【Switch】ワイズマンズワールド リトライ 感想

ワイズマンズワールドリトライ タイトル画面 Switch
タイトル ワイズマンズワールド リトライ
プレイした機種 ニンテンドーSwitch
メーカー シティコネクション/GRAVITY
満足度 C(満足できなかったが不満は小さい。)
要点
  • 見た目の変化も楽しい育成要素『アニマフュージョン』
  • 良質なBGM
  • レベルデザインに問題を抱え、楽しさを序盤ですべて消費してしまっている
  • 圧倒的作業感
執筆日 2024年6月4日

 

 

はじめに

ワイズマンズワールドリトライ タイトル画面

Switch版でエンディングまでプレイ。ニンテンドーDSの原作版は未プレイ。

『ワイズマンズワールド リトライ』は、2010年にニンテンドーDS用ソフトとして発売された『ワイズマンズワールド』に、新規イラストやBGMを追加し、DS用の2画面を現行機向けの1画面用に再構築、追加要素なども加えたHDリマスター(リファイン)作品。

ニンテンドーDSの原作版はジャレコより発売されたが、発売後に倒産。本作はライセンスを引き継いだシティコネクションからの発売となる。

  • ニンテンドーDS版当時のキャッチコピーは『あの頃の”RPG”をもう一度』。つい最近もどこかで聞いたようなキャッチコピーだ。

ゲームシステムとしてはオーソドックスなターン制コマンドバトルRPGがベースとなっている。

  • 敵とのエンカウントはシンボル方式。複数の敵シンボルが近くにいる状態でエンカウントするとまとめて連戦になり、取得経験値やアイテムのドロップ率などに連戦ボーナスが発生する仕組みも採用されている。
  • 戦闘中、画面上部には各キャラの行動順を示すタイムラインが表示されている。各キャラ素早さを基準に、消費の重い行動をとると次の行動が遅くなり防御や通常攻撃など消費の軽い行動なら次回の行動が早く回ってくる。
  • 変動する行動順を活かしたシステムとして、仲間内で連続攻撃することでダメージUPなどの恩恵を受けられるチェインシステムが採用されている。
  • それ以外はMPやSPを消費してのスキル攻撃、火水地風の4属性による相性、毒や麻痺といった状態異常を駆使して戦い、敵全員のHPを0にすれば勝利、逆に仲間全員のHPが0になれば敗北。まさに伝統的なコマンドバトルとなっている。
  • HPとMPは戦闘終了時に全回復する。連戦時は途中で回復しない。また、仲間のSPは回復しない。(主人公のみMP、仲間のホムンクルスたちはSPを使用する)

特徴的なシステムとして『アニマフュージョン』というキャラクター育成要素が挙げられる。

  • 主人公を除く仲間3人は、バトルで集めた敵モンスターの魂と融合することで姿を変え、属性やステータス、使用できるスキルが変化する。
  • 仲間3人にはレベル上限があり、敵モンスターの魂との融合を繰り返すことでレベル上限が上がっていく。
  • また、ストーリー上あとに訪れるダンジョンのモンスターの魂のほうがより強力な姿に変身できるため、上記のレベル上限の件と併せて、基本的にはどんどん新たな姿に乗り換えていくシステムになっている。
  • 全く同じモンスターの魂と繰り返し融合することで姿を変えずにステータスだけを強化することも出来る。見た目が気に入った姿などあればこの方法で(かなり手間はかかるが)ストーリー終盤で手に入る魂と遜色ない能力に鍛え上げることも出来る。
  • 魂との融合時に、モンスターの落とす素材アイテムを同時に融合させることでステータスの更なる強化や、スキルの追加を行うことも出来る。素早さの遅い魂の素早さを補ったり、回復スキルを追加したりといった使い方ができる。
  • また融合時には、スキルの継承も可能。融合前に習得していたスキルから選択して引き継ぐことができる。

