タイトル | ゼンレスゾーンゼロ |
プレイした機種 | PC |
メーカー | HOYOVERSE |
満足度 | C(満足できなかったが不満は小さい。) |
要点 |
|
執筆日 | 2024年7月7日 |
はじめに
PC版にて実装済み分まで一通りプレイ。
『原神』や『崩壊シリーズ』で有名なHOYOVERSEが手掛ける、新作アクションRPG。PC、PS、iOSやAndroidといったマルチプラットフォームで展開されている。
公称ジャンルは『都市ファンタジーアクションRPG』。新エリー都と呼ばれる都市を舞台に、謎の超自然災害『ホロウ』に見舞われた近未来の物語が描かれる。
- 主な拠点となる六分街には主人公が経営するレンタルビデオ屋をはじめ、食事を摂るとバフを得ることができるラーメン屋、スタミナ回復とドロップボーナスが得られる喫茶店、ゲームセンターに雑貨屋など様々な施設が存在。
- オープンワールド形式ではなく、通常のマップ切換型で行動範囲内で自由に歩き回ることができる。同社では『崩壊スターレイル』に近いマップ構造。
- 六分街以外にも、ストーリーの進行に合わせてエリー都内の他の地区にも赴くことができる。
舞台となる新エリー都は化け物が蔓延る『ホロウ』と隣り合わせ。日常的にホロウの脅威にさらされているが、それゆえに対策もされており、ホロウ内の資源によって繁栄もしている。
- ホロウ関連の様々な事件に巻き込まれていく形でシナリオが進行していく。
- ホロウやエリー都を巡る様々な陣営が存在し、シナリオも陣営に関連して展開されていく。
- ミッションを受領して開始するとホロウ探索がスタートする、クエスト選択形式が採用されている。
- ホロウ内の探索はすごろく風のマス目移動で行う。マスによってイベントが発生したり、特定のマスまでオブジェクトを運ぶようなギミックも存在する。
- 探索時は演出の倍速機能が用意されている。
- ホロウ内にはもちろん敵も存在。接敵するとアクションでのバトルが始まる。
バトルは3人パーティのチームアクション。基本的にはメンバーの切り替えが重要なデザインになっている。
- キャラクターは物理や炎、電気のような属性に加え、強攻(アタッカー)、撃破(敵の装甲破壊)、支援(バッファー)といったロール、そして所属する陣営が定められている。
- パーティ内のいずれかのキャラ同士で、属性一致または陣営一致することによって発動するスキルが強力な為、基本的には属性・陣営のどちらかを一致させてパーティを組むことになる。
- 各属性に対応する状態異常が用意されており(電気なら感電、氷なら凍結というような)、ことなる状態異常を付与することで『混沌』という追加ダメージを与えられる。
- 通常攻撃、スキル攻撃、回避や回避攻撃、交代攻撃、必殺技、さらにキャラによっては『通常攻撃○段目で長押し』など特殊コマンドによる攻撃が用意されている。
- 敵の装甲を破壊(ブレイク値)すると敵が一定時間行動不能になり、さらにこちらは連携攻撃が可能になる。3名のパーティキャラクターが交代で攻撃を仕掛けていく、爽快感のあるものになっている。
良かった点
圧倒的な美麗グラフィック。2024年最新のゲームとして恥じない高品質。
- 最近では学園アイドルマスターや鳴潮も綺麗だったが、それらとはまた違った方向性での綺麗さ。
- 会話時やバトル開始前の入場シーンなどもちょっとした表情の付け方が細かく表現されており、こだわりを感じる。
- 太ももの肉感も大変よく、紳士的な意味でもなかなかのもの。
わかりやすく読みやすいシナリオ、ローカライズ。
- HOYOVERSEのゲーム、というか中国発のゲームはシナリオが複雑で造語も多く、さらにローカライズの質も低く矢鱈と難解になっている作品が非常に多いが、本作はシナリオが良い意味でシンプルで、造語はしばしば見られるものの比較的わかりやすい量とネーミングにとどまっており、ローカライズの質もよく非常に読みやすい。
