【Switch】ユニコーンオーバーロード 感想

ユニコーンオーバーロード タイトル画面 Switch
タイトル ユニコーンオーバーロード
プレイした機種 ニンテンドーSwitch
メーカー アトラス/ヴァニラウェア
満足度 S(とても満足。自信を持ってお勧めできる。)
要点
  • 60を超える魅力的な仲間キャラクター
  • ユニットとRTS要素、行動条件による新しいSRPG体験
  • 丁寧に作り込まれたゲームデザイン
  • 丁寧に作り込まれすぎてやや窮屈さアリ
  • キャラゲー面では痒いところに手が届かない感
  • シナリオは凡
執筆日 2024年5月10日

 

はじめに

ユニコーンオーバーロード タイトル画面

Switch版で難易度タクティカルとゼノイラでクリア後のオマケまでプレイ。『十三機兵防衛圏』や『オーディンスフィア』などでおなじみのアトラス×ヴァニラウェア開発のSRPG。

  • ジャンルとしてはSRPGとなっているが、『ファイアーエンブレム』シリーズ(以下FEシリーズ)のようなターン制・マス目式のオーソドックスなものではなく、SRPGとRTS(リアルタイムストラテジー)、そして『ファイナルファンタジー12』のガンビットを融合させたようなゲーム性となっている。
  • FEシリーズのような1キャラVS1キャラではなく、敵味方共に最大5人のチームを1ユニットとして扱い、ユニット同士でバトルを行う。
  • 例えば前衛に壁役のカタフラクトやヴァンガードを置き、後衛に魔法アタッカーのウォーロックや強力な範囲攻撃ができるグリフォンルーラー、そして消耗した壁役を回復するためのビショップを配置するといった具合だ。

各ユニットは指定した地点まで自動でリアルタイム移動を行い、敵ユニットと接触すると戦闘が開始される。

  • 戦闘もオートで行われ、それぞれのキャラクターは基本的に行動速度順に行動するが、各キャラごとに複数のスキルを持ち、それぞれ『戦闘開始時に発動』『敵に攻撃される前に発動』『他の味方が攻撃する時に発動』など発動タイミングが決まっているものもあり、敵味方さまざまなスキルが入り乱れることになる。
  • そういった多様なスキルの1つ1つにあらかじめ『敵ユニットに重装系のキャラがいる』『HPが50%以下の時』『1巡目の行動時』など条件を設定してプレイヤーの好みの行動順・内容になるように調整していくのが本作のバトル・編成構築の醍醐味となっている。

そんな戦略SRPGとRTSとガンビットをハイブリットしたようなバトルパートをメインとし、間に2Dデモシーンのシナリオパートや、通常のRPGのようにマップ内を歩いて探索する探索パートが差し込まれる形でゲームが進行していく。

  • ジャンル自体はSRPGと銘打っているだけあり、親密度会話だったり、最初から高レベルの老騎士枠、2色ナイト、3姉妹などの『お約束』要素もしっかり網羅している。

 

良かった点

個性豊かなキャラクターが魅力的。一部、モブに毛が生えた程度のキャラデザの者もいるものの、メイン級やそれに近い立場のキャラクターに関しては見た目もキャラクター性も魅力バッチリだ。

  • というよりは、このゲームではモブ側がネームドキャラに寄せたデザインになっている。

それでいて、60人以上のネームドプレイアブルキャラクターすべてにおいてクセのあるキャラ付けはほとんどされておらず、いい意味で王道ドストライクなキャラ付けになっている点も個人的には高評価。

  • 変に外した個性を持つキャラがいないため、安心して推せる。

そしてそれら多彩な魅力を持つキャラクター達を存分に活かすことができるバトルシステムも非常に面白い。

  • カードゲームでデッキを組んでいる時のような・或いはポケモンで対戦用のパーティを組んでいる時のような楽しさがあり、ゲームを遊んでいない時でもついつい『この編成にあのキャラを入れてみたらどうだろう』と考えてしまう。
  • 組み合わせの楽しさを補佐する要素としてスキルを習得できる装備や、好きな汎用クラスのモブ傭兵を雇い、本来なら1人しかいないクラスを複数人編成できるといった要素もあり、組み合わせは本当に多種多様だ。
  • 各スキルの条件付けを考え、いざ実戦で想定通りにシナジーを発揮した時の快感はあらゆる細かい不満点を吹き飛ばしてしまうほどの強烈な魅力がある。