基本的には拠点となる街『ウィザレスト』でシナリオクエストを受け、各ダンジョンを探索。ダンジョンボスを倒すことでクエストが進行し、新たなクエストを受けて新たなダンジョンへ…という流れの繰り返しとなる。

  • シナリオ進行のキーとなるメインクエストの他に、街の住人の困りごとを解決するサブクエストも用意されている。
  • それぞれのダンジョンはプレイヤーの行動により崩壊したり再生したりして様相が大きく変化する。具体的には『再生⇔通常⇔崩壊⇔大崩壊』の4段階で変化し、進めるルートや行ける場所、入手できるアイテムや敵シンボルの配置まで変更される。
  • 再生状態はストーリー終盤のイベントまで解禁されず、それまではいくら条件を満たしても通常止まりになる。なお、変化の条件についてもこのイベントで示唆される。
  • ダンジョン内には『魔力特異点』と呼ばれる地点が存在し、ダンジョン内で入手できる『起動石』を使用することで以後、ダンジョンから出ても魔力特異点から探索を再開することができる。
  • メニュー画面からいつでも街に帰ることができる。上記の魔力特異点を起動してから街に帰り、アイテムの補充や新たに入手したモンスターの魂との融合などを行い、再びダンジョンに戻る…という流れを取りやすくなっている。

ストーリー設定は、外界から隔離された街『ウィザレスト』に住む記憶を失った人々が、記憶を失っても使うことができた魔法の力を用いて外の世界を目指していく…というもの。

  • 主人公クラウスの魔法の師であり母親代わりでもあるジゼルがある日帰ってこなくなり、その痕跡と外の世界への手がかりを目指して、彼女の残した3体のホムンクルス(人口生命体)と共にダンジョンに向かう。

 

良かった点

3体のホムンクルスと敵モンスターの魂を融合させて新たな力を得る『アニマフュージョン』が楽しくやりがいがある。

  • 取り込んだ敵モンスターの種族(スライム系とか、ドラゴン系とか)により、ホムンクルスたちの姿が大きく変化する。かっこいいものから可愛い系、ちょっとセクシーなもの、ちょっと不気味系なものまで、『モンスターと人型のホムンクルスの融合』という要素をうまくデザインにまとめ上げており、新たな姿を見るのが楽しい。
    • 上述したように基本的には後から手に入った魂に乗り換えていくことになるため、姿の変化が頻繁に行われるのもいい方向に作用している。
  • 魂は132種類。ポケモンのようなゲームと比較すると2010年基準でも少ないが、通常のRPG作品のキャラクター育成要素としては十分に多い数と言える。
    • と言っても融合した姿が132種類あるわけではなく多くは同型の色違いになるため、姿の変化を楽しめるのは序~中盤あたりまで。
  • ただし、後述するが問題点も多い。このシステム自体の問題点というよりはゲーム全体の問題点のしわ寄せがここに来ているという感じ。

グラフィックもレトロ調のドット表現として良好。

  • キャラクターはすべてドット絵。戦闘中のドット表現はSFC辺りのグラフィックを彷彿させる。
  • 背景グラフィックもHDリマスターに伴い綺麗になり、特にダンジョン周りに関しては崩壊時の異形な姿、再生時の美しさといった変化をより印象的にしている。

BGMはすべて良質。世界観に合ったすばらしいBGMの数々がゲーム体験を盛り上げてくれる。

  • ダンジョンでは再生・崩壊などの状態ごとに違うBGMが用意されている。どれもダンジョンの雰囲気に合っており、変化を盛り上げてくれる。
  • ゲーム内でサウンドテストも用意されている。BGMに力を入れていることが伺える。

 

