タイトル | 漂流傭兵 WANDER HERO |
プレイした機種 | PC Steam |
メーカー | Dimension Travler |
満足度 | B(やや満足。条件付きでお勧めできる。) |
要点 |
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執筆日 | 2024年8月30日 |
はじめに
主人公のクラス3種類すべてで一通りクリア+クリア後もやり込みまでプレイ。
『Dimension Travler』開発、自キャラのアイコンを引っ張って射出することで攻撃し、ランダム入手のカードで追加の攻撃や補助を行うバトルが特徴のピンボール・ローグライトカードゲーム。
- ピンボール(おはじきとも)のように敵や壁に当たると跳ね返り、勢いがなくなって停止するまでに当たったすべてのものに影響を及ぼす。
- 基本は主人公のユニットだけが戦場に登場し、他の仲間はカードから召喚することで戦場に現れ操作可能になる。
- 仲間にはコストが設定されており、コストを超えて連れていくことはできない。
- 後述するが、モブキャラクターはその戦闘中戦死しない限り戦場に残り続け、ネームドキャラ以上はターン終了時にカードに戻る仕様となっている。
- カードの主な入手手段はバトル勝利時に複数枚からランダム入手。主人公のクラスに応じた専用カードとすべてのクラスで排出される共有カードが存在する。
- 主人公のクラスはゲーム開始時に選択。直接攻撃が得意な戦士、非接触の遠距離攻撃が得意なレンジャー、魔法による範囲攻撃が得意な魔道士の3種類。
- クラス自体は他にもサポート役の支援、タンクのガーディアンが存在するが主人公をこれらのクラスにすることはできず、仲間専用。
- カードはピンボールとは独立した行動手段となっており、射出を伴わない攻撃や、回復・防御・サポート効果を持つ。
- カードにはコストが設定されていて、コスト分の行動値を消費して使用する。行動値は毎ターン開始時に全回復。
ローグライト要素として様々な要素が採用されている。
- 主人公のレベルアップで上昇するステータスはランダムで排出される4種から選択。
- 行動値や連れていける仲間の上限を上げるなど直接戦闘に関わる能力の他、仲間の好感度を稼ぎやすくする魅力、装備作成要素のアンロック条件の鍛冶など直接戦闘には関わらないがゲームを有利に進める能力など様々。
- 上記したがカードの入手もランダム。
- 仲間になるキャラもランダム排出。酒場で募集をかけるとランダムなキャラが一覧に表示され、仲間にしたいキャラを選択する。
- モブキャラ<ネームド<特殊ネームドの順でレアリティも性能も高い。
- ネームド以上はソシャゲのガチャSSRのように低確率排出。ソシャゲではないため課金の必要が無いのが救いか。
- 販売ページでやたらとハーレムが強調されており、ネームド以上のキャラはすべて女性。
- 面白いのが、ネームドキャラと主人公のグラフィックがランダム選択できる点。
- 実際には無数に用意された(おそらく)AIイラストからいつでも変更できるという形だが、飽きさせない・或いはロールプレイに貢献している要素と言える。
- また、自分で用意した画像を使用することも出来る。
- 戦闘不能になったキャラはロスト。(難易度設定で変更可)
- 街や城の施設や売り物もランダム、クエストの発生もランダム、クエストで訪れるダンジョンのマップや入手できるアイテム類もランダムと、とにかくランダムにできそうなところはだいたいランダム。
- あらゆる点がランダムな中で様々な編成、ルートでゲームクリアが可能となっている。
- ローグ要素とは少し違うがランダム要素の面で、ちょっとした領地経営要素も採り入れられている。
- 街によって同じ物でも販売価格が違ったり、敵の進行によって施設が破壊されたり、街への貢献度によってバフが発生する等。
ストーリーはほぼ無し。
- 主人公が特殊な力を授かって異世界転生したっぽいこと、一定周期で魔王が降臨するので頑張って倒すということくらいしかない。
- 何度か魔王を倒すとクリアとなる。
以前『BDGames』から販売されていたものと同一の作品。
- パブリッシャーに問題が発生したため、別物として再リリースした形となる。ゲーム自体や開発に問題はない。
良かった点
ピンボール+ローグライトカードバトルの出来が良く、ありそうでなかった面白さを感じられる。
- 『モンスト』や『スレスパ』などどちらか一方の要素に絞れば元ネタとなる作品が存在するが、両方を組み合わせそこに領地経営やAIイラストによるランダムキャラの要素を盛り込んだデザインは十分に独自性があり、『スレスパ風カード+α』の作品として満足のいくクオリティと言える。
- ちなみに一部のイラストはグラブル風。さまざまなゲームのキメラ的な作風だが、概ね良い方向に作用していると感じる。
- エフェクトや効果音による爽快感もバッチリ。
- ピンボール射出に連動する追撃やカード使用に反応するスキル、組み合わせて使うことを想定された各種カード、そしてそれらを前提とした敵のデザインにより戦略性も十分。
- 敵デザインで単純なところで言えば接触すると反撃ダメージを与えてくる敵に非接触の遠距離攻撃で対処したり、逆に遠距離攻撃を防ぐシールドを纏う敵には接触近距離攻撃で攻撃するなど。
- カードの組み合わせでは例えば1ターンだけ攻撃カードのコストをすべて0にするカードと、攻撃カードを使うとコピーが生成されるカード、そのターン中に使った攻撃カードの枚数で攻撃回数が増加するカード、各種追加ドローを組み合わせて1ターンで大ダメージを狙うなど。