1つのユニットであらゆる敵に対応するのがほぼ不可能なように調整されているのも、やりがいを高めるのに良い方向に作用している。

  • 主人公だけは万能最強キャラ感がある性能になっているが、それでも主人公含めた5人のユニットであらゆる敵編成に勝利するのは(その都度組み替えるとかは無しで)難しく、それゆえに各ユニットごとに方向性を定め、欠点も織り込んで部隊を編成するのは楽しかった。
  • とはいえ多くの場合互いをカバーし合う2ユニットを一緒に行動させることで解決はするため、考える楽しさを確立しつつもそこまで難しく考えなくても感覚的にゲームとして成立するバランスに仕上がっており、よく作り込まれている。

シナリオ上のバトルである程度クラスやユニットごとの得手不得手・強弱関係が理解できるようになっているのも導入として素晴らしい。

  • シナリオバトルだけでなく、各施設(砦)にもクラスごとの特性や組み合わせ方などを話してくれるNPCが多く配置されており、とにかく『普通にゲームを遊んでいれば戦い方や考え方が身につく』よう丁寧に作られている。
  • このため複雑なゲーム性でも不親切さは全く感じなかった

また、複数人からなるユニットの仕様により、関連性の高いキャラ同士を組み合わせて戦うキャラゲー的な遊び方にも対応。

  • 通常のターン制SRPGのように単に並べて使うだけでなく、同じチームで一緒に戦っている感が嬉しいプレイヤーも多いだろう。
  • 関連性のあるキャラに性能面でも多少のシナジーがあったり、互いの弱点をカバーし合う関係が多いのもこの特徴を後押ししている。
  • これにより、SRPGによくある難点である『仲間の人数は多いのに同時に使えるキャラはせいぜい10人前後』という問題点もある程度解消している。

シナリオ演出のデモシーンや探索パートはメインとなるバトルパートの邪魔にならず、かつバトルばかりで疲れない程度のちょうどいいバランスになっている。

  • 探索パートはそれ単体だと非常に簡素なものだが、あくまでもバトルとバトルのインターバルであるため、ここを軽めにしたのは良い判断だと思う。

2Dグラフィックのデモシーンも非常にきれいでよく動く。世界観やキャラクターの魅力を最大限に引き出せており、古臭さは全く感じなかった。

  • テキストの出来も(文学的にではなくあくまでゲームのものとして)秀逸で、短い文章でしっかりとシナリオやキャラクターを表現できている。
  • グラフィック上の女性キャラの一部表現が過剰ではあるが、それを不快に感じないようテキスト面でよく配慮されており『そういう要素』の需要と供給、そしてそれを嫌う人への配慮が良いバランスで出来ているように感じた。

リアルタイムと聞くとやや難しそうに感じるが、適時進行を止めながらプレイできるため長考も可能。

  • ゲーム性的に眺めているだけの時間や繰り返しになる場面が多く存在するが、倍速やスキップといった現代的な配慮も行き届いており、全体的に操作性もよく快適に楽しむことができる。

キャラクターや用語についてシナリオ上で語られない補足設定をいつでも閲覧できる機能も完備。

このゲームのメインの武器はキャラクター性とバトルの楽しさであり、他の要素はそれらを引き立てつつ邪魔しないようにするという調整が細部まで徹底されている。作品の長所を理解し、取捨選択がしっかりと出来ている。

 

不満点

多彩な能力を持つ仲間の組み合わせと敵との嚙み合わせを楽しむゲームではあるのだが、一定以上の強さと汎用性を持つ組み合わせや戦法のほとんどが所謂『デザイナーズコンボ』と呼ばれるような、明確に組み合わせて使うことを想定して実装されたと思わしきものばかりなのが気になる人には気になるだろう。

  • エルフアーチャーやネコミミ、賭博士のコインなんかはいかにも悪さしてねという性能になっている。
  • そもそも普通に遊んでいると前衛を安心して任せられるキャラ(クラス)が少なすぎるのも、デザインされた強力なコンボで敵ユニットを壊滅させること前提の調整とも捉えられる。

良く作り込まれているからこそ、どこまでいっても製作者の想定の内側でしか遊べないと感じてしまうのは、こういったゲームでは窮屈さや物足りなさにつながる人もいると思われる。