不満点

楽しさのピークが序盤に置かれてしまっており、ボリュームに対して退屈な時間が非常に長い。

  • クリアまで途中寝落ちした時間も含めて25時間くらいだが、ゲームを構成するあらゆる要素で楽しさを維持するレベルデザインができておらず、序盤の終りくらいからは作業的にゲームを進行していくことになる。
  • ゲーム開始早々に3人のホムンクルスと合流し、以後4人パーティで固定となる。アニマフュージョンにより姿や能力が変わるとはいえ、基本的にバトルで出来ることは最序盤で完成してしまう。
    • スキルや装備などのデザインも、基本的には後から出てきたものが数字が大きくて強いだけで、遊びの幅が広がるようなものが無い。本当に最序盤でプレイヤーのできることが完成してしまう。
    • バトル・育成周りで楽しさを維持する仕組みが出来ていないにも拘わらず、各ダンジョンは敵シンボルが文字通りウジャウジャと配置されている。移動速度も主人公と変わらず、道幅も狭い場所が多く雑魚戦でダレやすい。
    • おそらくは連戦しやすいようにこういう配置になったのだろうが、プレイ感が非常に悪くなってしまっている。
    • 少し話がそれるが、敵シンボルの当たり判定がややおかしい。特に風属性の敵シンボルは当たり判定が見た目とかなりズレてしまっている。
  • そのアニマフュージョンも、序盤こそ姿の変化や組み合わせを考えるのが楽しく感じるが、少し進行するとあとから手に入る魂のほうが強いことに気づいてしまい、作業的に更新していくだけになりがち。
    • これに関しては以下に述べるようなバトルや探索周りの問題によるところも大きい。
  • バトルは属性によるダメージの増減が大きいため、属性が重要…と思わせておいて、例えば火山のダンジョンなら火属性の敵が多いから水属性でパーティを組む、といったことはなく、どのダンジョンも各属性の敵がバランスよく配置されている。
    • ダンジョンの属性はボスの属性の判断材料くらいにしかならず、結果的に『ボスに弱点を突かれない3属性でバランスよく組む』のが安定してしまい、組み合わせを考える楽しさはあまりない。この辺りもアニマフュージョンの作業感が増す原因になっている。
    • もちろんボスの属性に合わせて有利属性で固めて蹂躙することもできるが、そこまでする難易度でもなく、後述する素材ドロップ率の低さからも専用構成は取りづらい。
    • そもそもボスも属性が変わって数字が大きくなっただけで、やってくることはほとんど変わらないものが多い。属性ごとの特徴も特になく、基本的には高火力全体攻撃を全体回復でしのぎながら、リソースが切れる前に殴りきるという戦いに収束する。
    • ダンジョンの没個性化は、アニマフュージョンやバトルだけでなくダンジョン探索そのものも退屈なものにしてしまっている。火山・雪山・砂漠・森と火水地風の4属性に対応したダンジョンのプレイ感がすべて同じになってしまっており、ダンジョン1つ1つの長さも相まって非常に作業的。
  • アニマフュージョン絡みの問題として中盤以降、敵のドロップ率が極端に低くなる。
    • アニマフュージョン用の魂や素材アイテムを集めるためにただでさえ単調な戦闘を何度もしなければならず、全体的にテンポが悪い。
    • 連戦やチェインによるドロップ率ボーナスを活用すること前提のドロップ率に調整されており、やらされている感が強い。
    • 原作にはなかった追加要素として、モンスター図鑑から直接好きなモンスターと再戦できるというシステムがあるが、あまりにもドロップ率が低すぎてアイテム目的では使い物にならない。このデザインなら戦闘倍速機能などのほうが必要だっただろう。
    • このせいで進行具合に合わせて適切に融合をしているだけでレベルがかなり上がってしまい、難易度が低下しがち。難易度が下がるとよりバトルが作業的になるという負の連鎖になってしまっている。
  • ダンジョンの再生や崩壊の要素もうまく機能していない。普通に遊んでいると崩壊の方向に向かうようになっており、その上で崩壊させても特にデメリットは無い
    • 崩壊させると取れないアイテムはあるが、逆に崩壊させないと取れないアイテムもある。そもそも後から戻せる。
    • その上で状態が変化する際はダンジョンの一定の位置まで戻される仕様で探索のテンポを大きく削ぐため、『新しいダンジョンに入ったらとりあえず崩壊させておく』ことが対策として安定してしまい、これも作業感やマンネリ化を大きく促進している。
    • ミニマップは常に表示されているが、詳細なマップは一度メニューを開いてからYボタンを押している間だけ表示という面倒な仕様になっている。余っているボタンはあるのでそこに割り当ててほしかった。