- 様々なビルドを試したくなる程度には豊富に敵やステージ(ギミック)が用意されており、中毒性や遊び応えは抜群。
その他良かった点
- BGMやSE、各種エフェクトなど演出面は良好。
- テンポ面も軽快でついつい長時間遊んでしまう。
不満点
あらゆる面で説明不足かつ導線も弱い。常に手探りのプレイとなり面白さにたどり着くまでが遠い。
- 最初に簡単なチュートリアルがある他、用語辞典のようなものもあるが全く不十分。
- そもそも用語辞典に載っていないゲーム内用語も多いため機能していない。
- ゲームが始まって何をすればいいのかもわからないまま放り出される。
- 一定周期で魔王が復活する世界で、あらゆる行動でゲーム内時間が経過するので魔王が復活するまでに魔王を倒せるだけの戦力に鍛え上げるというのが基本的な目標なのだが、それすらまともな説明が無い。
- キャラクターの成長やカードの強化、装備品や全員に効果を発揮するアーティファクトなどの強化についても説明がほとんどない。
- クエストの難易度によってキャラやカードの育成に制限がかかる仕様の説明が無いため、気づかず簡単~普通のクエストばかり受けて成長しないまま時間を浪費しやすい。
- 大半のプレイヤーは意味不明なまま手探りで進め、魔王の強さに愕然とするだろう。
- そして魔王よりもはるかに強い、突発イベントで戦う街のチンピラ盗賊団。頼むから世界のために戦ってほしい。
- 魔王に限らず難易度自体が高め。システムや定石を理解するまではできる限り難易度を下げて遊ぶ方が楽しめるだろう。
- ローカライズは完全に機械翻訳。言わんとしていることはギリギリ理解できるレベルではあるが、この点も説明不足問題に無関係とは言い切れない。
- 領地経営的なシステムであったり、キャラクターとの交流であったり、あらゆるシステムが当然のように説明なしで立ち並ぶ。
- キメラゆえに多少複雑なシステムであり、もう少しフォローが欲しかったところ。
- これらのシステムを理解出来さえすればしっかり面白いため、かなりのスルメゲーと言える。ハードルは非常に高い。
高レアキャラクターの排出率が低すぎる。
- 特殊ネームドの排出率があまりにも低い。ソシャゲのような課金要素というわけでもないのに不必要に絞りすぎている。
- その上数も多い。この部分だけソシャゲのガチャをそのまま切り取って持ってきたような印象を受ける。
- 通常のネームドすらほとんどお目にかかれない。
- これ以外の運要素については特に不快感なく、『ランダム性が楽しい』『ローグらしいありものでやりくりする感』の範疇に収まっているため、この点だけ非常に残念。
その他の不満点。
- 戦闘は基本ターン制だが、一部こちらのターン中にも行動してくる敵がいる。これらの敵の行動パターンが判りづらい。
- カウントがされていて、こちらのキャラを動かすたびにカウントが減るため0になったら動くのかと思いきやそうでもない。
- また、ターンに関わらず常に動き回っている敵駒も存在するが、動きが早すぎてステータスが見られない。
- 敵味方が入り乱れる乱戦ではキャラのアイコンが重なってしまいどこにいるかわからなくなる。
- 敵アイコンが大きく、長期戦・総力戦になりやすいボス戦で顕著。
- ピンボール射出時に表示される軌道予測がほとんど当てにならない。
- 射出時の正確性に関わる『精度』に加え自身のスピードや貫通力、敵の反発力など軌道に関する要素が多すぎるため。もう少しシンプルで直感的にした方がピンボールの楽しさが向上したように感じる。
- 状態異常があまりにも強すぎる。
- 行動制限系の状態異常が非常に多く、一度発生すると数ターンまったく動けなくなる上、ピンボールがゆえにどこで貰ったのかもわかりづらく対策が難しい。
- 状態異常を多用するボスやステージが、同難易度の他のステージと比べて難しくなりすぎている。
- 敵がひたすら大量に配置されただけのステージが多すぎる。
- 適度な数、頻度なら強力な範囲攻撃や鍛え上げたピンボールの一撃で爽快感が得られるが、数も頻度も多すぎて面倒さが勝る。
- ローグライトゆえ周回プレイが前提となるが、1周のプレイ時間があまりにも長くどう考えても周回するゲームの作りではない。
- 通常は1回魔王を倒したらクリア、高難易度のエンドレスモードで何度も魔王が出現する、といった形の方が自然に周回の流れが作れたのではないだろうか。
- AIイラストは少し前にありふれていた絵柄で、今となってはややクオリティが低い。
- タイトル画面だけ異常にチープで出鼻を挫かれる。
まとめ
モンスト風ピンボール(おはじき)+スレスパ風ローグライトカードゲーム+グラブル風キャラデザ+その他経営要素など…キメラのような作品だが、うまくまとまっており独自の面白さを確立している。
ローグライトとして重要な時間を忘れて遊んでしまう中毒性、ビルドやクリアまでのルート選択を楽しむ戦略性は高いレベルで再現されており、難易度も高めで遊び応えは十分以上。
しかし説明不足と導線の弱さ、機械翻訳文章がこのゲームを真っ当に楽しむ際の『壁』として立ちはだかる。ちょっと触ってすぐに夢中になるタイプのゲームではなく、ある程度自発的に根気強く遊ぶ必要があるため多少人を選ぶきらいはある。
『壁』を乗り越えられれば、『スレスパ風カード+α』の選択肢の一つとして非常に魅力的な作品となるだろう。総じてスルメゲーなので、覚悟のうえで遊んでもらいたい。
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