- チャプターごとに特定の陣営に絞ったシナリオになっているのが功を奏したのだろう。
- 今後、陣営あたりの人数が増えすぎたり、多数の陣営が入り乱れるシナリオなどがあればどうなるかは…少々不安。
- シナリオ演出は『ムービーシーン』『立ち絵風紙芝居シーン』『漫画風シーン』の3パターンあり、このうち漫画風シーンは特にローカライズの出来が良い。
- 漫画風演出が世界観にもよくマッチしている。
- 一コマ(吹き出し)あたりの文字量やコマ割も見やすく工夫されている。
- 部分的にではあるが、スキップ機能も用意されている。
- 主人公がビデオ屋という設定を活かしてか、シナリオの読み返しも可能。
バトルや探索もシンプルでとっつきやすい。
- シンプルさ自体は良い点だと思うためここに記載しているが、実態としては悪い面が目立つ。詳しくは後述。
全体的に、よく言えば壮大、悪く言えばわかりづらかった『原神』『崩壊スターレイル』などと比較してプレイヤーがパッと世界に入り込みやすいと感じた。
不満点
単調すぎるバトルを繰り返すため非常に飽きやすい。
- ブレイクすると敵が一定時間行動不能になり強力な連携攻撃が発動し、(基本的に)強攻アタッカーが高火力なため、撃破(ブレイク要員)と強攻のロールを持つキャラクターがほぼ固定でパーティに入る。
- パーティ枠が3枠しかないため、この時点で残りあと1名。役割が被る意味がほとんどないため撃破と強攻を除いたロールから属性か所属陣営が合うキャラを編成することになり、編成の幅がほとんどない。
- パーティのロールがほぼ固定になるせいで、『撃破でブレイクして強攻で殴る』という戦い方まで固定化されてしまい、キャラを変えてもアクションの操作感にほとんど違いが出ず飽きやすい。
- 中には強攻以外のロールで強攻並みに火力が出るキャラがいるが、それも強攻の枠に変わって入るだけで戦い方や操作感に違いが出ない。
- 効率のいい技の出し方でキャラごとに違った操作を求められはするが、やること自体は『撃破でブレイクして強攻で殴る』に帰結する。
- 敵やステージにも差がほとんど見られず、高難易度になっても敵が硬くなるだけで大げさでなく本当にずっと同じことを繰り返すだけである。
- 単調すぎるせいで、決まったパターンで順番にボタンを押すだけのアクション風コマンドバトルに片足どころか肩くらいまで浸かってしまっている。
- 同社の『原神』もこれに近い問題を抱えている。あちらも戦闘中にやることは順番に属性を付与していくだけになりやすく、結果決まったパターンで順番にボタンを押すだけになりがち。
- この点は、スマホなどのプラットフォームでもお手軽に爽快感のあるアクションバトルを楽しめるように敢えて単調にしている節もあるため一概に問題と言うのは少々乱暴ではある。
- あるいは最高率のパターンを見つけて再現する、パズル的な楽しさがあるという風に捉えられなくもない。
- とはいえプレイ時間や体験の大半を占める要素が単調作業の繰り返しというのは長くゲームとして遊ぶ上で必ず問題になる部分であるため、今後のプレイヤブルキャラや敵、クエストの追加でうまく改善してほしいところ。
- バトル中の演出やキャラクターごとのモーションなどはよくできており、視覚的に飽きさせないような工夫は見られる。
楽しさの伴わないボリューム。
- 上記した戦闘面の単調さに加え、ホロウ探索のマス目移動もとにかく単調で退屈。
- 基本的には他のゲームがダンジョンでやっていることをマス目上でやっているだけであり、ダンジョンと違って見た目や操作感が単調なせいで探索要素としての楽しさは全くと言っていいほどない。
- テレビ画面風の演出など初見では『おっ』と思うオシャレ部分もあるが、何度か触ればすぐに飽きる。
- そもそもすべてのマスを虱潰しに出来てしまうため、もはやマス目である意味が感じられない。
