作品。分岐も無く、まさに小説を読むような気分で読み進めることができるだろう。
ラストがやや弱くどうしても物足りなさは残るが、丁寧な世界観描写や人間模様によりミステリーノベルゲームとしては珍しく序盤が強いという特徴を持つ。
トリックやギミックの難解さ・派手さを求める人よりは、そういった緻密な世界観・人間模様に魅力を感じる人に非常にオススメできる一作だ。
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