ストーリーも終盤までまったく同じ展開が繰り返されて退屈さを増長してしまっている。

  • ネタバレになってしまうため詳しくは伏せるが、基本的には『多数の為に目の前の一人を見殺しに出来るか』という、所謂トロッコ問題をプレイヤーに突きつける展開が何度も繰り返される。
    • 一方で『多数を犠牲にする』ことのリスクがふわっとしか描かれておらず、プレイヤー目線で天秤が釣り合っていないためイマイチ選択の盛りあがりや深刻性に欠ける。
    • レトロ調のRPGらしくセリフは最低限といった感じで、全体的にはうまく表現できているのだが、この選択のシーンでは毎回クドクドと同じようなことを言ってくるためこれも印象が悪い。
  • トロッコ問題の状況を作り出すために登場人物の知能を下げているようにも感じられ、ストーリーの納得感や共感性などはかなり低い。
    • キャラクターの説明口調もやや目立つ。特に仲間のホムンクルス『ドゥー』は冷静なキャラ故か状況の説明を担当することが多く、違和感のある会話シーンが多く見受けられる。
  • 終盤の展開で今までに訪れたダンジョンを再生させていくことになる。といってもひたすら戦闘を繰り返すだけであり、ただでさえマンネリ化しているプレイ体験をさらに悪化させている。

このように全体的にマンネリ化しやすい構造になってしまっており、ゲーム全体を通して作業感を感じやすい。

  • 元々ダンジョン探索→パーティ強化→ダンジョン探索…を繰り返すゲーム性なので、ある程度同じことの繰り返しになるのは仕方がないところではある。
    • そういった中で、良くも悪くもオーソドックスなRPGであるがゆえに飛び抜けた面白さがなく、快適性もあまり高くないため悪い面が目立ってしまっている印象。
  • 拠点となる『ウィザレスト』の構造も、何度も通うことになる施設がやけに遠かったり、迂回していかないといけない配置になっている。
    • 正常にゲームに夢中になっているとこういった細かい不満は認識しづらいが、作業感が強すぎて不満が目立ちやすい土壌が出来上がってしまっている。
    • サブクエスト絡みの住民もコロコロと居場所が変わり、名前だけ言われても覚えづらい。

 

まとめ

オーソドックスなJRPGを基盤に、アニマフュージョンやダンジョンの崩壊・再生など面白くなりそうな要素を意欲的に盛り込んではいるものの、ゲームの楽しさを維持するための適切なレベルデザインができておらず、楽しさのすべてを序盤で消費してしまい、作業感だけが残ってしまっている惜しい作品。

リマスター作品としてもこういった難点を解消するような追加要素は無く、求められる快適性に達していない。

ただ、各要素の面白さや魅力は確かに感じられ、作業感に目を瞑れば普通に遊べるゲームではある。磨けば光る可能性は大いに感じられる、なんとももったいない作品だ。

  • 磨けば光る可能性はあるとはいっても、大本の開発元は倒産しており望みは薄い。なんとも歯がゆい。
  • ミドルプライスなのも満足度を下げる一因に感じる。リマスター作品なのでゲーム内容そのものを変えることはできないのは理解しているが、もう少し属性ごとの特徴を付けたうえで、各属性の4ダンジョン+ラストダンジョン1つくらいのボリュームでロープライスだったら印象が大きく変わっていたと思う。

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