- 普通のゲームならダンジョンで表現するところを別マップにしてしまっているせいで、世界の広さを感じたり、森や火山、水場などロケーションの変化を楽しむといった面でも機能不全。
- 『都市ファンタジー』という公称ジャンルだが、都市にあまり魅力が感じられないのもこういった点が要因になっている。
- クエストによっては少し進むごとに会話イベントが挿入されテンポも悪い。
- 倍速機能があるものの、戦闘のたびに解除され便利機能として快適性に欠ける。
- 単調極まるホロウ探索とバトルでプレイ時間の大半が埋め尽くされてしまい、プレイ時間に対して得られるゲーム体験の質が伴っていない。
その他の不満点
- UIはオシャレに振り切っていてとにかく見づらい。ただ、オシャレさに関しては水準以上なので好みの問題はある。
- 個人差はあるだろうが、バトルがアクションのためコントローラーの方が操作しやすいのにそれ以外の部分はコントローラーで操作しづらい。
- キャラの凸イラストなどはオシャレさとご褒美感がいい塩梅で高水準であり、この点は筆者も気に入っている。
- 主な拠点となるのが小さなビデオ屋と商店街的な町の一角のため、都市ファンタジーという割に都市感がない。
- デイリー要素、スタミナ消費コンテンツの解放が遅すぎる。スキップできるところをすべて飛ばしても2時間程度かかる。
- 反面、デイリー消化やスタミナ消費はこのボリュームのゲームとしては楽な部類。
- 容量はPC版の初回ダウンロードで100GB以上の空きが必要。このクオリティのアクションゲームとしてはマス目探索や漫画風演出などで容量を削減出来ていそうなものだが、グラフィック、はたまたシナリオ読み返し機能の代償かこの容量である。
- こういったゲームは開発会社で遊ぶゲームを決めるユーザーも多く、実際このゲームもHOYOVERSEの新作だから注目されたところが大きいが、HOYOVERSEのゲームを複数掛け持ちするのはモバイル端末ではかなり厳しいと言わざるを得ないだろう。
- 容量は重くロードも長めではあるが、PCの負荷は軽めでその点は良好。
- ローカライズは基本的には高水準でわかりやすく読みやすいが、それでも唐突によくわからない例え話やおそらく中国でしか通じないような諺だったりが飛び出してくる場面はある。
- ムービーシーンや漫画風パートのテキストが良くできている一方で、紙芝居パートは中国ゲーによくある冗長な文章が目立つ。
- BGMそのものは良質な曲が揃っているが、上記したゲーム自体の単調さをカバーできるほどのパワーはなく、単調なゲーム体験の背景に組み込まれてしまっている。
- ダッシュ移動が遅すぎる。どのくらい遅いかと言えばダッシュしているのかわからないレベル。
- バトル以外でガチャで手に入るキャラクターを使用する場面が少なすぎる。
- 非バトル時のマップ移動は基本的に非戦闘キャラである主人公を操作する。
- ガチャ入手のキャラモデルを堪能できず、せっかくのグラフィックを活かしきれていない。
- 単調なバトルと併せて、課金してキャラが欲しいと感じにくい。課金圧が低いゲームを良いゲームと考える人も多いが、筆者的には稼いでくれたほうがサービスが良くなっていくことから『課金したい人が気持ちよく課金できるゲーム』が良いゲームだと思っているので、この点もマイナス。
まとめ
HOYOVERSEらしい、ハイクオリティかつ日本受けしそうなデザインはさすがの一言。
既存タイトルとの差別化点も見られ、ローカライズの質もよく決して悪くはないゲームなのだが、いい意味でも悪い意味でもシンプルすぎ、単調さから非常に飽きやすい作品になってしまっている。
- このクオリティで筆者が2日で飽きたのはかなり珍しい。
シナリオやローカライズの質を維持しつつ、バトルや探索の単調さ、退屈さを改善できるかが今後の課題となるだろう。逆に言えばゲーム的な単調ささえ改善されれば非常に良いゲームではある。
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