  • 製作者も思いつかないトンデモコンボを生み出したい、そういった点に楽しみを見出す人にはやや向いていないと思われる。

非常に多くのキャラクターがプレイアブルキャラとして仲間になるが、クラスの偏りが結構ヒドイのは気になる。

  • 固有クラスと呼ばれる専用のクラスは仕方ないにしても、ヴァイキング・バーサーカー・シールドシューター・ドゥームナイト・ウォーロック・ソーサレス・ドルイド・ワイバーンルーラー・4種類の獣人系クラス・ソード以外の3種類のフェザー系クラスと非常に多くのクラスが汎用クラスなのに1人しかネームドキャラがいない、半固有クラスのような存在になっている。
  • こういったクラスもモブ傭兵のシステムによって複数人編成できるとはいえ、これだけの人数仲間がいて、これだけ多くのクラスがある中でここまで多くのクラスが1人しかいないのは疑問に感じてしまった。
  • モブ傭兵が好きな人も多いだろうが、キャラゲー的な側面を持っているからこそなるべくネームドキャラを使いたい人も多いだろう。

特に獣人系とフェザー系はほとんどのクラスが1人しか存在せず、いずれもストーリー終盤での加入に集中している。

  • 性能的にも他のクラスで見たことがあるような能力に時間帯での強化といった戦術ゲーム的にあまり面白くならない要素をつけ足しただけのものなど、シナリオ上出てくるから無理やり用意した感が漂ってくる。
  • 推奨攻略順上さきに出てくるエルフ系のクラスはしっかり人数が確保されているだけに、余計に目立つ。
  • もちろん獣人も天使もストーリー上しっかりと存在感があるため少なくともシナリオでの必要性を疑うことはないが、ゲーム的には無くても面白さはそう変わらない程度に落ち着いてしまっている印象。
  • といっても敵として出てくるフェザーボウとフェザーシールドはとても強くて存在感があるのだが…

ほとんどのクラスが、クラスによって性別まで決まってしまっているのも少々不満。女性のヴァイキングやカタフラクトも見てみたかったし、ワイバーンルーラーやドルイドは男性でも問題はなさそうだが…

  • この辺はせっかくモブ傭兵があるのだからネームドキャラとしてはどちらかの性別しか存在しないとしても、モブとしてなら別の性別にもできるようにしてほしかった。
  • 納期やコストの都合で別性のグラフィックを用意できなかったのだろうか。

敵キャラの多くがモブグラフィックなのも令和の時代のフルプライス作品としてはやや気になる。少し逸れるが、騎馬など体の大きいキャラを編成すると並び順次第で他のキャラが見えなくなってしまうのも難点。

シナリオは非常に平坦で上がりもしないし下がりもしない。

  • よく言えば安心して読めるが、悪く言うと常にどこかで見たような展開で盛り上がりに欠ける。
  • またところどころで主人公たちと恩赦の判断が合わない場面があり、『え、こいつこんなあっさり殺すの…?』『あ、こいつは生かすんだ…?』みたいな場面がチラホラあり、没入感はあまりなかった。
  • あからさまに敵側の知能が低すぎる場面もあったりと少々台本ありき感を隠せていないが上記したようにテキストが良いため小不満程度。

特にバトル面で非常によく作り込まれているだけに、長い終章の途中でのしょうもない初見殺しはかなりガッカリした。

  • 不満としては決して大きなものではないが、終章の盛り上がるロケーションに水を差された感覚がプレイ後にも尾を引いてしまった。
  • クリア後の要素が最近のゲームとしてはやや控えめなのも、ゲームが良くできているが故にもったいない。

あとは細かいが、フィールド探索時に町や砦などの施設、アイテムが入手できるポイント、話しかけられる人物などが近すぎて誤反応を起こすことが多かった。

  • 各種サブクエストを筆頭に、手間や難易度と報酬が釣り合っていないものもチラホラ見受けられる。本当にキャラクター性とバトル以外はオマケというスタンスが徹底されている。

 

まとめ

SRPGというジャンルに新たな風を吹かせる革新的なタイトルだったと思う。新規IPゆえの粗さや詰めの甘さは見受けられるものの、全体的によくできた秀作。

発売順と遊ぶ順番が逆になってしまったが先日感想を投稿したDREAM TACTICSと併せてSRPG+デッキ構築的な楽しさと簡素なマップ探索は相性が良いと感じた。

一般的にSRPGと聞いて想像するゲーム性とは大きく異なるため、まずは体験版などで確認する必要はあるだろうが、キャラクターのビジュアルやゲーム性に惹かれた人はプレイして損はないだろう。

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